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5 月 16, 2010

デラウェア登記に関する追記

前回のエントリーに追記なのですが、アメリカの会社である限り「足切り」ではないです。オリジナルのエントリー内でも書きましたが、もともとアメリカにある会社だったら、いつでもデラウエアに登記を変えられるので、問題があったら変えればいいだけのことなので。株主の数によりますが、弁護士代数十万円でできます。(上場前とかで株主がたくさんいるともっと掛かることもあるようですが。)思いつきでタイトルを書くと正確に中身を反映しないので誤解を生む、ということですね。

なお、「カリフォルニアの会社のまま投資した先もある」という東海岸のベンチャーキャピタルの方からのお話もありましたので、そういうこともなくはない模様。

なぜカリフォルニアの会社に投資するのをVCが嫌がるかについては、こちらのWilson Sonsiniの弁護士のYokumのブログにある通り

One example of a material difference in corporate law between states is the stockholder vote necessary to sell a company.  California corporate law provides that a merger requires the approval of a majority of the outstanding shares of each class of the corporation. This means preferred stock as a class and common stock as a separate class.  In contrast, Delaware corporate law provides that a merger requires the approval of a majority of the outstanding stock entitled to vote.  The fact that holders of common need to approve a merger of a California corporation is one reason why venture funds prefer Delaware. Venture funds don’t want common holders to have the ability to block a merger.

テクニカルな話ながら、アメリカのVC投資は、preferred shares=優先株、で行われるのが普通。そういう違うタイプの株を「class」と呼びます。ファウンダーが持っているのはcommon shares=普通株。

カリフォルニアだと、会社のM&Aは、classごとに多数決をとってそれぞれでマジョリティにならないといけない。ということは、例えばcommonが全体の10%しかなくても、その半数以上が反対するとM&Aできない。

つまり、株数ベースで株主の5%が反対するだけでM&Aが起こらないことになってしまうわけで・・・。ベンチャーのエグジットとして多いのが、買収してもらう、というケースなわけですが、それが(投資家から見て)難しくなる、ということ。

増資の難しいところは、今回の増資ラウンドだけじゃなく、将来のことも考えないと行けない、ということ。イレギュラーな増資をすると、次の投資家に嫌われる(=投資してもらえない)リスクがあるので、なるべくスタンダードなことはスタンダード準拠でやっていく、というのが大事だったりします。はい。

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なお、アメリカ国内では会社を移すのは簡単なわけですが、日本に一旦設立しちゃった会社を、デラウェアに限らずアメリカに移すのは結構大変。特に株主が複数いる状態で、全員にそれを納得してもらうのは大変。

また、儲かっている会社だと税金のことも考えないと・・。とはいえ、2007年に日本の税制が変わり、クロスボーダーの三角合併なるものが可能になったため、海外との会社でも「親子関係の逆転」ということができるようになりました。なので、不可能じゃないです。上記の株主問題は残りますが。

まぁ、あんまりそうまでしてアメリカのベンチャーキャピタルから増資したい、という人もいないと思いますが。

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では、なぜアメリカのベンチャーキャピタルが(というか、米に限らずどこの国のVCも)海外で登記された会社に投資したがらないかというと、その国の法律がよくわからないから。

たとえば、アメリカのベンチャーキャピタルが投資する際には、何十ページにも及ぶ「(主に)投資家の権利を守る契約」を投資先と締結しますが、投資先が海外の場合、その国でこの契約がどこまで守られるのか?ベンチャーキャピタルの人が社外取締役になったとして、会社が違法行為をした場合などにその取締役の責任はどこまで問われるのか?などなど、いろいろわからないことが沢山あるわけです。

で、そういう懸念を全てぶっちぎってまで投資したい先があるか、というと、それは結構難しい・・・。絶対ないとは言わないですが。

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5 月 12, 2010

アメリカのベンチャーキャピタルから投資を受ける「足切り」条件

この間、日本で起業した人たちに

「日本のベンチャーがアメリカのベンチャーキャピタルから増資するのは難しいらしいですね」

と言われた。

いえ、違います。

「難しい」のではなくて、「限りなく不可能」なんです。

事業内容とか、そういったこと以前に

「デラウェア州で設立された会社以外に投資する人は(ほとんど)いない」

(追記:「デラウェア州で登記されている法人」という意味です。物理的に会社がデラウェアにある、という意味ではありません。)

