« 2006年9 月 | Main | 2006年11 月 »

10 月 31, 2006

ヒューストン動物保護協会

最近DVRを購入したので、やたらとテレビを見るようになった。その前はニュースくらいしか見なかったのだが。DVRは文明の利器ですねぇ。

さて、で、見ている番組の一つがAnimal Cops。前もちょっと言いましたが、全米各地の動物保護活動を追うドキュメンタリー。ニューヨーク、デトロイト、マイアミ、サンフランシスコなどがあるが、私が最も愛しているのがヒューストンバージョン。なんといっても、保護される動物がでかい。馬、牛、豚、ダチョウとか。

どの街にもanimal hoarderと呼ばれる、動物を劣悪な環境でやたらにたくさん飼う人がいる。

hoard=to accumulate money, food, or the like, in a hidden or carefully guarded place

溜め込む、みたいな意味ですな。動物を溜め込むからanimal hoarder。

日本でも時々猫のhoarderがニュースになりますが。ニューヨークなんかでは、hoardする対象はやっぱり猫。しかもせいぜい20匹とかそんなもんです。(それでも、アパートで飼っているので問題になる)。

さて、ヒューストンはテキサスにあり、広大な牧場が周囲にある。ヒューストンでは、人間も含め全てがビッグスケールなのだが、animal hoarderもグランデです。犬50匹、猫30匹、馬10頭、牛8頭、豚20頭、全部あわせて100匹以上の動物をhoarding、なんていう超級が登場することも。

hoarderはたいてい衛生観念がなく、「家の床に動物の糞が20センチ堆積」なんて環境になっていたりして、動物たちは皆病気。そういう動物たちを、裁判所や警察も巻き込んだ上で、全回収、病気は治し、しつけをし直して、もらってくれる人たちを探す、というのがヒューストンの動物保護協会の仕事。Houston Society for the Prevention of Cruelty to Animals、略してHSPCA。SPCAは全米に支部があり、その名のとおり動物虐待を防ぐことが目的。寄付で成り立つNPOなり。

HSPCAには、馬や牛をたくさん入れられる厩舎みたいな設備と、24時間営業の動物病院、これまた24時間営業の動物救急車がある。さらに、巨大な家畜運搬用トレーラーもあり、前述の
「牛、馬含め100頭救助」
てな時には、数台のトレーラーでガシガシと向かう。こういう大掛かりな捕り物のときは、常勤の職員以外に、シマシマの服を着た囚人も募って数十人がかりで夜明け前から作業開始。おとなしい動物は、人間に引かれて静々とトレーラーに乗るが、暴れるのもたくさんいる。そういう時は、大勢でバリケードをつくり、

「ハイヤッ、ハイヤッ」

と掛け声をかけながら、だんだん追い込んでいくのでした。

「ダチョウ保護」ってのも、ものすごい大変そうだった。ダチョウに蹴られると命の危険があるそうで、みんなで扉サイズの木材を盾に格闘。HSPCAの施設に連れ帰った後も、獣医に見せるために麻酔をうち、随分弱ったところで、大の男が3人がかりで押さえつける、という始末。ダチョウはその後、「ダチョウ保護園」に引き取られていきました。何でもあるもんじゃのォ。

HSPCAでは、またあるときは、馬のセリにオトリとして参加したりする。

更年期障害のホルモン療法に使われるプレマリンというホルモン薬があるのだが、これが実は馬の尿から取られている。妊娠した(pregnant)雌馬の(mare)尿(urine)から取られているからpremarineというのであった。ひょえー。で、プレマリン製造に使われた雌馬が使い物にならなくなるるとセリに出される。プレマリン用の馬は狭い場所に閉じ込められて育ち、馬として価値が低いので非常に安く買い叩かれた後、すぐ屠殺され肉として売られてしまうそうな。そこで、プレマリン用雌馬の市場価格を人為的に吊り上げるべく、セリに参加、高値で落とすのだ。肉として売るには高すぎる、という市場価格にするんです。(ちなみに、この肉、その後日本にも食用に輸出されているという記載が上記リンク先にありますが、ホンマか。)

オトリ担当者は、顔が知られてはまずいので、ぼかし入り。セリ参加者は、ほぼ1人の例外もなく、みーんなカウボーイハットをかぶっている。テキサスの人は本当に本当にカウボーイハットをかぶってるんですな。

で、競り落とした馬は、ペットとして欲しい人たちに上げるわけです。ヒューストンでは、馬の虐待事例が多く、hoarderではなくとも、数頭の馬をロクにエサもあげずに飼っている人も多い。HSPCAの係員いわく

「テキサスでは誰でも馬を飼っているから、ついつい自分も、とみんな馬を欲しがる。馬の面倒を見る経済的余裕がないなら飼うな、と口を酸っぱくして言ってるんだけどネェ・・・」

そうか、そうなのか。テキサスでは誰でも馬を飼うものだったのか。馬が犬くらいの感じなんですな。ビッグだ。

馬は従順そうだし、乗って走るのは気持ちよさそうだから、まぁペットとして飼いたい気持ちはわかる。しかし、牛とか豚とかってペットになるんかい?特に豚。ものすごく気性が荒そうで、大きい豚だと力も非常に強い。鍵のかかった厩舎(っていうか、動物小屋)の頑丈な扉を力技で押し破ったりして、HSPCAでも、豚の保護はかなり苦労している。が、しかし「pigs as pets」でグーグル検索したら2万5千件もヒットがあり、Pigs as Pets Association(略称PAPA)なんてものまであった。世界は私の知らないことで満ちている。

(追記:その後Animal Copsでは、さらに、HSPCAによる「クマ5頭、トラ2頭保護」とか、「動物600匹保護」、というケースが登場。「クマ、トラ」は「exotic animal問題の氷山の一角」とのことで、この手の動物をペットとして飼ってる人がたくさんいるのだそうだ。人外魔境ヒューストン。)

さて、Animal Copsであるが、これを見ていて、

「ふむ、これは、知らずにアメリカで暮らすと、後ろに手が回る日本人が出そうだ」

ということが。よく、アメリカで子供を車の中に放置して逮捕される日本人の親が出たりするが、そういう「虐待とみなされる基準の違い」が動物にもあるのである。

一番大事なのが

「病気のペットは、動物病院に連れて行く義務がある」

というもの。ちゃんとエサと水をあげていたとしても、皮膚病やら内臓の病気やらで、見るからに衰えてきたペットを動物病院に連れて行かないと虐待とみなされるんですな。(獣医に見せる金がなかったら、Humane SocietyやSCPAなどの動物保護団体に引き渡せばOK。)

