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8 月 30, 2008

意外な副大統領候補

勝負に出てる感がにじみ出るMcCainの副大統領候補。アラスカ知事、5人の母、44歳なり。

「いったい誰?」と皆思っているアメリカでした。

HillaryはObamaに負けたとはいえ、予備選で1800万票近く獲得したわけで、しかもその多くが女性票。McCainはこの「女性票の獲得」に出たか、と。でも世の中はそんなに甘くない。

「Hillaryはここまで来れたのは、女性だからではなく、優れた能力があったから。それを、こんな無名の候補を単に女性だからといって出してくるとは何事。女性にとって失礼である」

といったコメントも複数回耳にしました。

(余談ながら。何年か前、シリコンバレーに住むとある日本人男性が、

「日本人女性はアメリカではマイノリティーとして優遇されるせいでいい大学に入れるから、どんどん挑戦して欲しい」

みたいな文章をとある日本語メディアに書いていて、

「はぁ、まだこんなことを言う人がいるかねぇ」

と遠い目になったのだが。つまりその人って、

「女性があげてきた成果は、優遇されてきたからこそあるもの」

と思ってるわけで、男性と対等の存在と見てないわけですな。マイノリティーなのは日本人男性も一緒なんですが・・・。

もとい、今回のMcCainの選択も「ヒラリーもアラスカ知事も同じようなモンだ」と思ってるんかい、と怒ってる人がいるわけです。)

また、McCainは、これまでObamaが経験不足だ、とひたすら攻撃してきたのに、自分の副大統領はもっと経験不足な人をもってきたわけで、それって何事?と。

さらには、McCainは副大統領候補にこれまで一回しか会ったことがないそうで、

「知りもしない副大統領を持ってくるとは国政をなめてるのでは?」

という人もいる。あと、副大統領候補を発表する際に、普通は

「私に何事かあったときには代わって大統領となる人」

と紹介するものなのにそう言わなかった(つまり信用してないのか?)とか、いろいろ揚げ足取りが起こっております。

とはいうものの、フレッシュなチョイスには間違いなく、打って出た、という感じ。

Obamaに投票することで

「歴史的大統領の誕生に貢献した」

と思う人が沢山いるのでは、という予測があるが、McCain側も

「歴史的『副』大統領の誕生に貢献した」

という投票者をゲットできる可能性がでてきたわけです。

ちょっと前に、「マスコミの予想が当たらないことで心洗われる大統領選」というエントリーを書きましたが、今回の副大統領の選択もまさにそれ。全くのダークホース。アメリカは本当に「予定調和」というものとは程遠い国なのであります。マスコミに取り上げられた上記の様々なコメントも、実際の選挙がどう進むかとは恐らく全く関係ないんですよね。勝負はこれからなのでした。

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8 月 28, 2008

嘘をつく人

アメリカで、10年以上大富豪Rockefellerの名を語ってきた男が捕まった。最終的には別れた妻の元から娘を誘拐したことで追っ手がかかったのであった。

しかし、捜査の過程で、実は過去に別の複数の著名な苗字を語って全米に出没、昔住んでいた家の大家のカップルが行方不明になった事件の参考人、しかも正体はドイツ人だった、ということがわかって、あちこちで大きく取り上げられている。先週末のNew York Timesにも特集として大々的に。

10年前後結婚生活を共にした奥さんはハーバードMBA、マッキンゼーで女性として最年少でディレクターになり、今はロンドンオフィスで働いている、ということで、この人もマスコミに追われている。気の毒・・・。

偽Rockefeller氏は、30年前の高校時代にドイツからアメリカに交換留学生として渡り、それっきり姿をくらまし、その後はChichester、Crowなどのいろいろな名前を使って出没、90年代前半にはRockefellerという名前となり、その後元妻と会って結婚してからはかなりの間Rockefellerに落ち着いていたようだ。