からなのでありました。

「ほとんど」

が入っているのは、シリコンバレーのベンチャーキャピタルと言っても、日本人がやっていたり、日本にオフィスがあったりして、日本の会社にも投資する心づもりがあるところも2-3あるので、そういうところだったらありだから。DCMとかGlobal Catalyst Partnersとか。Translinkはもしかしたら。日本人のパートナーがいても日本の会社には投資しないATAのようなところもある。

(追記:「日本で本社が登記されている法人」という意味です。オペレーションは日本でもデラウェア法人だったら話は違います。)

で、それ以外の普通のベンチャーキャピタル、継続反復的に投資をしているエンジェル投資家その他もろもろの人たちは、「デラウェア州で設立された会社」にしか投資しないのです。

「アメリカ国内」ですらないのであった。カリフォルニア州でもだめ。デラウェアじゃないと。

なぜデラウェアかと言うと、

  • 企業法が整備されている
  • 企業法の運用が効率的
  • 投資家の権利が守られる

てなことがあるのですな。詳しくは弁護士のYokumのブログエントリーを参考にしていただきたいのだが、企業登記等もサクサク即日できる、とか、企業法だけに特化した裁判所があって、詳しいプロが登場するとか、いろいろ。これって結構大事で、コンプライアンスで一番困るのが「ルールが曖昧でどうしたらOKかわからない」ということ。謎の行ったり来たりがあったりして、時間もかかるしコストも掛かる。たとえ厳しいルールでも明快に決まっていればそれですむ。

このあたり日本は多くのものが

「厳しいルールだが運用は明快」

であることが多いのでピンと来ないかもしれないが、アメリカは本当に「担当者の主観的判断・裁量で決まる」ということが社会の上から下、左から右まで幅広くベースとなっている。相手の裁量に訴えかけるために、毎日がバトルフィールドです。

で、デラウェアは、その辺がきっぱりしているんですね。

かつ、投資家の権利が守られるので、「デラウェアじゃないと投資しないよ」と投資家が言う。他のところで設立していても、ベンチャーキャピタルから増資する時には、デラウェアに登記を移させられる。エンジェル投資家も、反復継続的に投資ししている人たちはそれを知っているので、最初からデラウェアでないとなかなか投資してもらえない。

(追記:90年代ごろまではデラウェアじゃないところの会社に投資するベンチャーキャピタルもちらほらあったようですが。)

外部投資を入れずに事業拡大しても、上場するとなったらデラウェアに登記を移させられる。

(追記:海外の会社でもアメリカで上場しているところは結構あります。イスラエルとか。ですが、アメリカ国内の会社だったら、まず主幹事証券会社にデラウェア登記にさせられるのが普通。)

というわけで、いずれは上場、というパスを思い描く場合は最初からデラウェアなのです。

とはいえ、日本でしか事業をしない会社がいきなりデラウェアで設立、というのもナンですな。将来大儲かりしたときにアメリカにいくばくかでも税金を払うことにもなるし・・・・。中国の会社なんかはケイマンで設立してます。ケイマンだったらアメリカのVCが投資するかと言うと、これまた極めて限られたところしかしないとは思いますが、「アメリカで投資が受けられそうだから、デラウェアに登記を移す」というのが、日本から移すよりはずっと楽なのではないかと推測されます。(日本からアメリカに登記を移す際に一番面倒なのが税金ですが、ケイマンだったらそもそも無税だし・・・と。上記のYokumのブログエントリーでもケイマンについて説明されてます。ただし、実際にどうなのかは、専門家に確認してください。)

以上、アメリカの投資家から出資を受けるには、まずデラウェアに会社がないと「足切り」になっちゃう、という話。

さらに、これ以外にもliquidation preferenceとかparticipation preferredとかで、「何が常識か」というのがアメリカ国内でも違ったりしていろいろ大変なんです、という話はまた改めて。

ご参考まで、余談ながら、昔書いた、「シリコンバレーで起業が多いのは、カリフォルニアの企業法が優れているからではない」というエントリーもあります。

<追記:東海岸のVCで働く方から「弊社はSV officeでnon-delaware US corpに他のSVのVCと共同で投資していますよ。確かにDelawareじゃ ないとTAXがやや面倒くさいんですが、それぐらいの話で投資を足きりするVCがあるとはけっこう驚きでした。」とのことですので、絶対ダメじゃないと。「絶対ダメじゃない」ならDelaware以外でいいのか、という点については、また別エントリーで。>



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