「やせ衰えた犬がいる」という近所の人からの通報を受け、動物保護団体が救助、獣医が見たら喉に骨が引っかかっていて、そのせいでモノが食べられなくなっていたのであった。飼い主は

「年寄りの犬だから、もう老衰で死ぬのかと思った」

と抗弁するも、動物虐待で有罪判決となったそう。うーむ、しかし、飼っている犬や猫が病気になっても獣医に連れて行かない、なんて人たくさん、、とは言わないが時々いませんか?しかし、同じことをアメリカですると逮捕される危険があります。気をつけてください。

というわけで、飼う人間も大変だが、飼われる動物の方も大変。SPCAでは、保護した動物が、一般の人にもらわれていっても危険がないか、「気性テスト」をする。で、ちょっとでも凶暴性があるとみなされると、安楽死させられてしまう。

特に犬。いきなり犬の目の前で7色の傘をバッと開いたり、金属のボールをがらんがらんと転がして、どれくらい安定した反応を見せるか調べるなど、入念に性格を審査。特に大事なテストが、「食べ物への執着度」。エサを与え、犬が食べ始めたところで、エサが入った入れ物の中に手を入れて犬が食べるのをさえぎり、入れ物をずずずっと引きずって犬から奪う。手は、棒の先についた「模型」。ここで犬が唸ったらイエローカード。さらに、手の模型を噛んだら、その犬はまず安楽死・・・。理屈としては、

「我々の組織からもらわれていった犬が、その家の子供を噛んで怪我をさせたりしたら困る」

と。確かに時々犬にかみ殺される人の話がニュースになるし、そもそも保護される犬の数もものすごく多いわけで、仕方ないのだろうが。(HSPCAだけでも、昨年1年間で6万匹を保護、8500件の虐待事例を扱ったそうです。この数は、犬だけじゃなく動物全部で、ですが。)

  • 動物虐待で逮捕する法的根拠

さて、動物虐待阻止の法律は、そもそもSPCAの働きで制定されたんだそうです。いわく

On April 10, 1866, the American Society for the Prevention of Cruelty to Animals was founded by an affluent New Yorker named Henry Bergh in New York City. Ten days later, as the head of North America's first humane organization, Bergh effectively lobbied the New York State Legislature to pass the nation's first anti-cruelty statute. This law allowed the ASPCA to investigate complaints of animal cruelty and make arrests.

1866年にニューヨークのお金持ちがSPCAを設立、ニューヨーク州に働きかけ、SPCA設立の10日後には動物虐待を禁じる法律を制定させた、と。

実際、どうやって逮捕するかは、county(郡)によって異なり、SPCA自体が警察と同等の権限を持って逮捕まで出来るニューヨークのようなところもあれば、警察と連携する都市もあるそうな。

ま、動物保護の前に人間保護じゃないか、という説もあるが、しかし例えばそのどちらかでボランティアするとしたら、やっぱり動物保護団体の方がいいなぁ、と思ってしまう私は人非人でしょうか。

  • ヒューストン以外のSPCA

さて、番組で登場する米国各地のSPCAで、係員がぬきんでて美形なのがニューヨークでございます。スリムでおしゃれで、お化粧もばっちり、みたいな女性がたくさん。さすがニューヨーク。大都市は違います。

あと、マイアミは、ワニの保護が目玉。フロリダには1~2百万頭のワニがいるそうで、巨大なワニがオフィスビルの隣の沼地を徘徊してたりする。中型犬くらい簡単に食べてしまうというツワモノ。危険なので、捕獲してワニ保護地に放つのでした。特に注目はワニ捕まえのTodd。いつも、デニムシャツにジーンズ、みたいな格好で登場、まずは水面からワニを捕獲しようとするが、ダメだと、

「ワニの首にロープかけてくるから」

とか言って、いきなりそのままの服装で、ゴーグルをつけてドボンと水の中に飛び込んでしまうのであります。「素手で」ロープかけてくるんですなぁ、これが。同じことを何度もしてたので、彼にとっては日常なんでありましょう。Toddさんの活躍が載っているBoston Globeの記事によれば、Toddさんのところに来る「ワニ捕獲依頼」は一日15件だそう。「オーストラリアのクロコダイル・ハンター氏はついにエイに刺されて死んだが、キミもいつか死ぬぞTodd」、と思いながら見ています。はい。

こちらのMiami Animal Police登場人物ページにToddさん載ってます。

Permalink | Comments (8) | TrackBack (0)

10 月 28, 2006

手術と観光の合体:メディカルバケーション

アメリカの医療は高い。集中治療室なんか、いるだけで一日数百万円ざんす。しかもアメリカ人の二割弱が無保険。保険があっても、「1割は個人負担ね」なんて言われる。日本の人は「日本なんて3割負担だ」といいますが、元の医療費がアメリカ=日本×10倍、という感じなので、1割負担でも日本の何倍もかかりますです。

さて、というわけで、最近台頭しつつあるのが「メディカルバケーション」。安い海外で手術をして、ついでにリッチなホテルに泊まって観光もしちゃおう、というもの。「心臓のバイパス手術」なんていう高度なものや、整形手術や歯の治療やら、いろいろ。行き先としてはインドが有名だが、タイ、コスタリカ、カナダなどいろいろ。医療のアウトソースです。

10月16日のSan Jose Mercuryの記事、”Going abroad for health care”に価格比較があったので、そこから一部拾うと

  • 心臓バイパス

アメリカ    $75,536
インド    $6,000-$7,495

  • 人工心臓弁

アメリカ    $115,221
インド    $6,000-$11,895

  • レーザー視力矯正手術

アメリカ    $4,800
ドイツ    $950
コスタリカ    $1,800

唯一、アメリカとそれ以外の国があまり変わらないのが脂肪吸引。アメリカで$2,500-$4,500なのが、インドでも$1,200-$2,000。ま、アメリカは肥満王国ゆえ、脂肪吸引の市場が大きく、安くやっても元が取れるってことでしょうか。あと、保険が効かないケースが殆どなので、需要と供給がつりあう市場原理がちゃんと働いてるってことでしょう。

また、普通の医療保険すら入っていない人が4660万人もいるアメリカ。しかも、普通の医療保険は「歯の治療」はカバーしないので、歯の保険は別途加入の要あり。で、歯の保険がない人の数は実に1億2000万人なり。国民の5人に2人。歯に関しては、アメリカも日本もそれほど元の値段に大差ないが、「インプラント手術」なんてのは、超高いわけで、じゃ海外で、ということに。記事にはアメリカで5万6千ドルかかるインプラント手術を、ハンガリーで2万ドルで済ませた人も登場。(本人と奥さんの航空費、ホテル代込み。)

