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1 月 15, 2009

書評:How Starbucks Saved My Life(全米が泣いた!)


全米が泣いたか、単なる恐怖話かはご判断にお任せします。

「マンハッタンのタウンハウスと、35部屋もある大豪邸で恵まれて育ったマイケルは、イェール大学を卒業すると同時にアメリカでも有数の大広告代理店、J. Walter Thompsonのクリエイティブに就職。SVP(すごく偉い重役)にまで登り詰めるが、在勤35年を経て53歳で突然クビになる。その後10年、だんだんと不運が積み重なり、63歳では健康保険すら買えなくほど落ちぶれ、ついにスターバックスのバリスタとして働くことに。そしてバリスタをしながら初めて非エリートの人々の暖かさに触れる」というお話。

この取ってつけたような話しのどこに泣くかというと、これが実話だというところ。きゃーこわい!

(ちなみに、J. Walter ThompsonのSVPというと、例えて言えば「電通の専務」みたいな感じでしょうか。電通の専務が下町のスタバのバリスタになるところを想像してみてください。)

マイケルのお父さんは成功した出版業界人で、数々の文豪や著名人と交流しながら育つ。ヘミングウェーとも本当に会って話しをしたり。J. Walter Thompson時代は、仕事でアイアコッカにもプレゼンするし、エリザベス女王とのお茶会にも行く。

そして仕事に全人生を捧げて、意地悪なクライアントからクリスマスの朝に「今から来い」と言われれば、アイアイサーとばかり、泣く子供たちをうっちゃって飛行機に乗る。

しかしクビになった後、広告という若手有利な業界での50も半ばの元重役への風当たりは厳しい。しかもその上、暇つぶしに通っていたヨガ教室で出会った女性とうっかり浮気して子供ができて、奥さんと離婚。これが彼の経済状態には決定打となった模様で、63歳になった頃には懸命に見込みクライアントに連絡を取るも、仕事は全く取れそうもない。

で、スターバックス。

アメリカのスターバックスは、週に一定時間以上働くと健康保険が出る。アメリカの健康保険事情を説明すると、超貧しいと公的保険Medicaidの対象になり、65歳になると同じく公的保険のMedicareの対象になる。それ以外は、勤め先が福利厚生として提供してくれる保険に入るか、自分で民間保険を買わないとならない。そしてかなり高い。

で、本の出だしでは、マイケルはその「アメリカの保険のはざま」にはまり、無保険なのだ。しかも医者に「脳腫瘍の疑いが」と言われ茫然自失。そこで偶然「スターバックスで働かない?」と誘われ、「まさかそんな」と思いつつも、福利厚生の資料を見て、な、な、なんと保険が付くことを知り、「やります」と。

そして一度も持ったことのないモップでのトイレ掃除から仕事を覚える。

勤め先のお店へは片道1時間半の通勤。それでも夜明け前に来いと言われれば行き、夜中に店を閉める担当をしろといわれれば残る。なぜならクビになるのが怖いから。スターバックスは若者が働く店で、63歳なんていうのはマイケル一人なのだ。

しかし、お店でお客さんを集めての「コーヒーレクチャー」では、広告代理店の重役として培ったプレゼン能力で好評を博し、接客も素晴らしいと褒められ、疎遠になっていた元妻の子供たちとも交流を深めて行く、というホノボノな結末だ。トムハンクスが映画の版権を買ったらしいので、やがては映画になるのかも。大成功だ。よかったですね、マイケルさん。

ちょっと前のNew York Timesに、サブプライムローンで買った家を失う寸前の人が特集されていたが、いわく

「兄弟でやっていたコンピュータショップを辞め、次の職を探すが全く仕事がない。片道1時間かかる街まで行くか、飲食店の店員だったらもちろん職はあるが、そんなことまでする気はない」

ということで、こういう人はこの本を読んでよく考えるといいのではないかと、そう思いました。

ちなみに、マイケルさんはスタバの採用面接で、

「これまでリテールで働いたことは?」

と聞かれて、もちろんボンボンだった彼にはそんな経験はなく、非常にあせって

(そういえば、昔バーガーキングのCMを作るために体験店員をやった!)

