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4 月 29, 2006

Stanfordのオンライン英才高校

Stanfordがオンライン高校を開設した。通常の高校の卒業資格が取得でき、普通の大学受験ができる。

ただし、ただの高校ではなく、英才教育用高校。その名もEducation Program for Gifted Youth(EPGY)=Giftedな若者向け教育プログラム。Giftedは、アメリカの義務教育でよく使われる言葉で、「優秀な」という感じ。自分の努力で獲得するもの、というよりは、そもそも生まれつき神様から贈られている能力、という感じでしょうか。

「たまたま高い能力を与えられたんだから、その分思い切りがんばってもらおうか」

というニュアンスも感じられる。(能力の高い大人を形容するときにはgiftedとは言わない。大人の能力には、それまでの努力も多分に必要ということでしょうか。。)

ちなみに、Wikipediaさまによると、アメリカ教育におけるGiftedとは:

In Identifying Gifted Children: A Practical Guide, Susan K. Johnsen (2004) explains that gifted children all exhibit the potential for high performance in the areas included in the United States federal definition of gifted and talented students:

The term "gifted and talented" when used in respect to students, children, or youth means students, children, or youth who give evidence of high performance capability in areas such as intellectual, creative, artistic, or leadership capacity, or in specific academic fields, and who require services or activities not ordinarily provided by the school in order to fully develop such capabilities." (P.L. 103–382, Title XIV, p. 388)

太字にしたのは私です。

「高い能力があるが、その能力を開花させるには、普通の義務教育を超えるサポートが必要」

というのがGiftedの定義なわけですな。Giftedな生徒のために、より難しいことを教えてもらえるクラスとか、近くの大学の授業を受けにいけるシステムが普通の高校にあるとのことである。

しかし、Bushが「No child left behind」という、成績の悪い子供を減らすためのキャンペーンを始めてから、落ちこぼれを救うための対策に予算が奪われ、Giftedな生徒のサポートがおろそかになっている、という問題も時として指摘される。

そこで登場したのが、このオンラインスクール=Online High School、略してOHS。オンラインで卒業資格が取れる高校はほかにもあったが、Giftedな生徒専用、というのはこのOHSがはじめて、とMercury Newsに出ていた。

OHSだけで高校を終えることもできるし、地元の学校とOHSを半々にすることもできる。その場合は、地元の高校の単位をOHSの単位に足すことが可能。また、OHSで興味のある授業をひとつだけとることもできる。海外に住んでいてもOK、と。

課外授業・・というか、クラブ活動も用意され、また、夏休み期間には、Stanfordのキャンパスに実際に出向いてクラスメートと実際に顔をあわせることができるサマースクールもある。

授業の内容は、「大学型」だそう。Overview of the Academic Program(PDF)によれば

While the typical high school student spends close to thirty hours per week in instructor-led classes, the average first-year college student spends between fifteen and twenty hours in class and a good deal more time outside of class studying in preparation. The seminar style classes offered at the OHS will be closer in spirit to college courses.

「授業を聞いて教えてもらう(高校型)」のではなく「予習に時間を割いて準備する(大学型)」になる、と。同じパンフレットによれば

Emphasis on writing, discussion, and argumentation. In seminar-style courses there will be an emphasis on fostering in the students the ability to read critically and write forcefully and persuasively. These themes, which are developed in depth in the OHS core courses, will be incorporated throughout the curriculum.