Rockefeller氏は豪華な車、豪華な家、豪華な絵画コレクションなどで周囲を煙に巻いてきたのだが、本人は「奥さんの収入で全てまかなってきた」と主張。まぁマッキンゼーのディレクターだったら可能ですな。離婚したときに、慰謝料を元妻から80万ドルもらったそうなので、とりあえずはそれで離婚後も優雅な暮らしをしてきた模様。

New York Timesでは、ボストンの検事のコメントも載っていて、いわく

“Gerhartsreiter is at the center of the longest con I’ve seen in my professional career,”

GerhartsreiterはRockefeller氏の本名。「彼の詐欺歴は、検事さんが見てきた中で最長」、と。

普通は、人から金を掠め取る過程のどこかで足が付く、というのがお決まりのパターンだと思うが、この人の場合やっぱり稼げる奥さんと一緒になれたことが嘘の長期化を可能にしたかと。

しかし、ちょっと疑問なのは過去10年間、奥さんが働いている間、何をしてたのかということ。「小国の財務アドバイザーをしている」とか周りには言っていたようですが、奥さんは不思議に思わなかったんでしょうか。最後は変だと思ったから離婚になったのでしょうが・・・・。

今日のラジオ番組でもこの人のことが取り上げられていて、専門家の人が

「騙されるのはありとあらゆるタイプの人。教育レベル、生活レベル等は関係ない。騙すプロに『こいつを騙す』とターゲットにされたら、それを見極めることはきわめて難しい。つまり、騙されるかどうかは、騙しのプロにターゲットにされるかどうかだけの違い」

てなことを言っていました。というわけで、長らくターゲットにされた奥様は大変お気の毒です。

勝間和代さんが「勝間和代のインディペンデントな生き方実践ガイド」という、自立した女性の生き方のお勧め本で、世の中の男には自立して稼げる女性を認めない「オレ様」と、そういう女性に依存してしまう人がいるので気をつけよう、と書いているが、Rockefeller氏は「依存」の超級版ですな。

で、さらにふと思い出したのはFrank Abagnale。経歴から年齢から何から何まで詐称して複数の人物に成りすまして周囲を騙した有名人。以前も触れた映画でCatch Me If You Canというのがあるが、これはAbagnaleがモデル。過去エントリーから引用すると

17-8歳の若さで、パイロット、医者、弁護士になりすまし、世界をただで飛びまくり、数百万ドルの偽造小切手を使ったFrank Abagnaleのお話。主演のDiCaprioは好きでないのだが、実話ですよ、実話。そして、なんと「おまけ」コンテンツで、本物のFrank Abagnaleの話が聞けるのだ。 捕まってしばらく監獄で過ごした後、28歳で特別に釈放されFBIで小切手偽造犯罪の部署に勤め、さらには、偽造されにくい小切手の作り方を銀行などに指導するコンサルティングビジネスで、詐欺師時代の10倍近い収入を得るにいたった

Abagnale氏は、最近でもコンピュータセキュリティのコンファレンスのスピーカーになったり、きちんとまっとうな道を歩かれている模様。

このAbagnaleもそうなんだが、偽Rockefellerもものすごく頭の回転が速そう。偽Rockefellerは、アートから政治から物理から、ありとあらゆることに精通していて、変幻自在に知的で楽しい会話ができたそうですし。
Abagnaleのように早くに逮捕されていれば、逆にその後更正してまっとうな人生が歩めた・・かも?

ちなみに、私、こういう感じの知り合いが一人います。まぁ彼の場合は、経歴は詐称ではなく、大学を19歳だか20歳だかで卒業して、大学院をスルスルと卒業するやいなや起業、ナスダックにIPO、と大変華々しい。・・・のであるが、その後だんだんと悪い噂を聞くようになってきた。国際的スケールで犯罪ぎりぎりのことをして大金を動かしている模様です。私が知っている彼は、嘘つきではないのだが、どこか世界観のネジがゆるんでいる感じが常にあった。目的さえクリアにあれば大嘘をつき、その後嘘発見器にかけられても針がびくりとも揺れない、みたいな。「焦る」「後悔する」といったことが無縁なタイプです。しかも極めて頭がよく、見た目さわやか。