と思い出し

「バーガーキング」

と答えるところがある。

ふふーん、私だったら「マクドナルドのトレーナーやってました」と言えるな、とちょっと自慢に思ったのであった。

なお、この本、後半はスターバックスのPR誌か、というくらいひたすらスターバックスをベタ褒めで、ちょっとコソバユイのだが悪しからず。

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1 月 14, 2009

23andMeのDNAテスト

GoogleのSergei Brinの奥さんがファンダーで、Googleが投資した民間向けDNAテストベンチャー、23andMe。倫理的にそういう投資をしてよいのであろうか、、、という話しはさてはおきつ、テストで判明する健康項目を見ていたら、おお、なんと「耳あかのタイプ」が!これって日本の研究者の方が発見した遺伝子ですよね。

話しのネタとしては面白いけれど、「あなたの耳あかは湿っている」って言われてもなぁ・・・。

酒を飲んで赤くなる、とか、目の色、とかもあって、「それって、わざわざDNAテストされても」って感じですよね。

もちろん、グルテンが消化できないCeliac Diseaseとか、消化管に炎症が起きるCrohn’s Diseaseといった病気もわかるのであるが。うむむ。

病気ではなく人種・民族的ルーツも調べてくれる。アメリカ人的には、こちらの方が面白いかも。「自分の祖先がどこから来たか知りたい」という欲求が強い人たちなので。

何で突然23andMeのサイトを見たかというと、先週末のNew York Times Magazineに特集があったから。とある心理学者が23andMeを含めDNAテストをしてみて、結局「大して意味のあることはわからない」という結論に至った話し。なぜなら、既にわかっていること以上には、何も明快にわからないから、と。(彼はかなりシビアな遺伝病のキャリアであることはわかったにもかかわらず、子供がいないから関係ないし、と)。

So if you are bitten by scientific or personal curiosity and can think in probabilities, by all means enjoy the fruits of personal genomics. But if you want to know whether you are at risk for high cholesterol, have your cholesterol measured; if you want to know whether you are good at math, take a math test.

「科学的または個人的好奇心があって、確率的に物事を考えられるならDNAテストをしてみるとよい。しかし、コレステロール値が上がりがちか知りたかったらコレステロール値を検査すべきだし、数学が得意か知りたいなら数学のテストを受けるべき。」

この「確率的に考えられるかどうか」って結構難しい。「全体としては特定の傾向を示すが、個人ではそれが出現するとは限らない」ということ。昨日のReal Educationもひたすら確率統計的な話しだったりしますが。

23andMe、TechCrunchのMichael Arringtonが自分のDNAを調べてその結果を公開している記事もあります。

ちなみにこの会社、他の個人向けDNAテスト会社と一緒に、去年の7月にカリフォルニア州政府から営業停止命令を受けている。「医師が注文しなければならない」というルールに反しているので。しかし、会社側は反論。今でも普通に個人が注文できる模様。

日本だったら、行政から営業停止命令を受けて「いや営業するぞ」と言い張って戦うって、なんだか呆然、ではないでしょうか。

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1 月 13, 2009

Real Education続きーさらに身も蓋もない話

昨日のエントリーに

「学力とマネジメント能力の相関もデータがあるのか」

という質問があって、答えると長いので別エントリーにします。というか、ひたすら、そういう「きっと出るであろう反論」を予想してそれを先回りして答えまくる、というのがこの本なので、疑わしーと思う人は是非オリジナルを読んでね。

まず人間の能力を7つに分解(これは、1983年にHoward Gardnerが編み出した分類を使用。)

  • 身体運動知能 Bodily-kinesthetic intelligence
  • 音楽知能 Musical intelligence
  • 対人知能 Interpersonal intelligence
  • 内知能 Intrapersonal intelligence
  • 空間知能 Spatial intelligence
  • 論理数学知能 Logical-mathematical intelligence
  • 言語知能 Linguistic intelligence

このうち、最後の3つはIQとの相関が非常に高い。相関係数は+0.7から+0.9。(1で完全に一緒、−1で真逆、ゼロだと全然相関がない)。

ま、ここまではそもそもIQはこの3つをテストした結果なので納得、でありましょう。

「私は弁護士で言語能力は高いけど、数学は苦手」

てなことと混同しないように、と注意書きあり。ここでは集団における分布を言ってるので、弁護士だけど・・・という言う人は、それでも社会全体の平均よりずっと数学ができるはず、少なくとも統計的にはそう、と。

ここからが意外。

それは、対人知能、内知能もIQと正の相関があると。

対人知能とは、他人の気持ちを汲み取れる、協調性がある、コミュニケーション能力がある、他人を効果的に操ることができる(というと聞こえが悪いが、他人にやる気を出させるのは大事ですな)といった能力。

