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2011/10/28
On | スタートアップからのシリコンバレー進出3:(涙の)就労ビザの取得
前回の会社登記の話に引き続き、シリコンバレー進出に欠かせないビザの話。すごい大変なので「涙の」をつけました。
アメリカの就労ビザには色々種類があるが、アントレプレナーがビザを取る場合、下記の4種類で大多数がカバーされるはず。
- H1Bビザ
- E2ビザ
- L1ビザ
- Oビザ
なお、以下、私の知る限り、いろいろな人のビザ取得に関わった経験に基づき書いていますが、私は専門家ではありませんので、間違いもあると思います。実際にビザを取る時は、移民法弁護士に聞いて下さい。移民法弁護士を選ぶ際の注意事項は末尾に書きます。
H1Bビザ
専門職ビザ。シリコンバレーのテクノロジー企業で働く外国人の多くがこのビザ。
- 学位重視
大事な条件が、仕事の内容に直結した大学を卒業していること、もしくは、仕事の内容に直結した実務経験が12年間あること。(実務経験3年で大学教育1年分と換算される。たとえば、高専は短大扱いで2年分大学教育を受けたとみなされるので、6年実務経験があると、「4大卒換算」となります。)
「情報工学出身でソフトウェアエンジニア」なんていうのが、最も望ましいタイプとなる。かすってるけど違う場合、例えば、機械工学でソフトウェアエンジニア、というような場合は、「機械工学とはいえ、たくさん情報工学系の単位を取ったのだ」などと証明することでOKになったりするようです。
H1Bは理系に優しい。「専門性」が明快だからでありましょう。
- デメリット1:自分で自分を雇えない
アントレプレナーにとって厳しいのはこちら。
H1Bは「雇用される人」に出るビザなので、自分がCEOでは難しい「CEOとはいえ、ボードの意思一つで首になる雇われでしかない」という論理は成り立つかもしれないが(Carol Bartz首になったし)、通常は厳しい。
また、株を50%以上持っている場合も、かなり厳しい。(が、8月に発表された米国起業促進政策に基づくビザ関連施策の一環で、「オーナーシップがあっても被雇用者であればよい」ということになった模様です。)
技としては、ボードやCEOを別の人にしたり、または、複数のファウンダーがいる場合、他の人が後述するE2ビザを取り、その人に雇われる形でH1Bを申請する、といった手が考えられる。
- デメリット2:申請・取得の時期に制限がある
H1Bは、年間で発行する数が決まっており、4月1日からカウントを始める。以前は4月1日に受付開始と共に締め切り!なんてこともあった。しかし4月1日に出して、数週間で結果がきたとしても、そのビザが有効になるのは10月1日以降。半年近くじっとまたないといけない。
が、ここ数年、少なくとも12月くらいまでは残数があることが多いので、10月以降に申請すれば、審査にパスすればアメリカで働き始めることができる。
H1Bがあとどれくらいあまりがあるかは、こちらで確認できる。今見たらまだ普通枠は余裕がある。ただ、「アメリカの大学院を出た人」には別枠があるのだが、そちらは一杯になっていた。(アメリカの大学院を出た人を優遇するために儲けられた枠だが、意味なくなってますなぁ。)
- メリット:転職可能
H1Bの最大のメリットが、転職しても同じH1Bを活用できること。同じ職種で転職しないとだめだし、H1Bを新たな雇用主にトランスファーするための手続きをしなければならないが、新たに取るよりは楽で、かつ上述の時期の制限にはかからないので、5月でも7月でも好きな時期に転職できる。
アントレプレナー的転職のベストケースとしては、「起業した会社が買収されて、買収先の社員になる」といったことがありえるが、この場合も、H1Bトランスファーで対応可能。
アントレプレナー的転職のワーストケースである「起業した会社がつぶれて、別の会社に就職する」といった場合にも活用できる。
(10/29 追記:要件として、ビザを出す人の給料を出せるだけの資金力がある必要もあります。例えばファウンダー2人にH1Bを出したい場合、複数の移民法弁護士から、40−50万ドル程度銀行にあるのが望ましい、といわれました。ただし、全部最初から銀行に入っている必要はなく、ビジネスプランを提出し、「今、これだけ銀行にあり、今後こんな風に利益が上がる」てな感じに説明することは可能。)
E2ビザ
投資家ビザ。アメリカと通商条約を締結している国の人限定。日本は通商条約があるのでOK。会社の51%以上が日本からの投資である場合に出る。
メリットとしては
- 自分が株の過半を持っていてもOK
- H1Bほど学歴審査が厳しくない
- 配偶者も働ける
デメリットとしては
- 日本人の株の持分が半分を切ったら失効