文章を書くことや討論に力点を置く、ともある。「注意深い評価と判断に基づいた読み方」「力強く説得力ある書き方」がカリキュラム全般で育成されるようにする、と。

「読み書き」って、アメリカの教育でやたらに力点が置かれることなんですな。日本の高校でまともに作文することってほとんどなかったという気がする。(中学ですらあまり記憶にない。)書いてもせいぜい3枚くらい。しかし、アメリカの高校生・大学生は、やたらに長い文章を書かせられる。うん十枚、とか。

ちっとは、「短く簡潔な要点だけの文章を書く訓練」というのもやったほうがいいのでは、と言う気もするが、一方、ある程度複雑な概念は、短く書くことは不可能であるからして、長い文章を読む・書くことに慣れておくことは重要だ。特にGiftedな生徒さんたちは、将来に備えて開発しておくべきスキルであろう。

ちなみに、このオンラインスクール「数学」に力点が置かれています。

Enhanced mathematical content. Where appropriate, courses in the natural sciences and the mathematical social sciences will have enhanced mathematical content. This will allow students to study material in greater depth and in a manner more closely approximating how these subjects are studied in the university.

自然科学、社会科学ともに、可能な限り数学を強調する、と。つまり「理系さん、いらっしゃーい」学校なんです。うれしいねぇ。OHSでは、「高校レベルの科目」と「大学レベルの科目」があるが、大学レベルのほうには「量子力学」「線形代数」などが並ぶのは当然としても、高校レベルのほうにも「Cプログラミング」「Javaプログラミング」などがある。

(なお、私とほぼ同じ年のダンナいわく、彼の高校時代はBasicのクラスがあったとのことである。学校でプログラムの授業なんて、私の行ってたころの日本の高校では想像できませんが(パソコンなかったし)。今はそういう授業もあるのか??)

そしてまた、OHSでは、生徒の力量次第で個別にどんどん先に進める、ともある。

Self-paced, directed study courses. Many gifted students are frustrated by having their progress limited by the abilities of the other students in the class. We will accommodate such students in courses that do not involve regular student-student interaction by allowing them to proceed through the curriculum at an accelerated pace under faculty direction.

「他の生徒を待つことなく、好きなスピードで進めるのでフラストレーションがない」と。

***
あー、私が子供ころにこういうのがあったらなぁ・・。「英語」というところがしんどいが、あらかじめわかっていれば何年かがんばって準備すればなんとかなるかも。

なんといっても、私は勉強が大好きだったのであります。小学校のときは、4月に教科書をもらったら、3週間で1年分の問題を解いた。中学、高校と進んでも、数学も物理も古文も英語もOKであった。

そして、それは、かなり恥ずかしく、みっともないことであった。

もちろん、アメリカでも、「勉強できるやつはクールじゃない」という偏見はある。

「勉強ができることもクールだよ」というメッセージの(と映画評に書いてあった)Akeelah and the Beeという映画が今日封切られたが、それは逆に言えば、「映画で伝えなきゃならないくらい、メッセージが普通じゃない」ということだ。

というわけで、「勉強ができると同級生からクールじゃないと思われる」というのは、日本もアメリカも一緒かもしれない。しかし、アメリカでは、教育システムとか、社会システムは「勉強ができることはいいことだ」というメッセージを強力に発信していると思う。「Gifted生徒向けプログラム」もそのひとつ。一方、日本では、

「そもそも勉強ができること自体、大してほめられることではない、いやむしろ社会で成功する上では逆効果だ」

というイメージが大いにあるように思う。少なくとも、そう明言する人は多い。今でも覚えているが、小学校の高学年くらいのときに「成績のよい子供は創造性がないから、クリエイティブに物事を作り上げ、解決していく人間になれない」という類のモノを読んで、

「そうか、私は創造性がないのか」

と悲しく思ったものだ。

なんかもうちょっと、優遇してくれてもよくないですかねぇ、、、。せっかく、世の中のほとんどの人が嫌いな勉強を好きこのんでする、という奇特な人間なんだから。

***

ちなみに、OHSの年間授業料は12、000ドル。必須ではないが、サマースクールにも行ったらプラス4、700ドル。一応、「奨学金が出せるよう画策中」とのことですので、受かりさえすれば何らかのサポートが受けられるかも。ま、日本で私立の高校に行っても、これくらいはかかるのかな?