内知能とは、自分の感情や動機、強み、弱みを理解し、克己心をもち、将来のために努力できる能力。

こうした能力のうち、キーとなる個別の能力とIQとの相関を調査した多数の各種調査によると、IQとの相関は+0.1から+0.3。部分集合の相関を全部統合して行くと、統計的にはより大きな相関がでるのが普通なので、おそらく「対人知能」「内知能」とIQとの相関はもっと大きいであろう、と。たとえ0.1−0.3であってもそもそも有意な正の相関があること自体がポイントです。

筆者自身、自分の知り合いを思い出して

「そもそもIQと対人能力に正の相関があるって変じゃないか?」

と疑問に思うのだが、それは「IQが高い変人が目につきやすいだけ」と。

以上の「対人能力」「自己理解」「克己心」といったものがマネジメント能力と相関あるのは言うまでもないが、「リーダーシップとIQの相関」を直接調査したものもあり、その相関は+0.27だそうです。

・・・ますます身も蓋もないですなぁ。

で、IQとマネジメントの相関が出たところで、「国のリーダーたる重要な人材のIQは120以上」というのは、これまたそういう調査があると。こちらの54ページのpdfファイルが参照されている。 IQと複雑な仕事におけるパフォーマンスの相関はかなり高いのであるな。興味のある人は見てみて。ファイルは4M近くあるが。あと、弁護士とか、医者とか、エンジニア、科学者、大学教授とかは、IQ120以上でないとなれないし、と。

(ここで、しつこいようだが、IQ120は全人口のトップ10%。偏差値で言うと60ちょっとって感じ?)

さて、そこまでいったところで、「生まれつきのIQがあがるかどうか」なのだが、ここが一番議論を呼ぶところなのは著者も承知の助であります。

(ただし、厳密には「生まれつき」というのは正確ではなく、「幼稚園に上がる頃に持っているIQ」ということですが。)

で、言及されるのが、1960年代に行われた調査に基づくThe Coleman Report。これは64万5千人という大量の児童を対象とした学力調査で、学校の成績、両親の生活レベル(socioeconomic background)、居住地域、学校のカリキュラムや設備、教師のクオリティの相関を調査したもの。皆「いい学校には学力の高い生徒がいる」という結果になることを予想していたのだが、結果は、先生のレベルも、カリキュラムも、施設も、生徒あたりの予算も、学力と関係なし。(関係あったのはファミリーバックグランドだけであった)。がーん。学校関係ないんか?ということになったのでした。

しかしそれでも、「中にはIQが伸びる生徒もいる」という反論が消えないことを筆者は理解しており、それを消すためにはColeman Reportのようなスナップショット的一時点での調査ではなく、15−20年かけて生徒のレベルがどう変わって行くかを調査するlongitudinal studyを行うべきである、としてます。これを全米規模で実施すると100億円くらいかかるらしいが、「その結果が生み出す成果を考えれば安いもんじゃ」と。

・・・というわけで、質問いただいたことには答えたかなぁと思うんですが、知れば知るほど「身も蓋もない」ですよねぇ。他にもデータ満載なんで、ほんと、興味のある人は読んでみてください。

この筆者、94年にThe Bell Curveという「IQで収入や仕事の実績など多くのものが証明できる」という本を書いて、「心理学で史上最大の論争を呼んだ」と言われる人。あまりの騒動に全米心理学会が、特別タスクフォースを作ってフォローアップのレポートを発表したくらいなのだが、その結果は「Bell Curveがほぼ正しい」ということに。でもやっぱり攻撃は消えず、という感じの本。

そのBell Curve経験を経た著者が「どれくらいアタックされるか百も承知の上で書いた」本でありましょう。なので、「きっとこういうと思うけど、それが違う理由はコレだ」みたいに延々書いてあります。はい。

いや、もちろん、全て懐疑的に考えるのは大事だと思うが、まぁ読んだら圧倒されるんじゃないかと。

余談ながら、その昔、三菱商事の人事のお姉さんで、長年人事面接の受付をしていて、

「受け付けにきた学生を見た瞬間に、その学生が入社試験に受かるかどうかわかる」

と言ってる人がいました。だったら多大なコストをかけて入社面接したりせず、この人が合否決定すればいいんじゃないかと思いますが、そうは問屋が卸さないわけですね。

あ、あと、「アメリカはIQが重視されている」「アメリカより日本が学歴社会」てなコメントもありましたが、どちらも正しくないです。日本だと小学校の低学年でIQテストすることが多いのではないかと思うがアメリカでは一般的ではないし。学歴社会うんぬんの話しは過去何度か書いてるので私のブログを検索してみてください。