今に大事件の渦中の人になるのではないか、と内心思っていたりします。はい。

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8 月 21, 2008

アメリカの気の毒な苗字

ジャマイカのUsain Boltってのはすごい名前ですね。bolt=ものすごい勢いで走り出す。thunderboltといえば稲妻。CNBCも、「これほどマーケティング的にすばらしい名前のアスリートは史上初では?」と。

それで思い出したのが、この間聞いた気の毒な苗字。

薬局で処方薬を買うときは、ピックアップするときに名前を言う必要があるのですが、中年の白人女性が売り場の人に苗字を聞かれて、

「えいち・おう・えい・あーる」

と。通常「Smith」などと、名前を言うものなのに、いきなりスペル。頭の中で「?」と一瞬考えて納得。hoar=ホア、という発音になるはずですが、同じ発音でwhore=売春婦。女性の蔑称としてよく使われる言葉でございます。

少し前にはMeet the Fockersという映画がありました。「fxxk」と非常に似た発音の苗字を持つ家族にまつわる話し。このときも微妙につづりは違うものの同じような苗字の家族が実在し「あんなふうにコメディ映画にされて不快。我が家ではこの名前に誇りを持っている」とか新聞のインタビューに答えてたのがありましたが。

Virginというのもありますな。昔日本の箱根駅伝にこの苗字の選手が来ていて、解説者はひとしきりこの話で盛り上がっておりました。この人も確かアメリカの選手だったような。

NPR(ラジオ局)の人気番組、Fresh Airを20年以上ホストしているのはTerry Grossですが、grossは「ひどい、気持ち悪い」という意味だったりもするし。

移民国家ゆえ、「元は普通の名前だったが、英語圏ではありえない意味になってしまう」ということも多いのかと思いますが、上の例はどれももともと英語って感じだし。

それに比べると、日本は苗字のバリエーションが豊富な割に、「これはまずいだろう」というのは少ないような気が。

オリンピックで、ビーチバレーの「シラトリ」さんを見ていたダンナ(英語しか話せない)が、

「この人、ゲームと同じ名前で気の毒だねぇ」

と。

???

結局「シリトリ」と混同していたことが判明。(シリトリ=ダンナが知る数少ない日本語の一つ)。シリトリはいやだな、やっぱり。でもそんな人はいないし。

由緒正しいのはありますよね。昔東京で働いていた頃、会社に鴨脚と書いてイチョウさん、という人がおりました。鴨の足跡はイチョウの葉のようだから、ということだそうで、京都の出身の方だとか。高校時代、同じく都内の学校の近くに街風という苗字の人が住んでいて、これはツムジさん。

ちなみに、私の「渡辺」はこちらではwannabe(ワナビー、ですな。=まねっこ)とか間違われることありますが。英語圏の人には、ワ・タ・ナ・ベという四音節は大変難しいらしい。なので、なんとか三音節に縮めてしまいたい、と。別バージョンではwantanbeというのも。wantonで「悪意に満ちた」てな意味アリ。wontonだったら食べ物のワンタン。wanton-be=wantonになりたい人という響き。

悪意もワンタンも、どちらにもなりたくないですが。

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8 月 20, 2008

Googleストリートビューに思う日米の距離感の差

Google Street Viewが日本でも見られるようになったと聞いて、実家の住所を入れてみて出てきた画像に結構ビックリ。一応ぎりぎり都内、という感じのごく普通の住宅地なのだが、家の細部までくっきり。隣の家の洗濯物まで見える。

これはちょっといやだなぁ。

一方、アメリカの私の家のストリートビューもずっと前からあるのだが、こちらは別にどうということもない。こんな感じなので↓ 一応シリコンバレーなんですけど・・・。

Streetview

視点を動かしていくと、隣の家の人がビション・フリーゼ(白くて巻き毛の小型犬)のカプリス君との散歩から帰ってきたところが写っているのはかなりツボにはまったのだが、本人には言っていない。嫌がるかな、と思ったので。多分知らないと思います。しかしこれも、写っているとはいっても、随分遠くからのもの。