歯ぐらいなら海外でもいいかな、という気もするが、心臓手術をインドでして大丈夫なのか。

大丈夫みたいです。というのも、アメリカで教育を受けた医師も多く、設備も、メディカルバケーション向けに力を入れて整備しているケースが多い模様。また、米国の病院の認証を行っているJoint Commission on International Accreditation of Healthcare Organizationsが海外の病院の審査をして、お墨付きを出す、ということもしている。

メディカルバケーション専門斡旋会社もいくつもある。MedRetreatと か。アメリカの大手健康保険会社、Blue Cross Blue Shiledでも、インドのWockhardt病院を提携病院(in-network)とした。(アメリカの健康保険は、会社ごとに「in- network」の病院や医師が決まっていて、in-networkの医療機関にかかると保険のカバレッジがよい。)

ということで、去年一年間で海外に手術や歯の治療をしに行ったアメリカ人の数、なーんと50万人なり。(by National Coalition on Health Care)

New York TimesのBasking on the Beach, or Maybe on the Oeprating Table"には、海外に手術しに行く人たちの話をまとめた本の著者へのインタビューも載っていたが、この本のタイトルがよい。"Patients Without Borders"。Doctors Without Borders、「国境なき医師団」をもじって「国境なき患者団」。わたし、ツボにはまって一人で受けてしまいました。いや、笑い事では無いのですが。この本、2007年の2月発行予定だそうです。

ということで、アウトソースされるのは、プログラミングだけじゃなく、手術もなんですね。

エンディングは、アメリカはサニーベールで働くインド人ソフトウェアエンジニアの歌。いわく、

♪C#、Java、Perl、なんでもOKだから、アウトソースするならオレにアウトソースしてくれよ♪

歌はコチラで聞けます。(音楽が流れますのでご注意)

Permalink | Comments (21) | TrackBack (5)

10 月 24, 2006

アメリカのテレビ番組のシーズン:ミーアキャットとHeroes

アメリカのテレビドラマ「24」は日本でも人気なようですが、シーズン1から始まって、シーズン2、シーズン3、と続くのはなぜ?と思った人はいませんか。そう、アメリカのテレビ番組はシーズンものなのです。九月の半ばから10月はじめにかけてがシーズンの始まりで、5月ごろ終わる。昔は同じ週にびしっと全部始まり、びしっと全部終わったそうですが、最近は1ヶ月くらいにまたがってじわじわとシーズン開始。

6月から9月までは「シーズンオフ」。その間は、再放送がメインというのんびりモード。(シーズンオフ向けに低予算で試験的に作られる番組もありますが。)ま、大体学校のお休みシーズンとも重なっているので、テレビ業界の人もお休みする・・・のか?(子供の夏休みが終わってから、やおら本気で番組制作を開始するのでシーズン始まりが9月末以降なのでは・・・という疑い 。)今シーズン私が見てるのは「Meerkat Manor」「Heroes」でございます。

Meerkat ManorはケーブルのAnimal Planetチャネルのもの。カラハリ砂漠に住むミーアキャットの生活を、ドラマ仕立てで追うドキュメンタリー。ケンブリッジ大学が過去10年間研究してきた一家の物語。全員名前がついていて、
「ああ、シェークスピア、死んでしまったのか?」
とか
「群れから追放されたかわいそうなトスカ」
とか感情移入して見てしまいます。10年分の知識の蓄積もあって面白いですぜ。何が面白いかは長くなるのでまた機会があったら。。。(最近私と会った人は、私がやたらとーアキャットの話をするので辟易している。)


HeroesはSFチャンネル。不死身、未来予知、読心、空を飛べる、など様々なスーパーパワーを持った人たちが自分の力に目覚め、だんだんとお互いを発見し、近未来に迫り来るカタストロフィーを阻止するべく戦う、というもの。後述のGalactica同様、ちゃちなおもちゃっぽいSFではなく、真剣なつくり。6歳で日本からアメリカにわたったという日本人も出ています。彼は「タイムトラベラー」という裏技的パワーを持っているが、今のところお茶目で能天気な日本からやってきたエンジニア、という設定。ところが、今週の回では、未来からタイムトリップをして重要なメッセージを伝えにやってくる、というクリティカルな役割で登場。この俳優の人、もともとはDreamworksでエンジニアをしてたそう。彼の演じるタイムトラベラー氏のブログもあります。(俳優さんのブログではないです。)

Heroes、かなり面白いです。SFファンだったらお勧め。29日には過去6時間分まとめて放送するので、キャッチアップ可能。

えー、この二つ以外では、同じくSFチャンネルのBattlestar Galacticaのシーズン3ももちろん見ていますが、今のところNew Caprica地上での抑圧された暮らしがメインでちょっとイマイチ・・・。イラク戦争を髣髴とさせるもので、暗い、暗い。しかし、前回ついに全面的な地上戦の末、宇宙にいる母艦に戻ってきたので今後に期待。(Galacticaについては、以前書いた、24をしのぐ傑作「Battlestar Galactica」と、その続きをご覧くださいませ。)

しかし、Animal Planetは51番、SFチャンネルは68番と、やたら番号が上。FOXとかCBSとか、その手のメジャーなテレビ局は一ケタ台で、番号が上になるほどオタク度が高まっていくのでした。

Permalink | Comments (5) | TrackBack (0)

10 月 19, 2006

ナスダックとジャスダックとイギリス新興市場比較

新日本監査法人のIPOセンサー秋号に掲載いただいたコラム。ジャスダックとナスダックとロンドン新興市場の比較です。ちょっと前に、イギリスAIMは上場のオフブロードウェーですというエントリーを書きましたが、そこから発展させてみました。ジャスダックとナスダックが相互乗り入れするみたいですが、その後はどうなるんでしょうか。

***

2006年6月に、シリコンバレーに新しくできたフォーシーズンズホテルで、ロンドン新興市場(AIM)のセミナーがあった。Kirkpatrick & Lockhartという米国の法律事務所が開催したもので、ロンドン新興市場から大勢の関係者がやってきてあれこれとプレゼンをした。要は「上場勧誘セミナー」。SOX法などでアメリカでの上場が難しくなる中、「AIMだったら簡単に上場できますよ」という営業のために、はるばる海の向こうのイギリスからやってきたのである。