<追記:ベルカーブはトンデモ本である、と決めつけてる人が結構いるみたいなんで、ベルカーブはトンデモ本ではありませんというエントリーを書きました。FYI>

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1 月 12, 2009

書評:Real Education-人口の半分は平均以下

アメリカの学校教育のあり方についての本なのだが、もう「それを言ったらおしまいよ」的身も蓋もないデータの羅列。「がんばれば必ずできる!」と何でもかんでも褒め殺すアメリカ的には呆然、って感じですが。でも結論は至極まともです。

著者曰く、本書のメッセージは4つの真実で、それは「能力には差がある」「子供の半分は平均以下」(アメリカ的にはタブー発言!!)「大学進学率は高すぎる」「アメリカの将来は学力の高い子供をいかに教育するかにかかっている」と。


笑ったのは2章。

「ノンフィクションの、しかも公共政策に関する本の第二章まで読み進んだということは、あなたの学力(academic ability)はまず平均より上。」

と断言した上で、

「そんなあなたは、きっと小さい頃から勉強ができる人が集まる学校に行き、ホントに勉強ができない人を多分見たことがない。だから『勉強ができない』子供がどれほど勉強ができないかを説明しましょう」

とひたすら「勉強ができないとはこういうことである」と例を出しまくる。8年生(中学2年生)の標準テストの結果を示し、例えば

去年90人の従業員がいた会社で、今年は社員数が10%増した。今年の従業員は何人?
(A)9   (B)81   (C)91   (D)99   (E)100

という問題で間違った答えを選んだ生徒が62%。正解した38%のうち、当てずっぽうで正解した人もいるはずなので、その分を統計的に差し戻すと「わかってない中二」が77.5%と。

(余談ですが、日本の中3を家庭教師したとき、偏差値50を超してる子でも、速度×時間=距離っていうのがどうしてもわかんない子もいたなーとか思い出したり。時間=距離÷速度ってのももちろんわからないわけです。将来車を運転して遠くに行くとき、どうやってかかる時間を計るんだろう、とやきもきしましたが、それでも何とかなっちゃうんですねぇ。)

というわけで、延々一章をかけて「平均以下とはこれくらい勉強に付いて行けていないということである」と説明しまくる。

以下

  • 学力はIQと高い相関がある
  • 生まれもったIQを上げることはまず不可能
  • そもそも、アメリカの義務教育は実は結構ハイレベル。本当に「だめ」な学校はごくごく少数で、それ以外は公立の学校でも質が高い教育が行われている
  • これ以上金をかけても、学力は上がらない
  • 大学は国をリードする可能性のあるトップレベルの知能を持った子供をちゃんと教育する場所であるべき
  • 「国をリードする可能性のあるトップレベルの知能」は大雑把に言ってIQ120以上。これはアメリカでは全体の10% (実際のアメリカの大学進学率は50%)
  • このトップ層を対象として、大学は「賢人となるための倫理/徳」「正しい判断を行うための教養」を、よりぴっちり教育すべき
  • 一方、それ以下の子供たちについては、職業訓練を推奨すべし

IQと学力の相関、IQ120の根拠あたりは本の中では、あれこれデータを挙げて延々説明されてますので興味のある方は読んでください。ま、簡単に言うと推奨されているのは「セミ・ヨーロッパ型」ですな。一部の優秀な子供だけが大学に行き、残りは13−4歳から徒弟的に職業訓練をする、という国がありますが、そういう感じかと。

ではあるが、著者が強調するのは

「エリートだけを教育せよ、と言っている訳ではない」

ということ。コレ大事ね。

人口の10%というのはかなりな数で、アメリカで2005年に18歳になった人を母集団とすると41万人。一方でトップ40の大学の入学者数は4万8千人。ということで、普通に考えられるようないわゆる「エリート」だけではなく、相当広い対象者が「国をリードする可能性のあるトップレベルの知能」を持つことになる。