- 転職不可(転職したら新しいビザを取り直し)
- アメリカの事業がそれなりに立ち上がってからでしかビザが取れない
(オフィスを借りているのは最低条件。できれば、人も雇っていて欲しい。「だから、オフィスを立ち上げるためにビザが必要なんだよ」と思うのだが、仕方ないので誰もいないオフィスを借りることになるケースが多い。) - ビザ更新時に、アメリカでそれなりに人材を雇用できていないと更新できない
最後のポイントについては、E2は、海外からの投資を促進するビザなわけで、ビザを取った人だけで運用されている零細事業のままではダメと。
E2の悪用例としては、海外のお金持ちがアメリカで暮らしたいためだけに、アメリカに会社を設立、そこに何がしかの資金を振り込んでビザを取って渡米、それ以降はなにもしない、というケースが考えられる。アメリカとしては、「銀行口座に寝てるお金」ではなく「アクティブに経済発展のために使われる資金(と人材)」が欲しいので、積極的な経済活動(=人材雇用)をしない人は望ましくないんでしょう。
最近ソフトウェア系の会社でE2ビザを取った人は14万ドルの投資で通ったそう。投資額は多ければ多いほど良いが、たとえば事業が既に利益が出ていれば、投資額は少なめでもOKだったりして、「明快な足切り」は存在しない。(それが難しいのだが。)
(数百万円でE2ビザを取りたい場合は、Bビザ(出張ビザ、、、のようなもの)でアメリカに入国し、アメリカ国内で「E2ステータス」に切り替え、時期が熟したら改めてE2ビザ取得、という裏技もあるらしい。300万円くらいで「E2ステータス」がとれた、という人の話をきいたことがある。ただし「E2ステータス」はE2ビザとは違い、アメリカを出たら再入国できないという微妙なもの。一体全体なんなんでしょうか・・・・。興味が有る方はこちらをご覧あれ。)
L1ビザ
駐在員(の管理職の)ビザ。日本とアメリカに関連会社がある場合、その関連会社間の異動をする人に出る。が、しかし
- 日本で既に1年以上会社が存続し、ビザ申請者自身も、最低1年以上その会社で働いている
ことが要件。なので、これは、「スタートアップからのシリコンバレー進出」とはいえ、会社をはじめたばかりではなく、それなりに日本で事業が立ち上がっている場合に考えられるビザ。
ただし、ビザ取得者がアメリカに来た後も、日本でも事業が存続しないといけないし、さらにE2同様、アメリカできちんと雇用を創出できないとならない。(そうでないと、更新できない。)逆に言えば、それなりに収益も上がっているスタートアップが、シリコンバレーオフィスを設立、という場合には割りとグッドなビザである。
E2同様、転職したらまた新しくビザを取り直し。
(10/29 追記:L1ビザも、H1B、E2同様に、「給料を払える資金力」が問われますのであしからず。なお、L1のメリットとしては、グリーンカード(永住権)の認可が速いことがあります。グリーンカード申請プロセスのうち、laber certificationという面倒なのをしなくてよいので。なので、L1で来て、すぐグリーンカード申請するというのもあり。)
Oビザ
特別能力者ビザ。怪しい感じだが、移民局のサイトによれば
The O-1 nonimmigrant visa is for the individual who possesses extraordinary ability in the sciences, arts, education, business, or athletics, or who has a demonstrated record of extraordinary achievement in the motion picture or television industry and has been recognized nationally or internationally for those achievements.
「科学、芸術、教育、ビジネス、スポーツといったエリアでextraordinary abilityがある人、および国際的芸能人」が対象だそうです。証拠の例として挙げられているのが、アカデミー賞、エミー賞、グラミー賞受賞などで、なんだかとっても無理そうな気がするのだが、実はこのビザを持っている人はそれなりにいる。「PhDで、未踏ソフト受賞」みたいな人は、弁護士に相談してみてください。
おまけ:EB-5
50万ドルを、特定の条件を満たした企業に投資するとグリーンカードもらえちゃう、という「永住権を金で買う」プログラムも実は存在。50万ドルの余力がある人は「EB-5」で検索あれ。
最後に:移民法弁護士を選ぶ際の留意点
米国移民局は人外魔境である。
なんといっても、サービスを提供する相手(移民)は投票権を持っていない!政治力がない!→サービス向上のインセンティブ低そう!