上場企業減少は、アメリカの証券市場にとっても頭の痛い問題。2005年のIPO数は、ニューヨーク証券取引所、ナスダック、アメリカン証券取引所の3大取引所合計で221社。一方ヨーロッパの証券取引所のIPO合計数は603社と3倍近く、AIMだけでも335社と米国の総数を凌駕している。「アメリカの国際金融センターとしての地位を揺るがす由々しき問題」と、ニューヨーク市のEconomic Development Corporationがコンサルティング会社のマッキンゼーを起用、米国証券取引所の国際競争力調査を行うと9月に発表したくらいだ。

さて、ナスダック、AIM、ジャスダックの三つの市場を比較するとこんな風になる。

  • Nasdaq

上場企業総数:3200社
平均企業価値:1400億円 ($12億)
2005年IPO数:126社
2005年IPO調達金額:総計1兆4千億円 ($123億)
2005年平均公募売出額:110億円 ($9800万)

  • AIM

上場企業総数:1500社
平均企業価値:100億円 (£4600万)
2005年IPO数:335社
2005年IPO調達金額総計:1兆2千億円 (£56億)
2005年平均公募売出額:37億円 (£1670万)

  • ジャスダック

上場企業総数:970社
平均企業価値:140億円
2005年IPO数:65社
2005年IPO調達金額総計:1980億円
2005年平均公募売出額:30億円

(出典:Investec, Nasdaq, Jasdaq, 新日本監査法人)

日本の新興市場が「ナスダックに追いつけ追い越せ」というのは威勢はいいが、はっきり言って無理。現実感がまったく伴わない。しかし「AIMくらいだったら行けそう」という感じはしませんか?

AIMの平均企業価値は総額2000億円を超す一部の企業が押し上げており、実際に一番多いのは20億円から50億円程度とごくごく小粒。平均公募売り出し額も日本と殆ど変わらない。AIMでは、こうした小粒振りをメリットとし、「小粒会社が上場しても大海の一滴にならない。企業価値100億円程度の会社がナスダックに上場しても見向きもされない。」とアメリカのベンチャーにAIMでの上場を勧める。さらに上場維持費用も、ナスダックでは、SOX法準拠費用だけで2億円超、それ以外のコストも足すと年間5億円近い。一方AIMでは1億円程度。この辺も日本は対抗できそう。

AIMが面白いのは「上場条件は個別企業毎に応相談」という点。企業ごとに証券取引所側が認定するNomad (nominated advisor)と呼ばれるアドバイザーがつき、上場審査を行い、また企業に対してAIM公開企業としてどんな責任が生じるかを説明。Nomadは上場後も担当企業をサポート、コンプライアンスのチェックや、株価維持・機関投資家向けIRのためのアドバイスを行う。Nomadがいることで、小さな企業でもきめ細かく対応でき、上場後も埋もれていかないとのこと。Nomadを失った会社は上場取り消しとなることでもNomadの重要性は明らか。

一方、AIMは「小粒会社がたくさん」という市場でありながら、取引の95%は機関投資家。ナスダックですら、リテールの一般投資家が25%もおり、ジャスダックにいたっては株数ベースで65%が個人所有。ということでAIMの「プロ相場」ぶりが目立つ。また、アメリカの企業が日本での上場を考える際の大きな懸念の一つが「取引額が小さく、流動性が低い」という点で、これに関しては、AIMの一日取引額は600億円弱と、ナスダックの4000億円超に比べると少ない。しかし、「実は機関投資家同士の直接決済が多いので、実際に取引される額はもっとずっと多い」とはAIM担当者の弁。Nomad制度に加え、この機関投資家の多さは、金融センターとしてのロンドンの伝統が感じられるところ。いずれも、昔からの伝統で金融を行ってきた街ならではの知恵の蓄積、層の厚さが感じられる。

とはいうものの、上場する企業の規模では、日本も大差ない。ロンドンがミニ・ナスダックを狙うなら、ジャスダックは、少なくとも「アジアのナスダック」くらいは狙えるはず。中国や韓国など、周辺国からの上場を増やしアジアの金融センター化することも日本の圧倒的経済力から見れば十分可能。・・・とはいうものの、やはり最大の難点は言語か。日本語を国際言語化するのはやっぱりちょっと難しそうである。

Permalink | Comments (5) | TrackBack (0)

10 月 18, 2006

いつもながらアメリカのいい加減なハナシ2

おほほ、今日はユナイテッドのマイレッジ会員予約電話システムがいい加減、というハナシ。
電話したところ、機械音声の問いかけ。
「次の4つの選択肢から、一つ選んで、その言葉を言ってください。reservation, account information, miles needed, program information (予約、アカウント情報、必要マイル数、プログラム情報)」
どれかの言葉を言うと、音声自動認識で、次の、これまた自動音声認識のステップに進むわけです。

しかし、どれも違う、、、と思った私は、しばし悩んだ末ヤケクソ気味に
「upgrade using miles(マイルでアップグレード)」
と、選択肢にない発言をしてみた。すると
「Did you say you would like to talk to an agent?(人間の担当者と話します?)」
という機械音声からの福音。「Yes」と言ったら人間の担当者が出た。

・・・・同じ番号に次に電話したときは、4つの選択肢を聞かれたところで
「Agent(担当者)」
と言ったら、
「Ok, I'll connect you to an available agent(担当者におつなぎします。)」
という自動音声が流れて、すぐ人間につながった。

コールセンターの人間に電話を処理させるとコストが高い。だから、会社側は何とか全て機械的に処理したいと思っている。よって、「人 間のエージェントと話す」という選択肢が表に出てこないようになっているのである。しかし、時には機械処理しきれない問題が生じるわけで、そういう時だけしぶしぶ担当者を出す。そういう意味では、「いい加減」なのではなく、緻密に構築されたシステムなんですが。(IkeaのAnnaさんボットもご参照あれ。)

で、電話をかける側としては、いかに素早くこの「しぶしぶループ」に入れるかが、戦いのポイント。

以前は、どれも電話機の番号を押して選ぶ形式だった(XXXを希望する場合は「1」を押せ、みたいな)。そのころはとにかく「0」を押せば人間の担当者につながることが多かったが、最近は、選択肢に無い「0」を強引に押すと
「その選択肢はない」
と機械音声に諭されることが増えた(TT)。。なので、今回、選択肢にない「Agent」が認識されたのには実は驚きました。はぁ。