で、この「足切り(トップ10%)」レベルを凌駕したら、社会で成功するかどうかは、知能の問題ではなくそれ以外の様々な要因による、と。

この層を「よくできますね」と甘やかして育ててはいかん、びしびしとより高い挑戦をさせて、挫折するまで高みを目指せさせるべきである、というのが著者の主張。ま、これはよくわかる。

一方で、著者が考える「現在のシステムでは大学に行ってしまうが、本来は大学に行くべきではない人」の人生についての考察は中々含蓄深い。いわくこんな例が:

  • 学力的にはトップ30%レベルだが、手先が器用な18歳が、そのまま電気工になるか、大学を出てホワイトカラーのマネージャになろうかと考える
  • 2005年のマネジメントの平均収入は$88,450で電気工の平均は$45,630だ。これはマネジメント職に進んだ方がよいぞ、と思うが、そこには罠がある
  • 彼の能力を考えると、おそらくマネジメントに進むと大した実績は出せないだろうが、電気工としてはトップを狙えるはず
  • 収入は平均するとマネジメントの方がずっと高いが、実は内訳を見ると、下位10%レベルのマネジメントの収入は$37,800で、トップ10%の電気工は$70,800。この方が彼の将来としてより意味のある数字なのだ

加えて、「無形のやりがい」もある、と筆者は言う。

  • 自分の能力に限界を感じながら、平均以下の実績しか出せずに働くほどつまらないことはない。しかも来る日も来る日もオフィスの内勤。電気工として外で楽しく手を動かし、毎日きちんと問題解決しながら、しかも「できるヤツだ」と言われて働くのはやりがいのある素晴らしい働き方である

と。だからといって「お前は電気工にしかなれん」と決めつけるのはアメリカンドリームに反する訳だが、本人に上記の情報を提示して、

「・・・てなことがあるんだけど、どう思う?」

と考えさせるのは大事だ、というのはよくわかるなぁ。

終身雇用だと、「大学を出て、適当にどこかの会社に潜り込めば、少々能力不足でも一生その会社の給与レベルの収入が保証される」わけだが、レイオフ、解雇、転職で次々に職を変えるのが常態となると、「大学さえ出れば安泰」とはいかなくなるのが厳しいところ。

無理して実力以上の高学歴を取ると、最初の一回こそ「学歴マジック」でなんとか潜り込める可能性が高いが、その後は、かえって、本来その人に適した職では「overqualified=スペック高過ぎ」となり雇ってもらえず、学歴に見合った職だと「能力不足」として雇ってもらえない、という恐ろしい「谷間状態」になったりするんですよね。くわばらくわばら。

<追記:追加でRead Education続きーさらに身も蓋もない話しベルカーブはトンデモ本ではありませんというエントリーも書きました。ご参考まで。>

関連過去エントリー:
ミドルクラスの地盤沈下
大卒が安定雇用を得られた時代の終焉

日本の平均以下の生徒のおはなし(面白いデス)
中3を家庭教師した頃の話

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1 月 09, 2009

サニーベールの半導体ベンチャーが日本語堪能なFAE募集(ビザサポートあり)

私の知人が日本代表を勤める、面白い技術を持ったCanestaというベンチャーが、日本語と英語ができるFAEを急遽、大至急、喉から手が出んばかりに募集中。日本でビッグクライアントが取れたので、そのサポートをする人が必要という景気のいい話です。

勤務地は本社のSunnyvale。現在日本にいる方でもビザサポートするとのこと。

Canastaの製品はCMOSセンサーチップで、要は「カメラ」なのだが、3D形状をリアルタイムに認識できる、というのがミソ。

Canestaのサイトより

Canesta CMOS chips emit a field of continuous field of infrared light and measure the time it takes for that light to reflect back to the chip – for every pixel. In real-time, the chip processes those distances to create a three dimensional image of the objects in its field of vision.