***

いや、もちろん、アメリカでもストリートビューは問題になった。

「いろいろわかってすばらしい」から「プライバシーの重大なる侵害」までいろいろなスペクトラムの意見がわいわいと。自分の猫が窓越しに見える、とか立ち小便してた、とか。プライバシー保護団体も異議を唱えた

アメリカ以外の国でも問題になった。たとえばイギリス

というわけで、ストリートビューとプライバシー問題は切っても切れない関係にあるわけですが、しかし、やっぱりアメリカより日本の方がインパクトあると思います。人口密度が高いから。道路が狭くて、歩いている人も、家も、全てが近くにあるわけで、写真で見せられたときの衝撃も大きい。

一方アメリカは、道路が広い。道路から家の距離が長い。都心部に住めば違うが、そういうところは通常高層住宅。

サンフランシスコにはずらっと個人住宅が並ぶところもある(↓)が、そういう家の多くは庭が裏にあり、居間や台所など、人がいる時間が長い部屋はそちら側に面していがち。下のストリートビューで見える「玄関側」は、実は日本の感覚で言うと「家の裏側」なんです。(余談ながら、こういう家の隠れた庭は都心のオアシスという感じで、思いがけなく素敵だったりします。)

Streetview2

なので、日本のように「道路側が表側」というのに比べると、写真を撮られるインパクトも低い気がする。

で、移動は車なので、街中を歩く時間も少ない。

(日本から来た人がアメリカの住宅地を見て「誰も人がいない!」と驚くことが多い。歩くだけでなく、自転車に乗ってる人もいない。普通の住宅地の道には誰もいない、というのがごく普通。)

というわけで、「うーん、やっぱり日本だとストリートビューはちょっと衝撃だなぁ」というのが正直な感想。(ご参考まで、WebwareのStreet View Throws Japan for a Loop

***

ちなみに、この距離感の差って、日本とアメリカの文化や考え方の根元にあるという気がするんですよね。

村上春樹も「日本ではいかにdetachするかが問題だが、アメリカではいかにcommitするかが問題」というようなことを言ってたが、アメリカ的な物理的距離感の中では、がんばって自分から社会に関わっていかないと、なかなか関わることができない。日本では「失敗を見られる」というのが一番の恐怖なら、アメリカの恐怖は「誰からも忘れられること」なんじゃないかなぁ。

ちょっと話は飛ぶが、この「失敗を見られる方が怖いか、誰にも見られない方が怖いか」というのって、起業の盛んさ加減にも関係する気がします。起業して失敗するのと、平凡な人生で誰にも見てもらえないの、どちらが怖いか、という・・・。

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8 月 18, 2008

ゲイダーの発達

gaydarと書いてゲイダーと読む。ゲイのレイダー、です。Wikipediaのエントリーによれば、

Gaydar (a portmanteau of gay and radar) is the intuitive ability to assess another individual's sexuality as gay (homosexual), bi (bisexual), or straight (heterosexual). The function of "gaydar" relies on non-verbal sensory information and intuitions.

とのことで、「言葉以外の情報や直感で相手がゲイかバイセクシャルかストレートかを見分ける能力」。バイセクシャル、まで極めるのは大変かもしれないが、アメリカに暮らして数年すると発達してきます。

日本から来た知人が

「攻殻機動隊をハリウッドで実写化するらしいが、英語だと男女の言葉遣いに差がないから、草薙素子の『男っぽい話し方』という旨味が消えてしまうのでは、と心配」

と言っているのを聞いてハタと思い出した次第。

確かに使う単語とか語尾とかは日本語ほど差が無いのだが、全体的には女性らしい話し方、男性らしい話し方、というのがそれなりにあるのであった。

大学院に留学して初めてアメリカに暮らし始めた頃は私も全然わからなくて、半年位したところで、

「クラスメートのX君って、本当に絵に描いたようなゲイ、って話し方だよねぇ」

と別のクラスメートたちが話し合っているのを聞いて、「そ、そうだったんだ!」とビックリしたのであった。イントネーションとか表情、身振りとか、そういうものの総合です。