アメリカは国土が広いので、「窓口に行って処理する」ということが日本に比べ極端に少ない。何でも電話。最近では、コスト削減のため、全て機械処理、というのが増えてきており、なかなか人間と話せない。(顧客からの電話を一回処理するコストは、人間を出すと数十ドル、音声認識だったら数十セント、くらいの差があるらしい)

この「人間につながらない」というのがものすごいフラストレーションなんです。テレビの宣伝でも
「うちの会社のカスタマーサポートに電話すると、すぐ人間が出ます」
と偉そうに言っている会社もあるが、テレビCMのネタになるほどの大きなセールスポイントということ。

CapitalOneというクレジットカード会社は、非常に緻密な顧客プロファイリングで知られている。顧客からの電話が掛かってきた瞬間に、発信番号を照合して顧客を割り出し、会社から見た顧客の重要度を判断、さらに通話内容も予測(こういうタイプの顧客は、こういう内容の電話をかけてくる可能性が高い、とか)、最初から最適な部門にいきなりつなげる、という処理をしているらしい。(つまり呼び鈴が鳴ってる間にここまでの作業が終わる。)で、大事な顧客と判断されると人間が出て、懇切丁寧な対応。クレジットスコアが低い「重要じゃない顧客」は、安上がりの自動音声システムにしかつながらない。(「クレジットスコア」は借金履歴に基づく「借金返済能力点数」。アメリカで生きていくために必要な基礎の基礎。クレジット返済怖い参照)

アメリカに来たばかりでクレジットスコアが地を這っていたころ、CapitalOneに電話して、カードの解約をしたことがあった。自動音声が快く解約を承ってくれた。しかし、アメリカで長いことクレジットスコアを築き上げているダンナが、同じころCapitalOneに電話して同じくカードを解約しようとしたら、人間の担当者に誠心誠意止められていた。さびしー。

そういえば、大学生のころ、就職活動で某電通に連絡したことがある。大学の公衆電話からまずクラスメート(♂)が電話。
「東大のXYと申しますが、資料請求をしたいのですが。」
すぐさま面接の時間が設定され会社に呼ばれた。同じ公衆電話から、間髪をおかず私が電話
「東大の渡辺と申しますが、資料請求をしたいのですが。」
「まだ資料はできておりません。1ヵ月後くらいに再度お電話してみてください。」

ほほほほ。

ちなみに、私が就職した当時、大手商社のうち三井物産だけは女子の総合職採用をしていなかった。他の商社に総合職で入社した女子連中で話しても、誰一人物産の面接に呼ばれた人はいなかった。しかし、一人だけ、
「あ、わたし、行きましたよ、物産の面接」
という人がいた。みんな驚いて
「えー、どうやって?」
と聞くと、
「いや、電話して『一橋大学のTですが』と言ったら、『では、この日に来てください』と言われて、その日に出向いたんですけど」
そこでハタと気づいたのだが、彼女は「男声」なのだった。女子を面接しない、と公言するのは違法なので、会社側は「声」で相手の性別を判断してたのだ。(当たり前か)

どうしても強引に採用面接に行きたかったら、友達の男に代わりに電話してもらえばよかったんだ。。。ま、別にいまさらどうでもよいことであるが、もしかしたら、この「性別謀り」、将来何か役に立つことがあるかもしれない。裏技として心にしまって置きたいと思います。

Permalink | Comments (11) | TrackBack (0)

10 月 17, 2006

いつもながらアメリカのいい加減なハナシ

いや、いつものことなんですが、ちょっとびっくりしたので。雑誌のページで、グラフの中身が無い。(右上)

Invivo

「ややっ」と思ったら左下の本文の上に、グラフの中身だけ重なって印刷されている。うーむ。年間11冊で購読料1500ドルなり~、という専門誌でこれです。スーパーのパックに卵が入ってないくらいでびっくりしてはいられないのだ。

Permalink | Comments (1) | TrackBack (1)

10 月 16, 2006

消えていったベンチャー:SNSとかペットクローンとか

シリコンバレーは「新しいビジネスが台頭」という話題で一杯だが、ビジネスがダメになった話はめったに出ない。ベンチャーなんて、成功するのは100のうち1つあるかないか。死亡ベンチャーやら、死なないまでも売上20億円くらいを脱することができない「living dead」ベンチャーの話を追いかけていたらキリがない。それに、アメリカ人は成功話が好きだから、「ダメになった話」「暗い話」はニュースネタとして「売れない」路線なのでありましょう。(・・・なので、インターネット検索は結構危険。会社が上り調子で話題になったときの記事ばかりたくさん出てくるので、日付をよーく見ないといけません。)

ということで、今日はそのめったに出てこない景気の悪い話で、「ダメになったベンチャー」の、ペットクローンビジネスのGenetic Savings and Cloneと、SNSのFriendsterについて。

Genetic Savings and Cloneペットクローンビジネスでも書いたが、5万ドルでペットをクローンするというビジネスモデル。サンフランシスコからゴールデンゲートブリッジを渡った先のサウサリートのベンチャー。その後3万2千ドルに値下げするも、ビジネスとしてやっていけるだけの顧客が付かずクローズ。2000年に開業してから5匹の猫をクローン、そのうち代金を払ったのは2人だけ、という顛末が10月12日のSan Jose Mercuryに載っていた。現在、問い合わせしてきた人には、クローンではなく、遺伝子保存をしてくれるよその会社を紹介しているそう。

私の元のエントリーより、当時の我が家の会話:

ダンナに

「うちの猫をクローンするとして、いくらまでだったら出す?」

ときいたところ「35ドル」と即答。それは、慈善団体から猫をもらってくるときの値段です。

ダンナの金銭感覚が正しかったかも。Genetic Savings and Clone社では犬のクローンができなかったそうだが、確かに猫に数万ドルはないかも。猫ってのはどんなにかわいくても他人、一匹一匹との出会いは一期一会、という感じがする。・・・ただ、犬だったら5万ドルもありかな、という気も。犬は飼ったことがないのでよくわからないが、「この犬でなくっちゃ」という、親子のような深い絆で結ばれてるように見受けられるので。飼い主にとって「数万ドル」がどれくらいの価値かにもよりますが。

また、世間的には、「世には、もらい手がいなくて安楽死させられる捨て犬・捨て猫もいっぱいいるわけで、クローンするくらいだったら、そういう犬・猫をもらってくる方が世のため」という批判もあった。