CMOSチップが赤外線光を面的に放射し、ピクセルごとにその反射が戻ってくるまでの時間を計ることで、対象物がどこにあるかを3Dで認識する、と。

リアルタイムで計れるので、単なる静止画としての3D形状ではなく、どんな動きをしているかもわかるわけです。Canestaの製品紹介ページにあるビデオを見るとイメージがつかめると思うが、ジェスチャー認識などできるわけですね。

面白いな、と思ったFAEの方はぜひどうぞ。私の知人の日本代表とも密に連絡を取って働くことになると思いますが、この人もとてもいい人です。

現在アメリカ外在住の方は、今からシリコンバレーにいれば次に景気の良くなる頃にはグリーンカードも取れて楽しく転職三昧となることでしょう。

以下募集要項です。我れはと思わん方は、直接Canestaの人事のCharlona Merrittさん cmerritt at canesta.com (atは@マークに)までアプライしてください。

Job Description – Senior System/Field Engineer

A senior engineering and support position with the Platform Engineering Support team in Canesta, reporting to the Director of Vision System Products – Automotive/Industrial / Commercial Customers. This role is perfect for a highly-motivated, customer-savvy, multi-disciplinary engineer who enjoys connecting technically with customers.

The position will

  • Work directly with customers in various parts of the world including Asia and Europe to integrate Canesta sensor technologies into their products.
  • Program manage customer design-in projects and act as a liaison between customers and Canesta’s engineering organization.
  • Develop expert technical knowledge of Canesta’s sensor technologies.
  • Create and deliver technical presentations, documentation and training.
  • Provide on-site and off-site technical support to potential and existing customers.
  • Assist Marketing and Sales team with pre- and post-sales technical support, including project proposals and live demonstrations.
  • Perform Tests Electrical and Software on Module developed using Canesta Technology


Minimum Requirements

  • BSEE/CS, or equivalent (MSEE/CS preferred).
  • 4 years or more experience engineering customer solutions and providing customer support.
  • Strong multi-disciplinary hardware, firmware and software skills; comfortable discussing hardware specifics and software architecture in the same meeting.
  • Able to establish system requirements and then to distill them into project requirements, manage resultant schedule and drive to completion.
  • Must have strong communication and planning skills and be willing to travel to support customers and partners.
  • Must be able to read, write and speak in English / Japanese


Additional Desired Experience

  • Self starter, ability to quickly learn and implement new technologies.
  • Development or support in an automotive environment, such as a Tier-1 or OEM.
  • Experience with CMOS image sensors.

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1 月 07, 2009

日本語学習者が世界で急増

アメリカのとある高校で過去10年で日本語の生徒が3倍になっている、という話。先月ラジオでやってました。プログラムはこちらで聞けます。

勉強する動機はマンガ、アニメ、ゲーム。「原語で理解したい!」という、明治時代の日本の文学者みたいな理由で学んでいる模様。こういう本↓で勉強したりしてるらしい。


国際交流基金によれば世界での日本語学習者は同様に増加中で、300万人が日本語を勉強中、とラジオでは言っておりました。

軽くグーグル検索したところ、カナダのBritish Columbia大学でも2001年までの5年間で日本語履修者が3倍増。こちらでも

Students here are interested in Japanese pop culture such as animation, fashion, comic books and music.

生徒の興味はアニメ、ファッション、マンガ、音楽などポップカルチャーで

Tokyo is to these students what Paris was to American students in the 1950s -- a cultural Mecca.

東京は、50年代のアメリカ人にとってのパリのように「文化のメッカ」となっている、と。生徒数の急増で教えるほうが追いつかない状態だそうでございます。

この間梅田さんとランチしたときに「日本語が亡びるとき」という本のことを熱く語っていただいたのだが、その逆って話し?私、「日本語が・・・」の方読んでないので以下想像で語りますが、多分、両立する話なのかも。知的探究心を追求するならセカンドランゲージでも英語は欠かせないし、一方で世界のオタクには日本語は魅力的な言語であり続けると。

・・・というのは、実は私自身の普段の行動を投影しすぎてるかもしれませんが。わたし、日本語で自分で買ってまで読むのはほぼマンガだけなんで・・・。(いただいた本は読んでますが)。人生の最初の30年、一ヶ月で100冊みたいな感じで死ぬほど日本語の本は読んだからもういいかな、と。でも、マンガはアートだから。

最近読んだマンガでは「聖おにいさん」。仏陀とイエスキリストが、天界から休暇を取り、立川にアパートを借りてルームシェアしている、というとんでもない設定のほのぼのマンガ。イエスはブログに情熱を燃やし、仏陀はけちけち節約に命を賭ける。イエスはストレスがあると聖痕が開いて流血、仏陀は感情が高ぶると後光が差してしまう、というハンディを抱えてのサバティカル。アパートの保証人は、一番日本人的名前の使徒マルコ君だ。

日本のマンガやアニメを欧米に輸出しているVizMediaのマドカさんが

「絶対アメリカに持ってこられないマンガ」

とお墨付きで推薦してくれました。

 