最近では、たとえば写真を見ただけで「絵に描いたようなゲイ」というのも判るようになりました。いや、別に普通の髪型にセンスの良いスーツ、とかの上半身の写真なんですが。

雑でラフでタフな感じ、が女性にもてるアメリカでは、オシャレなだけでボーダーライン。そこにちょっとした仕草(微妙に小首を傾げている、とか)が加わるだけでわかるわけです。

「雑でラフでタフな感じがモテル」については、去年かいた、女が男のフリをして1年生活し書いた本の書評から抜粋すると:

多くのデート相手が、彼女が「実は女」と告白した後で、
「何か変だと思ったんだけど、そうだったの」
となる。「ゲイだと思った」という女性もいて、いずれも「変だ」と思う理由が
「おしゃれすぎる」
「髪の毛がちゃんと整いすぎている」「靴がステキすぎる」などなど。しかも、そういうオシャレさが、必ずしも女性に対する男性のセールスポイントとしてプラスに働かなかったりするのでありました。デート相手の一人の女性いわく、

(中略。要約すると、体重90キロみたいなラフで雑な男が好きなんで、あなたはメトロセクシャルすぎ」みたいなことを言われる)。

アメリカ人の男がラフでオシャレじゃないのは、女性がそういう男を求めているからだったのね・・・

「英語でのゲイっぽい話し方」としては、語尾が微妙に上がりがちだ、とかそういう感じ。

でも、皆目わからないことも。前に書いた双子のお父さんのゲイの友達は、インドのアクセントがあったこともあって、人当たりがソフトなだけかと長いこと勘違いしてました。

ちなみに、日本の若くてオシャレな男性は全てゲイに見えるので、日本ではゲイダーは働きません。(アメリカに住むゲイの人が日本に行き、「表参道辺りでは、道行く男の子が全員ゲイに見えて萌えた」、と言っていたり。)

で、日本からシリコンバレーに渡ってきたオシャレな日本人男性は、大抵約1年ほどで圧倒的にオシャレ度が下がるような。人間の価値観って面白いですね。それはそれでエッジが取れてしまって残念なんですが。

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8 月 16, 2008

ムスビをルームランナーに乗せたらこうなるであろうビデオ

発見。我が家の惰眠猫ムスビも必ずやこうなることでしょう。


Cat Refuses To Exercise - Watch more free videos

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8 月 15, 2008

書評:家庭菜園に取り憑かれたITマネージャの"The $64 Tomato"

また食べ物の本ですが、今度は家庭菜園に取り憑かれたITマネージャの話。本人が書いた実話です。タイトルは、ある日、どれくらい家庭菜園のトマトにコストがかかっているか計算したら、一つ64ドル(6500円くらい)もかかっていることがわかった、というところから取られている。

とにかくものすごい凝り性。そもそも料理が大好きで、おいしいモノが食べたいばっかりにはじめた家庭菜園なのだが、いつのまにか常軌を逸した情熱をかけてしまい、ついに体を壊すまでの一連のエピソードが書かれている。この人、プログラマあがりのITマネージャみたいなんですが、文章も上手だし、話のまとめ方もそつなく、読みモノとしても中々よろしいです。

場所は、ニューヨークへの通勤圏ではありつつ、誰からも忘れられたような小さな町。そこで、築90年の廃屋を見つけ、それを直して家族4人で住むことにしたのが全ての騒動の発端。この家の廃屋ぶりはすごくて、窓はない、キッチンはない、暖房(も冷房も)ない、水も来ていないというすごいもの。住み始めたら下水もなかった、というオマケ付き。(下水のパイプは近くの石垣の裏で終わっていたのでした。)多分この家の修繕だけで一冊の本になると思うのだが、その話は殆どありません。