「元移民」の市民権保持者や、親戚がビザ問題で苦しむ市民権保持者が政治的に問題を解決しようとすることはもちろんあるのだが。
プロセス的にも審査のクライテリア的にも、納得できる部分もあるものの、運用方針次第で認可クライテリアが変わるなど、ほんとにひどい、と思わされることも多い。面妖で複雑怪奇ゆえ、移民法弁護士であっても、得意なビザ種別以外はあまり知らないこともある。
ゆえに、移民法弁護士を起用する際は、
- 自分と似たケースを複数扱ったことがある
- しかもその経験が新しい(一番最近のケースが半年以内くらい)
という点を確認すること。
また、一人の人ではなく、複数の弁護士と話をし、自分にどんなオプションがあるのか確認することも大事。100~200ドル程度のコンサルテーションフィーを取られることもあるが、必要経費です。
なお、冒頭でも書いたとおり、上記は私の経験に基づくもので、間違ってるところもあるかも。詳細はきちんと移民法弁護士に確認して下さい。
参考リンク:
USCIS Initiatives to Promote Startup Enterprises and Spur Job Creation
Coming to America: Getting visas to do business in Silicon Valley
Immigration Issues for Entrepreneurs (Stanfordでの移民法弁護士のワークショップ。字幕付きw)
How can the E2 visa help US aliens to work in the US ?(QuoraでのE2ビザに関するQA)
Tomita Law Office (いつもお世話になっている移民法弁護士事務所)
04:00 午後 Onアーカイブ | 固定リンク | コメント (7) | トラックバック(0)
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コメント
いつも参考にさせていただいています。ところで、学部が法学部で大学院が情報系という場合のソフトウェアエンジニアでのH1Bはどういう扱いになるかご存じでしょうか?学部が文系だからソフトウェアエンジニアとしては認めないよとなるのか、大学院が情報系だからOKなのか。
あと大学院のコース名と専攻が一致していない、例えば最近はやりの総合なんちゃら研究科の場合は情報系として認められるのでしょうか。学位記には総合なんちゃら修士となっています。
Posted by: NNT48 at 2011/10/28 16:37:29
日本ではネットユーザからは猛反対、大手メディアの報道によると多数の人が賛成しているTPPですが、これが通るとシリコンバレーで日本人が働きやすくなるでしょうか。
Posted by: TPP at 2011/10/28 16:40:26
chikaです。
>法学部→なんちゃら研究科
うーむ、わかりません。が、移民法の審査は基本実質主義で、「タイトルはどうでもいいから、実質どうなの?」ということが問われるので大丈夫なのではないかという気がしますが(できれば複数の)弁護士に確認して下さい。もしくはQuoraで質問してみたらいかがでしょう?誰かが親切に答えてくれそう。
>TPP
現時点で通商条約がなければもしかしたらこれでEが認められるかも?ということもあるのかもしれませんが、既にE取れるからあまり関係ない気がします。「TPP加盟国用特別枠」みたいなのが設けられれば別ですが。
Posted by: chika at 2011/10/28 19:41:42
学部文系、修士CSです。H1B及び永住権(EB2)の取得に際し、学部からCSの場合との違いは特にありませんでした。
Posted by: tomokof at 2011/10/29 1:24:11
みなさま教えていただきありがとうございます。特にtomokof様、実際に文系→CS修士の方がいて心強く思います。あちこちを見ても「大学の専攻が職種と一致」と書いてあるし(特殊な事情ですが日本の医師国家試験の受験資格は学部が医学部でないとダメとかありますし)、学部4年に対して修士2年ではもしかして足りない(3年の職歴が1年の在学に相当すると6年分しかCSの経歴がない)のかとか、色々不安に感じていました。
Posted by: NNT48 at 2011/10/29 8:25:17
H1Bのこと、私も興味があったので、移民局のサイトを見てみました。
http://www.uscis.gov/portal/site/uscis/menuitem.eb1d4c2a3e5b9ac89243c6a7543f6d1a/?vgnextoid=73566811264a3210VgnVCM100000b92ca60aRCRD&vgnextchannel=73566811264a3210VgnVCM100000b92ca60aRCRD
要するに職業に関連する「学士あるいはそれ以上の学歴」をもっていること、「または」それに相当する職歴をもっていること、ということのようです。だから別に文系の学士+情報系の修士でも問題ないんでしょうね。
ちなみに全然関係ないけど、H1B4というカテゴリーはファッションモデルのためのカテゴリーだそうです♪
Posted by: Rako at 2011/10/29 18:54:59
とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。
Posted by: 資格の履歴書 at 2012/02/18 0:15:31