***

一方FriendsterはSNSの老舗。SNSという言葉がまだなかったような時代に「出会い系」の延長線上で出てきた ネットワーキングサイト。Google・Friendster・星新一の世界で、 「Googleが買収するという噂が出てる」と2003年に書いたが、噂はやっぱり本当だった模様で、当時3千万ドルでの買収オファーがGoogleから来ていたが、Kleiner Perkinsなどの超有力VCから、

「たった3千万ドルで買収されるのなんてやめて、うちの投資を受けなよ」

と甘い言葉をささやかれ自主独立路線へ。そして今やSNSサイト中14位に転落、昨年秋には何とか会社を売ろうと投資銀行を雇うが、2千万ドルでも買い手が付かず、「25歳から40歳向けSNS」というスタイルで再挑戦することとなった。このあたりの経緯は、New York TimesのWallflower at the Web Partyが詳しい。

SNSでは、今アメリカで最大のものはMySpace。去年の9月に2160万人だった登録者数は、今年の9月には5590万人に増加、二位のFacebookの1330万人をはるかに凌駕するサイズ。

Friendsterの登録者は減少傾向で、去年の9月が120万人、今年の9月には100万人。SNSの一番手としてスタートした当初は、2003年3月から同年秋までの半年で、3百万人が登録するという破竹の勢い。言うなれば今のYouTubeみたいなノリだった。

もし、2003年後半にGoogleに3千万ドルで売却していれば、(そして、それがGoogleの株だったら)、今頃ファンダー氏はビリオネアになれたはずだったのに・・・と記事にはある。確かに上場前のGoogleだったら、企業価値3000億円くらい、ってのはありえる。3千万ドル(30億円)はその1%。今の企業価値が13-14兆円くらいだから、1%弱で1000億円。大体いい線かな。・・・あ、でもファウンダー君の持分は、多めに見積もって3割とすれば300億円。うーむ、でも、Googleの企業価値が当時は1000億円くらいだったかもしれなくて、だったら、その3倍強で1000億円。ま、いずれにせよ「大金」。

Kleiner Perkinsといえば、シリコンバレーベンチャーキャピタルの老舗中の老舗。「Midas王のように、触るもの触るものを黄金に変える、、、」と思われがちだが、Friendsterのような失敗もたくさんある。セグウェーもここですな。「優良ベンチャーキャピタル」というのは、「成功の確率が高いベンチャーキャピタル」であって、「必ず成功する」わけじゃないんですよね。

さて、今Friendsterの二の舞になるのではないかとささやかれているのがFacebook。Yahooから10億ドルでの買収オファーが出ているがFacebook側が乗り気でないらしい。ハーバードを1年半で中退したハタチそこそこのCEOの会社なのだが、頭がくらくらするくらい強気な人という噂。名刺にまで「他人の言うことなんか聞かないぜ」だか、「黙って俺の言うことを聞け」だか、その手のキャッチフレーズが刷られている、、と聞いたことがある。ま、がんばってもらおうじゃないか。まだ若いから、Facebookではずしても先があるし。

私のビジネススクールのクラスメートで、eviteという会社を起業した人がいた。これまた当時は飛ぶ鳥を落とす勢いで、Yahooから4億ドルだか5億ドルだかで買収のオファーを受けたが、「安すぎる」と一蹴したところ、直後にインターネットバブル崩壊、InterActive CorpのCitySearchにその何十分の一かで売却。Yahooからのオファーを断るに当たっては、これまた有力ベンチャーキャピタルだったeviteの投資家たちからの強い要望もあったとのこと。

1999年に起業して2002年にやめるまで、彼がeviteに費やしたのはたった3年しかない。また、ファウンダー氏はその後eBayに就職、今では結構な役職に付いているようなので、それはそれで悪くないと思うが、彼もonce-in-a-lifetimeだった数百億円を手にする機会を逃しちゃったのかも。弁舌さわやか、性格良好、見た目に涼やかな金髪碧眼、という感じの、見るからにできそうな人なんですけどね。

(ちなみに、evite、大勢への招待状処理サービス。自動的に確認のメールを出したり、返事しない人に追加メールを出したりしてくれ、誰が来るといったか一覧も見られてとっても便利。招待のinviteにeがついて、イーバイト、と読む。)

まぁでも、難しいですよね。Googleのファウンダー2人も、最初はYahooにサーチ技術を160万ドルで売ろうとして、買ってもらえなかったから自分たちで事業化することにした、という経緯もあるらしい。何が吉と出て何が凶と出るか。人生万事塞翁が馬、といいますが、ほんと、よくわからん。ビジネスの進展スピードが速いシリコンバレーでは、特にこの「わからん」ということがよくわかるのでありました。

Permalink | Comments (5) | TrackBack (0)

10 月 13, 2006

血管の詰まる音が聞こえるバファローウィング

Buffalo Wingsという食べ物がある。1964年にニューヨークのレストランで開発されたものらしい。で、それは、もう、レシピを聞いただけで冠動脈が詰まっていく音が聞こえるようなのでありました。

  • 手羽先1キロを高温の油(190-200度くらい)で素揚げ
  • バター3分の一カップ、タバスコ2分の1カップを鍋に入れ、火にかけて溶かす (アメリカのカップは240ccと、日本より2割多いのでヨロシク)
  • 揚げた手羽先をバター・タバスコ混合液につける
  • ブルーチーズドレッシングをかけて召し上がれ

タバコによる医療費増の話を書いたが、いくら禁煙しても、こんな食事をしてちゃーいけまへん。が、しかし、アメリカ人というのは、伝統的にこの手のモノをうまいと思って食べている国民である。「エデンの東」でも、シリコンバレーの南のほうにあるサリーナスというところで農民をやっている一人暮らしの兄上が登場、彼の夕食は毎日毎日揚げ物のみ、という記述が出てくるくらい。

わがダンナも、単に揚げてあるだけでなく、さらに油が二重コートされているバファローウィングが大好物。私が出張でしばらく留守にする、というと、すかさず大量に手羽先を買ってきてどかっと作って来る日も来る日も食べてる模様。最近、さらにアマゾンのセールで「揚げ物専用機deep fryer」を購入、ここ1ヶ月で5回くらい作ってました。私はたまに食べるのは好きなのだが、一度食べると1ヶ月くらいは見るのもいやになる。

さて、肥満はアメリカの社会的大問題。最近アメリカで生まれた子供の二人に一人はいつか糖尿病になる、という予測もある。実際、低所得者層ほど病的肥満が多く、サンフランシスコにある低所得者専門の病院で働く知人いわく、全患者の90%以上が糖尿病とのことであった。きょえー。