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1 月 06, 2009

書評:タクシー王子、東京を往く

昨年5月に出た本だし、ベストセラーになったそうなので、大変いまさらであるが面白いヨ。

実は去年の春にいただいていた本である。著者は、マッキンゼーで某地獄プロジェクトを共に過ごした戦友の川鍋さんだ。ちょうど引っ越し荷物を詰めている頃に届いたようで、Fedex封筒のまま引っ越し荷物に紛れ込み、最近再度引っ越ししたところで出てきた。「こ、これはっ」と恐る恐る開けたら出てきたのがこの本とご本人からのメモ。川鍋さんごめんなさい。今更ですが書評を書かせていただきます。

さて、何が面白いと言ってタイトル。だって本当に「王子」なんだもん、川鍋さん。

父方のおじいさんは日本最大のタクシー会社、日本交通の創業者、お母さんのおじいさんは藤山コンツェルン創始者で日本商工会議所の会頭も勤めたという人。麻布に生まれ育ち、幼稚舎から慶応、ノースウェスタンMBAでスタンフォードにも留学。絵に描いたような王子ではありませんか。

しかもだ。これが本当に努力家でいい人なんである。

私は、川鍋さんが、やがては日本交通を継ぐことになるのは承知の上でマッキンゼーで修行していた頃ご一緒したのであるが、どれほどひどい上司がいても

「いやー、あの人のいいところをちゃんと引き出せない僕が悪いんですよねぇ」

なんて言っちゃうという。家が大金持ちであることを妙に隠したりもしないし(←たまにいる。かえって嫌みである)、かといって偉そうにするわけでもなく、誰に対しても丁寧で礼儀正しい。体を壊すぐらい実直に努力し続けちゃうという面もある。

一条ゆかりの「プライド」という漫画があって、これは正真正銘の清く正しく美しくしかも努力家のお嬢様と、不幸な境遇に育ち嫉妬に歪むけど努力家の女の子がメインキャラクタなのだが、川鍋さんはこのお嬢様の男版って感じでしょうか。

さて、そんな川鍋王子は現在日本交通の社長なのだが、その社長がなんと1ヵ月も運転手として乗務した、というのがこの本。

しかし、港区からほとんど出たことがない王子は道を知らない。

「西麻布から湾岸習志野経由、稲毛経由、蘇我駅まで」

というスーパーロングが来ても、

「イナゲ、ソガ?全然わからないけど、きっと超ロングだよな、コレ?」

としか認識できない王子。

八王子が国立府中より遠いことも知らない。(川鍋さん、中央高速でゴルフとかスキーとか行ったことないんですか?)

明治通りが池袋を通っていることも知らない。

(東京にお住まいでない方は何のことかわからないと思いますが、その場合は、地元の超メジャーな地名を上記に代入して読んでください。)

それでも、地道に努力して平均を上回る営業実績を上げる。「タクシーの営業成績を上げる秘訣」までリストアップしてあります。都内の著名裏道リストまであるぞよ。

そして、途中、バブル崩壊で1900億円という巨額の負債を負った日本交通を立て直した話しも登場する。お父さんから社長の座を譲られた翌日、お父さんがガンで亡くなるという劇的な交代を経て、ありとあらゆる資産を処分し、自宅まで売却する、というつらい日々を経て会社は復活する。それはもうさぞや大変だったと思うのだが、その辺の話しは淡々と軽く触れられるだけ。

ま、しかし、こうしてタクシー会社の社長が自ら流しで運転手ができるくらい日本の治安はいい、ということでもあるかも。

それにしても、私が知る由緒正しいおぼっちゃまというのは皆さんいい人。超がつく庶民の育ちの私が、そういう慶応幼稚舎的で慶応大卒的な人たちと知り合うようになったのは就職してからだが、いや、みなさん真面目に良く働くこと働くこと。「このくらいでいいや」というハードルが高いんですね。頭が下がります。

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1 月 05, 2009

書評:抜擢される人の人脈力 早回しで成長する人のセオリー

あけましておめでとうございます。さて、久しぶりのエントリーは岡島悦子著、「抜擢される人の人脈力 早回しで成長する人のセオリー」。著者の岡島さんは20年来のお友達なり。以下、本の中身もさることながら、著者の怪異な力をご紹介する渾身のエントリーです。

 