というわけで、今年の秋から始まるOHS、受験希望の方は、こちらに要綱がございますので、どんどんトライしてみてください。アメリカの高校卒業資格があれば、アメリカの大学への進学も簡単になりますし。

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4 月 27, 2006

コレハナンデスカ?

飛行機の席においてある通販カタログ、Skymall。ついつい見てしまうんですが、誰がこんなの買うんですかねー、といつも思うのが相撲取り人形 。その名もBasho。

Add a touch of the Far East with Basho

だそう。全長約70センチ、重さ6キロ。98ドル95セントでございます。Skymallのバージョンが変わって、商品が入れ替わっても結構しぶとく残っているBasho君。売れ筋なのか。

わけのわからない日本モノつながりでは、Palo AltoのUniversity AvenueにMiyakeという回転寿司屋があります。ミラーボールが回り、テーブルの上で若者が踊り、週末は表に行列ができ、屈強なバウンサーがドアの前に立つ。つまり、「回転寿司ディスコ」なのでした。ははー。

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4 月 26, 2006

Citibank Token: オンラインバンキングのセキュリティ

銀行からFedexでこんなものが送られてきた。「オンラインバンキング用セキュリティ番号生成装置」であります。その名もSecurity Token。

Security Token
左側の白っぽいボタンを押すと自動的に番号が表示される。1分毎位に違う番号になる。オンラインバンキングにアクセスする際はこの番号が必ず必要。

いわゆる「two-factor authentication」の試みのひとつ。暗証番号で本人認証をするのは「本人しか知らないこと」がひとつしかないのでone- factor authentication。(口座番号は他人も知っている可能性があるから)

「暗証番号」+「トークンが生成する番号」

の二つが必要なのでtwo-factor authenticationなのでした。米国Citibankでは、企業顧客全員にこれを発行することにしたとのこと。

ちなみに、Citiの企業口座アクセスの際には、トークンの番号以外に
1)ID
2)パスワード
3)もうひとつ3桁の番号
が必要。3番目のはバーチャルキーパッドでしか入力できない。マウスでカーソルを動かして、画面上に表示されるキーパッドを使って数字を入力。Keyloggerでキーボードのタイプ内容を盗まれる対策。

今回のセキュリティトークンは、安全対策のさらなる強化である。

が、しかしtwo-factor authenticationでは防げない犯罪もある、だから意味がない、というを唱える人も。

防げない犯罪の例としては

1)trojan horse型
本人認証がすべて終わった後、送金をするところで、潜んでいたtrojan horseプログラムが勝手にワルモノのところに送金してしまう

2)man-in-the-middle型(訳すとしたら「中抜き」ですかね)
銀行などのサイトをURLを含め丸ごと偽造、そこにアクセスした人が情報を入力したところで、その情報を丸ごと盗んで本物の銀行サイトにアクセス、勝手な送金を行う

(2は、「URLも盗む」というところが結構大変だが、延々と準備を重ね、ほんの数時間で一気呵成に犯罪を行い、ささっと逃げれば可能そうだ。イメージとしては「Mission Impossible2」。ウクライナとナイジェリアとケイマンとスイスにチームを配置、一気にマネーロンダリングしておしまい、とか。)

とはいうものの、この無意味説は、その後two-factor authenticationを導入する企業(マイクロソフト含む)からの抗議もあったりして、唱えた人自らが「いや、でも完全に意味がないわけではない」と言い直したりしている。

two-factor authenticationの他の例では、携帯にショートメッセージで毎回違う番号を送る、という方法もある。これだと、新しいハードウェアはいらない。

(参考:ヨーロッパの銀行がどんな取り組みをしているかの記事

***

去年日本に行った時、オンラインのクレジットカード認証で、カード番号と有効期限を入れるだけでOKだったのがあって、びっくりした。(アメリカでは郵便番号を照会するために住所入力をさせられるのが普通。リアル店舗でも郵便番号を聞かれることがある。)これだったら、他人のカードをチラッと盗み見るだけで使えそう。大々的犯罪が起こりそうな危険を感じました。オンラインバンキングはさすがにそんなゆるゆるではないと思うが・・。