で、敷地も広大。家庭菜園に当てた分だけで長さ75フィートということで、25メートルプールサイズ。殆ど「兼業農家」と化す筆者。

そして、家庭菜園の設計を依頼するためにランドスケープデザイナーの女性と会って、その人の爪が土で汚れているのを見て殆ど性的に興奮する、という変人振りを発揮しつつ、野菜作りにいそしむ。

鹿が野菜を食い荒らすから、と家庭菜園の周りを電流が流れるワイヤで囲んだり。しかも6000ボルト。木のお医者さん(という職業の人)を感電させてもめげない。

ところが、納屋の床下に住み着いたグランドホッグ(リスのようなもの)がワイヤをものともせずに大事な大事なトマトを食い荒らす。

「どうして入れるのか」

と観察していると、グランドホッグが感電して「びくっ」となりながらワイヤを潜り抜けているのを目撃。グランドホッグ君は、

「感電して痛いけど、別に死んだりしない」

ということを理解してしまったのであった。

さらにはこのワイヤ、一定間隔で電流をパルス的に流すようにできている。で、グランドホッグは、やがてこれすら学習するに至る。じっとワイヤの前で待ち構え、タイミングを計って電流の来ていない瞬間に潜り抜けるように。

「敵ながら天晴れ」と思いつつ、しかしトマトを守るため、あれやこれやの方法でわなを仕掛け、ついに捕らえて遠いところに捨てに行くところまで戦いは続くのだった。

別のエピソードにはこんなのも。仕事先で部下が

「システムがおかしくなった。変になったところのコードをどう見ても問題がわからない」

と言ってきたときに

「そういう時は、おかしくなる前に加えた変更を考えてみろ。思いがけないところから問題が派生していることもあるから」

みたいなことを告げたところで、はっと自分の家庭菜園の

「トウモロコシ立ち枯れ問題」

の原因を思いつく。システム同様「一見関係なさそうな別の変更が思いがけない問題を生み出しているのでは」というのがそれ。思いついたらもう、いても立ってもいられず会社を早退して家に帰り、トウモロコシの下を掘り返す。トウモロコシが一本ずつ立ち枯れていくが、その原因がどうしてもわからなかったのだが、

「そういえば、離れたところに最近バラを植えた」

と思い立ち、そこから何かの害虫が土中侵出してきているのでは、と思ったんですね。実際掘ってみたらその通りだった、という。

ソフトウェアエンジニアの人って、こういう懲り方する人多いですね。

ちなみにこの人、奥さんとの結婚に至ったエピソードも中々いい味を出している。プロポーズしようと彼が家で夕食を作り(未来の)奥さんを呼ぶのだが、いろいろ事情があって奥さんは「お別れディナー」だと信じ込み、彼に「話は後にして、まず食べましょう」と提案。彼は「あれはきっと、オレの作った食事を食べる最後の機会を逃したくたかったに違いない」と推測するのであった。(それくらい料理が上手い)。

これ以外にも面白い話が一杯あるので、ガーデニングに興味のある人で凝り性な人の話を聞くのが好きな人は是非どうぞ。

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8 月 14, 2008

ラジオ英会話の教材に写真エッセイを連載しています

すっかりご報告するのを忘れていましたが、NHKの「ラジオ英会話」という月刊教材の巻頭カラーページに私が撮った写真が5月号(確か)から載ってます。その下にごく簡単な英語での説明が2-3行あり、プラス本の最後の方に日本語で1ページ、写真にまつわる話を書いています。仕事の話ではなく、日常生活にまつわることなどなど。多分来年の3月まで続くと思われます。