そんなアメリカで、タバコの次なる社会悪として槍玉に挙げられているのがファーストフード。昔、「タバコ会社を集団訴訟で訴える」というの始めたどこかの弁護士が、数年前、今度はマクドナルドをはじめ とするファーストフード店を訴えるという試みを始め、ファーストフード業界は戦々恐々としている。が、しかし、アメリカ人は脂っこいものと甘いものが死ぬほど好きなのだ。だから、脂っこい、または甘い、もしくは脂っこくて甘いものをメニューに加えると 売り上げが伸びる。一方、サラダなど健康的メニューを増加しないと、長期的には集団訴訟で巨額の賠償金を払わされるリスクが増える。こうした、「短期的売り上げ増」と「長期的リスク回避」が両立しないことが、ファーストフード業界のジレンマのよう。

数年前に「Super Size Me」というドキュメンタリー映画があった。一ヶ月間マクドナルドでしか食事をしない、カウンターで「Super sizeにする?」と聞かれたら必ずyesと答える、というルールでの生活を追うもの。ちなみに、「スーパーサイズ」は、日本人からすると(そして、ヨーロッパ人など、アメリカ人以外の全ての人からしても)トンでも級。ドリンクが42オンス、1240cc。1リットル超でございます。これにスーパーサイズのポテト、チーズバーガー二つがついた「スーパーサイズセット」を一回で食べちゃうわけです。で、このスーパーサイズセット、少ない量のものを単品で買うより安かったりするので、貧しい人ほど肥満がより加速する。

Super Size Meの人は、途中で肝臓がやられたりしてドクターストップがかかり、ホルモンバランスが崩れてうつ状態になり、それでもがんばって1ヶ月続ける、という決死のトライアル。この映画の後、マクドナルドはスーパーサイズをメニューから外した、という、体を張った社会貢献なのでした。

というわけで、バファローウィング、命を懸けて食べてみてください。たまに食べるとおいしいですよ。ビールのつまみにもよろし。

Permalink | Comments (15) | TrackBack (1)

10 月 12, 2006

サンフランシスコ・ジャパンタウン

サンフランシスコのジャパンタウンはさびれている。日系人が減ると共に影が薄くなったらしい。日系人は既に3世、4世で、日本語ができる人も少ないし、そもそも他の人種・民族との混血が進んで100%日本人という人も少ない。日系人の集まりに行ったことがあるのだが、そのとき話した日系3世の人いわく、最近の若い日系人(4世とか)の方が、日本語を学んで日本の文化を理解したい、という希望が強いとのことであった。その上の世代に日本語ができる人が少ない、というのには戦争の影響もあるのかも。敵国語だったわけだからして。(知ってるか、若者よ。日本はアメリカと戦争して、アメリカに住んでた日本人は強制収容所に入れられたのだよ。)

さて、そのジャパンタウンの核とも言うべきミヤコホテルを、再生ファンドが買って、ヒップなホテル経営会社が再建する、という話がSan Francisco ChronicleのJapantown hotel hopes pop infusion will boost district。

「アニメとマンガとJポップと日本のストリートカルチャー」

が再生後のテーマだそうだ。小学館がスポンサーだそうです。

いいですなぁ。特に「マンガ」には期待したいぞよ。体育館みたいなマンガ専門店とか。全米からマンガ買うためにマニアが行脚するような。英語版と日本語版半分ずつ置いて欲しい。最近書いたが、英語版が出ていないマンガを読む涙ぐましいアメリカのファンもいることだし。↓

日本語版を誰かが持ってきて、一部をコピー、みんなでそれを持ち帰り、次の会までに、フキダシの中のセリフ等を勝手に想像、

「きっと、こういうお話なんじゃないか」

などと語り合う

こういう話を聞くと「ガイコクでは日本の低俗なことばかり取り上げている」と嘆く人がいる。が、しかし、歴史的に見ても、文化・芸術の中には最初は巷から出てくるものがたくさんある。歌舞伎だって浮世絵だって、登場した当時は「まぁぁ、なんてオ下劣な!!」(と言われたかどうかはわからないが)民衆芸能であった。モーツァルトだって、「下品」な音楽だと思われたりしたわけで。

最近うちのダンナは、Netflixでひたすらアニメを借りて見続けている。スクライド、サムライチャンプルー、攻殻機動隊、とか。(攻殻機動隊の公安9課で、草薙少佐が一人水着勤務なのは笑えるが・・・っていうか、ちょっと怒り。が、シリーズが進むにつれ肉体露出度が減るのはおかしい。)

私はそれを片目で見つつマンガを読む。この間、ベイエリア在住、元マッキンゼーのエリちゃんと、スージーことスズエちゃんと話してた時、

「借りた文庫本は返すの忘れることあるけど、マンガだけはちゃんと返さなくちゃ、と思う」

という話になった。同感、同感。マンガの方が大事だもんね。去年、日本で小学校6年生のクラスで、仕事について話す機会があったのだが、

「今、マンガがすごく好きな人、持ってるマンガは捨てないようにしよう。捨てると後悔する。」

と力説しておいた。なんのこっちゃ、であるが、メッセージとしては、

「大人になったからといって、子供の自分と全然かけ離れたところに、『できた人間の自分』が突如登場するわけではない。結局今の自分の延長線上で、何とかやっていくしかない。人間はそんなに変わらんのである。だから、少しずつ、自分のやりたいこと、できることを今から考えていこう。」

ということだったのである。で、「子供の自分が好きなマンガは大人になっても好き」、だから「マンガを大事にしよう」と。stillなんのこっちゃと思う方もいるだろうが、とにかくマンガは大切にしよう。私は大学卒業時の蔵書廃棄をいまだ後悔。

実際、今35-40歳くらいのところに、「マンガを普通の文化の一部と捕らえるか、ゲテモノと捕らえるか」のラインがあるような気がする。それより下の人は、ごくごく自然に「普通の本もマンガも大好き」と言えるし、マンガ蔵書を誇る人も多い。(前述のエリチャン、スージーは下の世代)。それより上はマンガ好きな人が少ないし、いても、もうちょっと屈折してたり隠れてたり。

さて、話をジャパンタウンに戻すと、記事にはさらにこんな記述が

Joie de Vivre (ホテル経営会社)also plans to enhance the traditional Japanese decor

(中略)On order are a large statue of raccoon-dog called a tanuki, commonly found in Japanese commercial areas, as well as oversized kokeshi dolls, koi fish streamers, umbrellas and other items

(中略)It plans to invite each of Japan's 47 prefectures to exhibit special products from their regions