私が想像する日本で起こりえるシナリオとしては・・・・

性善説とITエンジニア不足により、ゆるゆるで本人認証
 ↓
ある日突然どっと犯罪が起こる
 ↓
大騒ぎ
 ↓
世界でも稀に見る強固なセキュリティ対策が導入される

「強固なセキュリティ対策」は「全携帯端末に虹彩認証」とかでしょうか。Citibankのトークンみたいなのは、技術的になんとなく中途半端で日本では普及しないような気がするので。どうでしょうね。

***

ちなみに、このトークン、Made in Chinaである。製造元自体が犯罪組織と関係してたらどうするんだろう。インターポールに依頼して追いかけるのであろうか。何年か前に、アメリカのマクドナルドで
「過去10数年間のクイズの景品は、すべてクイズ運営委託先が詐欺で奪い取っており、応募してくる普通の人にはひとつも当たっていませんでした」
という大事件が発覚した。「マクドナルドで〇〇に答えて、△△を当てよう」というアレです。賞品の中にはベンツなどの車もあって、詐欺総額は2千万ドル(20億円超)。まぁ、いくらなんでも、銀行だったらしっかり管理すると思うけど。

しかし個人的に、「製造元が犯罪組織」よりも大きな問題となるのが

「私がトークンをなくす」

ということだ。物をなくすのが大変得意なので。「やれやれ、またひとつ失くして困るものが増えたよ」とため息をついております。

私にとって一番危険なのは自分。♪I'm a hazard to myself♪ というPinkの歌のフレーズが頭の中をエコーします、はい。(From "Don't let me get me" )

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4 月 25, 2006

Stanfordでムンク展やってます

Desire, Anxiety, and Loss: The Prints of Edvard Munchと題された、リトグラフなどの印刷モノのムンク展。先週末行ってきた。スタンフォード大学内のCantor Art Centerで6月までやってます。小さい展示室一つだけのこじんまりしたもんですが、中々よかった。有名な「叫び」も小さいリトグラフが一つあり。展示してあった中では、「Death in a Sick Room」が恐ろしくて好き。

Cantor Centerにはまた、ロダンの彫刻も室内外にたくさんある。フランス国外で最大のロダンのコレクションだそうだ。50点が展示してある。

「考える人」もあるぞよ。巨大な「The gate of Hell」も。前に見に行ったときは、フーンとしか思わなかったが、今回はMunchの世界に浸ってアートな気持ちになってからロダンを見たせいか、圧倒 された。「考える人」は、胴体に比べて手や足がやたらと太いのだが、それを見た瞬間、自分の指がグローブみたいに太くなった錯覚に襲われた。

アートものって、時々こういうフィジカルな感触を感じることがある。絵を見た瞬間に突然眠くなったり。

話をMunchに戻すと、今週土曜にはEdvard Munch: Personality and Imageと題されたシンポジウムもあります。展示、シンポジウム共に無料。近くにお住まいの方は散歩がてら是非どうぞ。

アメリカの大学の近くに住むと、こういういいことがあるのでございます。はい。 

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4 月 24, 2006

アメリカと正面切って戦争しない

この週末のSan Jose Mercuryに、米軍による攻撃のせいで、顔半分が焼け爛れ左目を失ったイラクの少年が、アメリカに来て整形手術を受ける、という話が載っていた。(Healing hands for victim of Iraqi conflict

数回にわたる手術を受けるため少年と父親はアメリカにやってきた。手術費はNo More Victimsという米国のNPOが負担。二人の宿泊先を提供するのは、息子が二人いるボランティアのシングルマザー。

「罪のない子供までに被害を及ぼすアメリカはひどい」という見るか、「心温まる話だ」と見るか、またはその両方と見るか、いろいろな読み方ができると思う。しかし、私が思ったのは