泥縄ですが、もう少しバラエティある写真が撮れるレンズを買おうか、などと思う今日この頃。

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8 月 13, 2008

インターネット上の悪評の消し方

毎日.jp(と毎日の英字新聞)が英語版ですごい記事を書いてたことが問題に(知らない方はこちらあちらをどうぞ。海部さんのブログもあります)。私は謝られても許したりしないので謝罪とか興味ありませんが、果たしてわたしが今当事者(毎日新聞の人)になってしまったらどうするか考えてみました。

やっぱり「すばらしい内容の英字サイトを構築」かな。ついでにサーチ結果を最適化してくれるSEOをどこかの会社にアウトソースする、と。そして、新しい良い記事、良い評判の方が、過去の悪い評判よりサーチ結果で上に来るようにするわけです。短期的効果はないですが。

まぁ、これは別に私が考え出したわけではなく、結構前から言われてること。

たとえば、悪い評判が立ってしまったらどうしたらよいかを書いたNew York Timesの記事:Dealing With the Damage from Online Critics

“Your reaction often, if you’re a small business, is to get angry and to fire off a letter,” said Barry Werbin, an intellectual property lawyer at Herrick, Feinstein in New York. “Some big companies do it. More often than not, the person who posts the gripe site can’t wait to get that letter and post it.”

「悪い評判を立てられた側は、怒り狂って手紙を書いたりしたくなると思うが、その手紙を公開され、かえって問題を大きくすることが多い。」

それはそうでしょう。ちなみに、「怒りを手紙にして送りつける」というのはアメリカ的ではあります。電話くらいじゃ相手がまともに対応してもらえない、という悲しい事実があるためですが。

ではどうしたらよいか。

記事では、ケースバイケースで対処方法は異なる、と。「無視する」、「弁護士を立てて不当な悪評を書いた本人に警告状を送る(また手紙だ)」、冒頭の「SEO作戦」などが載ってます。

さらに、「新聞よりインターネットにかかれることの方が客商売ではダメージが大きい可能性も。オンライン情報はいつまでも残るから」と。

「オンラインの評判は大切」というのは、ブログを読んでいるような方には自明かもしれませんが、San Jose Mercuryにはこんな話も。20前後のワカモノが、飲酒運転で人身事故を起こした後、浮かれたパーティー写真をSNSのサイトに掲載、それを裁判で使われて量刑が重くなった、と。(しかも複数のケースで)。

he thought to check her MySpace page while preparing for sentencing.

The page featured photos of Buys - taken after the crash but before sentencing - holding a glass of wine as well as joking comments about drinking. Perlin used the photos to argue for a jail sentence instead of probation, and Buys, then 22, got two years in prison.

Darwin Awardものですなぁ。

というわけで、このように大事なオンラインの評判を立て直すことを事業にしている会社も山のようにあります。Googleでonline reputation recoveryなどとサーチすると50万件以上の結果が。

お世話になりたくはありませんが。

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8 月 12, 2008

オーガニックは本当に体にいいのか:The Omnivore's Dilemma続き

割合気をつけてなるべくオーガニックなものを食べているのであるが、心の底では

「・・・実はオーガニックは良くない、ということになる日が来るかも」

と微妙に疑っていたりする私。まぁオーガニックが全部ダメってことはないでしょうが、中には「実は化学薬品を使うより悪い」というモノもありえるんじゃないかなぁ・・と。

先日書いたアメリカの食を追った本、The Omnivore's Dilemmaにはオーガニックについての章もあります。で、大量生産のオーガニックは、環境にやさしくない面もある、とは書いてある。

えー、アメリカは、オーガニック野菜の花盛り。

昔からあるスーパーのチェーン、Whole Foodsはオーガニックが売り。生鮮食料品の半分以上がオーガニック。アメリカのスーパーらしく巨大な売り場面積に、オーガニック野菜が山積み。売っている肉は(多分)全て抗生物質を使わずに育った動物のもの。もちろん、草を食べて育った牛の牛肉もあります。(草を食べて育った牛については先日のエントリーをご参照あれ)。デリにはそうした食材で作った惣菜で一杯。高いけど。

