激動の20年とアメリカの保守

いや、まさか$700 billion bailoutが否決されるとは。さすが共和党。自分の党が作ったプランを自ら否決。さすが「政府は何もしないのが正しい保守」の国の保守党であります。

それにしても90年代の日本の株・住宅バブル崩壊、アジア・クライシス、アメリカのドットコムバブル崩壊、9-11と来て、また世紀の大住宅バブル崩壊。これは、歴史史上に残る激動の20年なのか、それとも、時代が変化してもはやこういうスイングが当然のことになるのか。

個人的には人類史上にデフレの金字塔を打ち立てた比類なき日本のバブル崩壊と、たかがインターネットベンチャーごときで国全体の経済が失速したドットコムバブル崩壊をそれぞれ震源地で体験し、

「やれやれまたか」

という感じではありますが。

ま、でも、私、資本主義モデルが今のところ世界にある中で最良のシステムであると今でも心の底から信じております。はい。(「完全無欠に正しい」と言っているわけではありません。他のシステムよりマシだ、とそう思っているだけです。)

ちなみに、なぜ保守の共和党が政府介入を否定するのかについて。アメリカの保守の王道では、

  • 政府は限りなく小さく (産業界に干渉しない。政府による福祉もしない。公的健康保険もなし)
  • 軍事は増強
  • 個人が銃を持つ権利を保護
  • 中絶禁止
  • ゲイ結婚反対

という価値観がセットになってます。外国人からすると訳のわからないセットですが、地域や時代の趨勢でこの中のどれかが選挙の争点に。(信じられないことに、「銃を持つ権利」が最大のポイントとなることも結構ある。だからPalinさんの銃擁護は大事)。

で、この一番最初の「小さな政府」が非常に強力な信念なので、「政府の金で金融機関を救うなんてことをしたら、有権者が離れていってしまう」となるわけです。

でも、これで来月本当にアメリカと世界の経済が大崩壊したら、「ほら、だから政府の干渉が必要だ」とゆり戻って11月の選挙は民主党が勝つとか?

ちなみに、1929年の世界大恐慌の時は、政府不干渉で悪化、3年後に大統領になったルーズベルトによる政府主導型経済施策であるところのニューディールで復活、その後第二次大戦を経て、20年かかって貧富の差の圧縮による大量のミドルクラスが誕生し、その後15年間がアメリカ経済黄金期となった。

そして、世界大恐慌の前のアメリカは、一部のスーパーリッチに富が集約する時代だったのでした。まるで今みたいなわけです。(このあたりの経緯は、下記のクルーグマン本の書評に詳しく書きました。)

これが繰り返すとしたら、オバマがルーズベルトになるということなのか。うーむ。

<以前書いたエントリーより参考>

アメリカの保守

書評:クルーグマンのThe Conscience of a Liberal

激動の20年とアメリカの保守」への6件のフィードバック

  1. 世界恐慌発生時は、すでに資源輸出・技術・製造業大国だった。
    今は多くが失われているので、かつてのようにはいかないとおもいます。
    日本も早く米国債なんか売っぱらって、資源を買いだめしておいた方が良いかも。(米国債暴落の引き金を、引いてしまうな。)

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  2. >>一部のスーパーリッチに富が集約する時代
    世界的な投資資金の背後の多様性が減少したため、資金の動きが巨大化し、その一挙一動がバブルを起こしたり破裂したりしているのではないでしょうか?
    『市場リスク』(リチャード・ブックステーバー)でそのあたりの振れやすい市場構造の話が丁寧に説明されてて、おすすめです。
    ちなみに、ゲイにレズは含まれますか?

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  3. > 時代が変化してもはやこういうスイングが当然のことになるのか。
    変動性の金利と、資源と証券の価格設定が市場に委ねられている限り、商人のポーカーゲームは終わらないでしょうね。
    金融工学と銘打った金融業界の格付け投資は所詮は見えない未来に向けた活動で、常に相対的なポジションが存在している中で日常的に大小規模を問わず勝ち負けが生まれ、どこかのタイミングで臨界点が訪れるのは必然ですよね。
    一番の問題は多くのトレーダーが自らの生活資本をリスクにさらさずに、他人の資本で大負けが発覚するまで、サラリ700ーマンのように高額な給料を貰い続けることが出来ることですかね。
    > これが繰り返すとしたら、オバマがルーズベルトになるということなのか。
    もしくは、この10年で貿易黒字で累積した莫大な外貨を貯めこんでいる国々がここぞとばかりにこれからハゲタカのように群がることを考えると、700billionくらいはグローバル金融の民間市場調達でどうとでもなると共和党は考えているのでしょうかね。
    日本のバブル後遺症は退場すべきが退場しなかったことによる余波だとも考えられますし。
    野村がリーマンのアジアと欧州の事業を買収するなんて、一昔前なら政治に介入されていたと思うのですが、バブル後遺症で自制心の効いている日本の金融に参入してもらい、リミットの効かない愚者には退場して貰いたいと本気で思ったのかも知れませんね。
    破綻発表後の価格設定と決断があまりに速かったので、破綻前から交渉が始まっていたのでしょうけど、次に同じ轍を踏むのが野村とならなければ良いのですね。

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  4. chikaです。
    >資源を買いだめしておいた方が良いかも
    ちなみに、Campbellスープ社の株は昨日も今日も続伸中。「困ったときのオフクロの味」的ノリの模様です。9-11の後は買いだめ需要で売上増進したとか。
    >ゲイにレズは含まれますか?
    含まれます。広義で・・。

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  5. 正論は言い手を選ぶ

    正論だ。
    間違っているオバマが勝ち、正しいマケインが負けそうな件 – FIFTH EDITION
    昨日ね、共和党のマケインのじーさんが、
    “Now is not the time to fix the blame. It’s time to fix the problem,”
    「今は犯人捜しをしている時じゃない。問題を解決する時だ」
    ……

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