「アメリカを実際に見た親子は何を思っただろうか」

ということ。

イラクの国内は相当に悲惨なことになっているようだ。駐留中のアメリカ軍だけでも10万人を超すはず。アメリカがなんと言おうと、イラク人にとっては「全面戦争状態」に違いない。

しかし、その戦争相手(なのか、味方なのか、これまた見方や立場によっていろいろだと思うが)のアメリカの国内は、ごく普通の豊かな日常で一杯。燃費の悪い巨大な車が行きかい、人々は腹いっぱい食べたあげくに肥満を心配し、夏のバケーション先に頭を悩ます。

戦火のイラクからやってきた人にとって、その非日常感たるやいかに。

・・・少なくとも、もし私が第二次世界大戦中に生きていて、ひょんなことでアメリカにきたら、きっとそう感じるだろうなぁ、と思う。強制収容所に直行では、とか、日本は自ら宣戦布告(遅れたけど)してパールハーバーを爆撃したけど、イラクは濡れ衣では、とかそういう事情はさてはおきつ。

アメリカで生活する日本人と話していて、時々話題になるのが、

「どうして日本はこんな豊かなアメリカに正面切って戦争を仕掛けたんだろう?」

ということ。海軍は勝ち目がないことを知っていたが陸軍が無知だったとか、巨大化しすぎたアメリカが内側から瓦解するはずと見たとか、いろいろ聞くが、多分前者なんだろうなぁ。

なんと言っても、アメリカはでかくて豊か。飛行機でアメリカの国土の上を飛んだり、ひたすら続く平たい農地の真ん中をひたすら何時間も(場所によっては何日も)車で走り続けたりすると、しみじみ思う。本土だけで時差が3時間、ハワイも入れたら6時間もあるんだし。も書いたが

時々飛行機で(アメリカの)農地の上を飛ぶと、いかに一つ一つの畑が大きいかに驚かされます。しかも、最近は一つ一つの畑が「円形」ということも。いったりきたりするより、くるくる回って耕す方が効率がよいらしい。

さて、同じ形の円を、重なりがないようにたくさん並べると、円と円との間には、ゆがんだひし形の「あまり」ができますが、そういう「あまり」がたくさんある。
●●●
●●●
●●●
↑こういう感じ。

一つ一つの円は多分1キロくらいあるので、「あまり」のところだけでも、日本の零細農家が丸ごと一つ入っちゃうくらいなのではないか、と思われます。しかし、その「あまり」は「あまり」として放置されているのでした。土地が余ってるから。

この広大さと資源の前では、やる気とか、ガッツとか、根性とか、誠意とか、訓練とか、そういうものでは乗り切れない圧倒的な国力の差を感じるわけです。中国と日本が合併して、カルロスゴーンさんに大統領になってもらって、10年くらい改革してもらわないと無理ではなかろうか。

***

ローマ帝国がその最盛期にいかに圧倒的に強大だったかは有名だが、私の愛する映画Gladiatorでも、そのローマのとんでもなさぶりが遺憾なく発揮される。オープニングは賢帝Marcus Aureliusが蛮族(ゲルマン人?)を征する戦いなのだが、相手が石斧に熊の毛皮の「マタギ」風なのに対し、ローマ軍はびしっとおそろいのヘルメット(っていうのか)と鎧に身を固め、羽飾りなんかも付いてとってもおしゃれ。しかも、火の玉を相手の陣中深く打ち込む火器まであって、2世紀とは思えぬ近代風の軍隊である。(って、まぁ、映画なのではあるが、かなり史実に忠実に作られたらしい)

最近のアメリカはそのローマにたとえられるわけで。もちろん、強大なローマ帝国も滅び、現代のローマは単なる観光地。アメリカの国力だっていつかは衰えるであろう。しかし、今のところ圧倒的に強い。資源があって広いということに加え、資本主義・民主主義というシステムに磨きがかかっている。