Whole Foodsは、健康的食材を普通のスーパーのスケールで売る全国チェーンとしては先駆けだったが、最近では他に波及中。大量安売りで知られるWal-Martまでがオーガニックを売る昨今。

***
一方、家庭菜園でもなんでも自分で野菜を育てたことがある人だったらわかると思うが、殺虫剤を使わずに野菜を育てるのは至難の業。あっという間にワシワシと食い散らかされて穴だらけに。そこまでいかなくても、はっと気付いたら葉っぱと全く同じ色のアブラムシ(aphids)がびっしり群がり、その重みで茎がしんなりしていたり。

しかし、スーパーで大量売りされているオーガニック野菜には虫の食い跡は殆どありません。

・・・・こんなことがありえるのか?

The Omnivore's Dilemmaによれば、オーガニック野菜を大量生産する際の最大の問題点は殺虫剤より除草剤を使えないこと、とある。

オーガニック大量生産の先進地、カリフォルニアでは、土を頻繁にかつ深くまで掘り返すことで雑草が育たないようにするらしい。育てている野菜が生長してトラクターが入らないようになったら、人海戦術で雑草をトーチで焼き切るそうな。そのせいで、土壌内の生態系が破壊される。また、繰り返される掘り返しで、土中の窒素が空中に放出されるため、これを補うために多量の窒素を人為的に加えないといけない。

普通に除草剤を使う農地よりも、盛大に掘り返されることになる。

ちなみに窒素は、チリの鉱山から取れるものが使われており、これはアメリカの規定上「オーガニック野菜に使ってよいもの」となっている。国際的なルールではダメとのこと。

こういうことをして始めて大量生産が可能。少なくとも現状では。カリフォルニアには、160エーカー、65ヘクタールのブロッコリ畑、なるものもあるらしい。北海道の農家一戸当たり耕地面積が17ヘクタールとのことで、その4倍。

こうして、オーガニック野菜が全国チェーンのスーパーにいきわたるわけです。

(ちなみに、少なくともアメリカでは、農業というのは実は耕地面積を増やしても効率化せず、小規模な農家の農地の方が生産性が高い、という話も載っている。じゃぁどうして企業として運営される大規模農家が多いのかというと、マーケティングと流通コストだそうな。)

以上、「大量生産のオーガニックは環境には決してやさしくない」という話。

じゃ、体にはいいのか?ということに関しては、これも、一概に盲信しないほうがいいのかなぁ、と個人的には思います。天然に存在する植物や動物で猛毒なものって沢山あるじゃないですか。化学薬品を使った殺虫剤だったらほんのちょっとでいいところ、オーガニックと銘打つために大量にそういう天然の毒を使ったりするケースもありえるんじゃないかと。(以上、特に根拠はありません。ちょっと探してみましたが、そういうデータも無し。)

もちろん、「本物」のオーガニック農家では、「環境にやさしく、生態系内だけでなるべく完結する」作物を作っているところもある。しかし、これを実現するためには、多数の野菜をローテーションしながら育てる、牛や鶏もこれまた場所をローテーションしながら育てて、全体としての生態系を維持、さらに、益虫が育つ植物を導入するなど、ものすごい努力が必要。

+++

てなことを考えつつ、さらに精製された砂糖は良くないとか、揚げ物にはオリーブオイルよりコーンオイルの方がいいとか、そういった情報を頭の中で半分疑いつつ半分信じつつ、食材の産地やら飼育方法やらの記述を読みながら買い物をすると、ものすごい疲れる。

The Omnivore's Dilemmaによれば、コアラというのは、頭蓋骨のサイズに比べて脳みそが少ないそうな。原因の仮説の一つが、

「従来複数のものを食べたコアラは、『何を食べるべきか』と頭を使ったために脳が発達した。しかしその後、ユーカリの葉しか食べないようになり、食に頭をひねる必要がなくなったため、脳が退化した」

ということだそうです。ありえる。

しかし、私一代で脳が進化するはずもないので、個人的には無駄な悩みな気もしますが。

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