  • ミヤコホテルの内装は、伝統的和風テーストをさらに強化
  • 狸の置物、巨大なこけし、こいのぼり、傘等を導入
  • 日本の47都道府県の名産物展示会開催

ちなみに、ミヤコホテルの現在の「伝統的和風内装」はちょっと微妙。どう強化されるのだろうか。そして、狸はまだしも、なぜコケシ?そして名産物展?・・・よくわからないが、なんだか楽しそうだ。

東京は丸の内の、今は無き初代丸ビルも、建設当初は「ビルヂングの中にいると病気になる」という迷信がなぜか登場、なかなかテナントが入らず、名産物店だの見世物小屋だのが入っていたこともある、、、と聞いた気がする。(三菱地所の方、間違っていたら訂正願う。)そういう胡散臭い感じもしますなぁ。

とにかく、いろいろなものが猥雑に折り重なるようにあるのが、現代日本の都市の魅力。再生ジャパンタウンには、そういう「日本版バザール的魅力」がちゃんと出るといいですね。ゴスロリのお姉さんとかも、本物を呼んできてその辺を歩かせたりするとすばらしい・・・・。これぞ「文化の輸出」です。

Permalink | Comments (10) | TrackBack (0)

10 月 10, 2006

現代アメリカ版 執事&メイド

GoogleがYoutubeを16.5億ドルで買収する。2000億円弱。創業2年、ベンチャーキャピタルのSequoiaから去年の11月と今年の3月の二度に分けて1150万ドル投資を受けているだけ。20代後半のファウンダーは、二人あわせて少なくとも40%、多ければ60%くらい持っていると推定される。お一人様400億円なり。

さて、この手のお金持ちの家をマネージする、現代の「召使」の記事が、先週のNew York Timesに載っていた。Couples who run the house for others(有料ですが・・・。)メイド・執事、の召使、です。カップルでまとめてお仕えする、というパターン。

求められるスキルは、料理、掃除、ガーデニング、運転、車のメンテナンスなど、昔からのものに加え、こんな新たなものがあるそうです。
- セキュリティシステムや、ちょっとした映画館並のホームシアターなど、高級な家電・設備の知識
- 在庫管理や予算作成のためのエクセル知識
- 労務管理、納税知識

もちろん、サービス精神旺盛でないとダメ。

さらに、リッチなご主人様の会話理解スキルもいる。crystalとCristalの違いを知っている、とか。前者はグラス(を主とするガラス製品ですな)、後者はシャンパン。メイド服、執事服が似合うだけじゃダメなのだ。当たり前だが。

こういうカップルはなかなか得がたい存在。執事やメイドの派遣会社なるものもあるが、スキルが高くて性格良好なカップルを探すのは大変だそうである。Professional Domestic Services and Instituteなる派遣会社では、「召使学校」もやっている。期間約2ヶ月、学費4000-6000ドルなり。豪華な家計の管理など、いろいろ教えてくれるそうです。

巨大な邸宅で頻繁にディナーパーティーやその他大イベントを開催をする、というような家庭の場合、もちろん二人では運営しきれないので、大勢のスタッフを抱えることになる。いろいろな職種があるが、personal chefというのもある。これは、その名のとおり、料理専門。Personal Chef Associationという業界団体いわく、現在全米で1億ドル規模とのことです。(これはつまり、personal chefの給料の合計、ということざましょう)。数年前にメキシコに行ったとき、ベイエリアでpersonal chefをやっている、という人が隣に座ったことがあった。顔が魚のカスリハタに似てたのでよく覚えてます。

ま、しかし、ベイエリアは、社交界っていっても大したこと無いし、そもそもオタク系金持ちが多いので、「来る日も来る日もパーティー」みたいな人は限られる。が、まぁハウスキーパー用の家が敷地内に別棟である、というくらいの家はありがち。そういえば、そういう別棟が敷地内に2つある、というお宅に招いていただいたこともありました。

そういえば、10年位前にパリにあるコルドンブルーなる料理学校にウラウラと行ったことがあったのだが、そのときのクラスメートに、「金持ちのヨットをカップルで管理・運営している」という、フィンランド人の女の子がいた。語学学校で富を築いたスウェーデン人がヨットのオーナー。彼女のパートナー氏が船長、彼女はコックなのだった。普段は「召使」は二人だけ。雇用主が人を大勢招いてヨットでバカンス、といったときは、臨時スタッフを雇うとのこと。ただし、雇用主がヨットにやってくるのは年間にほんの数週間で、それ以外は、
「カンヌまで来い」
「ケイマンまで動かして」
といったグローバルなヨット移動と、メンテナンスが仕事。
「彼氏と二人きりで一年のほとんどを海の上で過ごすのって、結構しんどいこともある」
とのことでした。それはそうでしょう。ちなみに彼女は、スウェーデン語、フィンランド語、英語、フランス語が堪能で、もともとは看護婦で今シェフ、というオールマイティーな人。ヨットの召使としては、非常に望ましいスキルですなぁ。コルドンブルーも、半分休暇、半分仕事ということで、雇用主が出してくれたそうである。

さて、今後、貧富の差が広がっていく中、ハイスキルな「召使」は、

「かなりの収入を得られる上、雇用主を選べる程度の市場がある」

というよい仕事となっていくのではないでしょうか。New York Timesいわく、アメリカ版カップル召使の収入は、二人合わせて5-10万ドル、時にはそれ以上。これ以外に、住宅、健康保険、自動車が付くことが多いそうです。食費もあんまりかからなそう。とはいうものの、二人で5万ドルは安過ぎる気がするが、「殆どいないご主人様の留守宅管理人」なんいう場合もあるそうなので、それだったらあまりスキルもいらないし、仕事も楽そうだし、こんなもんでしょうか。

なお、「召使業も面白そうかも」ということで、古きよき前時代の執事のあり方から勉強したいという殊勝な方は、映画、The Remains of the Dayなどご覧になってはいかが。頑迷なまでに仕事一筋な古きよき執事が見られる。(原作もあるが映画の方が風景や邸宅の様子が見える分よかった。本はちょっと私的には退屈であった。)もうちっと舞台裏風に、召使の生活と人生が垣間見られるのはGosford Park。なかなか良い映画だったぞよ。カメラワークが結構凝ってました。

Permalink | Comments (4) | TrackBack (0)

ページの上に戻る
本サイトのコンテンツは、出典を明記すれば自由に利用できます。詳しくは下記イメージをクリック。

Creative Commons License