念のため言うが、アメリカ人が偉いとか、そういうことを言ってるわけじゃありません。単に事実として、アメリカの国力は他の追随を中々許さないリードを持っていること。

***

Peter Druckerの最初の本でThe End of Economic Man: The Origins of Totalitarianismというのがある。10年位前に読んだ記憶を元に書くので間違っていたらご指摘いただきたいのだが、確かDruckerが20代の頃に初稿を起こし、30代で書き上げたもの。マネジメントのマの字もなく、ナチスドイツの台頭についての身の毛もよだつ分析である。特にぞっとしたのが、「最初の頃、ドイツ人はヒトラーも、そのユダヤ排斥の主張も冗談のようなものだと思っていた。しかし、そうして軽んじている間に、みるみるナチスは力を伸ばしていった」というところであった。

ここ10年くらい日本でも、冗談のようなマンガチックな右傾主張を唱える人たちや、その声のメインストリーム化が進んでいるような気がするのだが、ナチスの二の舞になったら怖い。そういう人たちがいつの間にやら主力を握り、「打倒アメリカ!」とばかり戦争を仕掛けたらどうしよう、、、とか。

そういう皆さん、万が一アメリカを攻めるときは、まず全米行脚して、国情を自分の目で把握し、その上できっちり勝てる算段をしてからにしてください。がんばったくらいじゃ勝てないですので。例えば、アルカイダの上を行って、誰が攻撃しているかも全くわからないようにするとか、いや、むしろ攻撃を受けていることすら気づかれない攻撃をするとか・・・遺伝子操作でアメリカ人を全員別のモノにするとか・・・うーむむ。

***

・・・と、取り止めがなくなってきたので、この辺で終わりにします。整形手術を受ける少年の話については、写真とインタビュー、報道カメラマンの語りで構成された、Journey with Abdul Hakimもあります。

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4 月 19, 2006

カミソリはムーアの法則に従うか

Economist 3月16日号のShaving Technology: The Cutting Edgeより。最近カミソリの刃が2枚刃から3枚刃、4枚刃へとどんどん増加しているが、このまま進化するなら、控えめに見ても2100年には14枚刃に、強気に見ると2010年に無限大になるかも、と。Economistの提言は、「刃が増えるとカミソリが重くなる。今から腕力を鍛えておくように。」だそうです。

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4 月 17, 2006

長いものに巻かれない

昨日は、ウレシ恥ずかし納税申告締切日であった。ということで、最近私がIRS(国の納税局)とのやり取りで学んだことです。

それは「長いものには巻かれない」ということ。たとえ相手が警察、裁判所でも、いわんや税務署でも。

そもそも、会社の税金は毎月こまめに納める義務がある。で、去年12月分のうち12月末までに払い込まないといけないものがあったのだが、うっかり5日ほど遅れてしまった。(年末で事務方との連絡不届き)

そしたら、しばらくして「滞納の罰金通知」が来た。なんと2500ドルくらいあった。30万円じゃ。うーむ。厳しいのぉと思ったが、まぁ遅れたのは自分の責任なので払った。

しかしこれをアメリカ人に

「かくかくしかじかで払った」

と言ったら、みな軒並み

「えー、うそ!本当に?私(僕)だったらIRSに手紙を書いて抗議する。きっとチャラになるよ」

マジか。でもルールはルールなんじゃないのか。それに、どういう手紙を誰に書いたらよいか探すのも面倒くさい。人に頼むもの面倒くさい。なので、そのままになり、しばらくしたらさらに滞納の手紙が来た。払い込みと行き違いになったようなので、一応罰金の支払いが届いたか確認するべくIRSに電話した。

出たおじさんに説明したら、

「Wow、その罰金って、たいした額だと思わない?」
(That's a lot of money, don't you think?)