まずは本の中身。

「良いポジションを与えられるかもしれない機会」「成長できる機会」運頼みにせず、もっと積極的に、戦略的に、それらを引き寄せる努力をすべき

引き寄せるには、そういう機会を与えてくれる人と知り合う必要がある、ということで、そういう人と出会うための人脈作りのための方法が説明されている。まずは

1)人脈スパイラルモデルで人脈を増やす

①自分にタグをつける(自分が何屋なのか訴求ポイントをはっきりさせる)
②コンテンツを作る(「お、こいつは」と思わせる実績事例を作る)
③仲間を広げる(コンテンツを試しあい、お互いに切磋琢磨して、次のステップを共創する)
④自分情報を流通させる(何かのときに自分のことを思い出してもらうよう、種を蒔く)
⑤チャンスを積極的に取りに行く(実力以上のことに挑戦し、人脈レイヤーをあげる)

人脈がある程度増えた暁には

2)人脈レイヤーを上げる

人脈スパイラルモデルの①~④で人脈を構築し、その結果、その人脈から抜擢されてステップ⑤の機械を獲得し、そこで実績を積むことによって「ぐいっ」と目線が上がり、「ひとつ上の人脈レイヤー」に押し上げられることになる

「上げる」というより「上がる」わけですが、上記総合すると「実力と宣伝と人脈のわらしべ長者モデル」ですな。じゃぁ①から⑤を具体的にどうするの、ということに関して説明してくれる本なわけです。

「自分から売り込まないでもきっと誰かがちゃんと見ていて何とか救ってくれる」という、白馬の王子様願望の高い人は読んで改心するといいと思います。はい。ちなみに、「売り込みさえすれば何とかなる」と言っているわけではなく、実力も必要だがそれを人に知ってもらうことも大事なのよね、ということ。両輪ですね。

***

というわけで、ここからが岡島さんの怪異な力。それは「寝ないで働ける」ということ。最近はそれでも一日4-5時間は寝ているらしい(3-4時間だったかも)が、私が知り合った20代前半の頃は

「1週間で10時間寝ればOK」

と豪語していた。驚愕した私が

「一週間って、月曜から金曜ってこと?それとも月曜から日曜?」

と確認すると

「月曜から日曜」

ということで、要は一日1時間ちょっと寝ればOKなんですね。

ちなみに、私は睡眠時間が長い。だいたい8-10時間ペースなのであるが、まぁ当時は就職したばっかりだし、がんばって7時間睡眠くらいで生きていた。そんな私と岡島さんを比較すると、一週間に

7×7-10=39

ということで、実に39時間稼働時間の差があることになる。この時間を全部仕事に費やしたとすると、一日8時間働くとして5日分だ。あれ、それって一週間あたりの就業日数じゃん。つまり、

岡島さん=私×2人

ということ。

人間、質も大事だが量も大事なのは紛れもない事実。もうこれはどうやって逆立ちしても絶対かなわないわけです。

当時

「24時間働けますか」

という歌詞の曲がバックに流れる栄養ドリンクのCMが流行っていて、私は軽い冗談だと思って聞き流していたのだが、本当にほぼ24時間働ける人が世の中にはいるのね、ということを知り愕然とした。

私のほうは、長く寝るだけでなく、就職活動していたころは、朝10時前に電車に乗ると100%貧血で倒れるので、午前に会社訪問するときは車を運転していっていたくらい。(おかげで丸の内やら大手町やらの駐車場に詳しくなった。)こんなんで社会人になれるんだろうか、と薄々疑っていたのだが、案ずるより産むが易しで、仕事を始めたら結構体が強くなって喜んでいたのだが、それにしても寝ないで働くなんて無理無理。

ということで、こんなへたれな私は圧倒的に人と違うことをして差別化しないとやっていけないなぁ、としみじみ実感させてくれたのが岡島さんなわけです。

そして、その彼女が起きている時間の全てを賭してつかんできた人脈の作り方の全てが出ている本なのであります。

ちなみに、裏岡島情報としては

1)歌がうまい
2)ピアノがうまい
3)絶対音感がある

というのもあります。子供の頃オペラ歌手になる英才教育を受けていたとか。ピアノも、どんな曲でも聴いただけでじゃらじゃらーっとフルに弾けるという、歩く「のだめ」状態。

というわけで、一家に一台岡島さん、ですね。それはちょっと、という方は一家に一冊、人脈力を。

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