「・・うーん、確かに結構な額です」

と答えると、「それは、かくかくしかじかという手紙をIRSのこの部門に書きなさい。保証はできないけど、せめて減額はしてくれるんじゃないかなぁ」
ですと。

うーむ。IRSのカスタマーサポートにも驚かれてしまった。まじめに支払った私はバカなんですね。っていうか、アメリカ人的には

「ルールは人のためにあるのであり、人がルールのためにあるんじゃないんだから、事情を説明すればいのに。それもせずただ単に支払うなんて変な人だ」

と言うことみたい。

***

不法移民の人権を守るデモで不法移民について「でもなぁ、やっぱり、不法なんでしょ、それってよくないんじゃないの、と、私の中の律儀な日本人はささやく」と書いたところ、アメリカ育ち、シリコンバレー在住のYukiさんからこのようなコメントをいただいた。

私が行った小・中・高では"Just because it's the law doesn't make it right."ということを生徒に叩き込んでいました。それこそアメリカの民主主義の大前提になる思想、という感じでです。歴史のクラスの一大テーマはア メリカの憲法や法律の時代に伴う変化とか、州による法律の違いです。中学生には「アラバマ物語」やケネディー大統領が書いたProfiles in Courage、高校生にはオーウェルを必ず読まさせますが、その教訓は「お上の言う事を鵜呑みにしないで、自分で考えよう」です。

さらにYukiさんからは

もう何年もブログを愛読させていただき、Chikaさんの「とにかく物事は批判的に考える」というスタンスにいつも共感していますが、日本でお育ちになったChikaさんとアメリカで育った私とでは「やっぱり違うところもあるんだな。」ということに時々気がつきます。

いやー、私も、「アメリカで育った人たちと、日本で育った私の違い」を久しぶりに強く感じました。本件はまさにそれ。「長いものには巻かれない」ですね。いや、勉強になります。。。

余談ですが、警察や裁判所という長いものにも巻かれてはいけません。

以前謝らない人たちというエントリー(←自分で言うのもなんだが面白い)に書きましたが、スピード違反の際の警察からの通知が間違っており、さらにカリフォルニア州の裁判所からもらった通知には、Californiaのスペルが間違っておりました。(下記)Tiffanyも間違ってたし。何事も鵜呑みにしてはいけないんですね。

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4 月 13, 2006

枕の10分の一は垢とダニ

寝る前にダラダラと読み続けている
A Short History of Nearly Everything
で発見した衝撃の一文・・・

「6年たった枕の重量の10分の1は、剥がれ落ちた皮膚、生きているダニ、死んでいるダニ、およびダニの糞」 

だそうです。(365ページ)But at least these are your mites(ダニ)、というのがせめてもの救いだそうな。

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4 月 12, 2006

エンジニアは神様です

昨日ひとつ書き忘れた。「シリコンバレーでは、ソフトウェア産業従事者の給料が一番高い」ということである。

同じ話題でやたらと引っ張って申し訳ないのだが、私は
「人間が責任を持って生きていく上で、金を稼ぐというのは非常に重要だ」
というポリシーを持っているので書きます。
下のグラフがシリコンバレーの産業別平均年収です。クリックで拡大。
Silicon_valley_wage_by_industry

金融サービスは上から5番目で10万ドル弱。ソフトウェアは14万ドル超だ。
出典は昨日と同じくJoint Venture Silicon Valley NetworkのThe Index of Silicon Valley 2006

当地で、

「わたし、テクノロジーと関係ない仕事してるから給料少なくて生活つらいんですけど」

というのがよく聞かれる所以である。

今日とある事情でとあるエンジニアの採用面接に付き合ったのだが、相当ファンキーな人であった。30分以上遅れて登場した候補者は、ペンもノートも持たず完全なる手ぶら、そして腹だしセーターにジーンズにブーツの女子だった。でも、話しはじめたら、能力としてはかなりすごそう。

エンジニアじゃなかったら、こういう、人を人とも思わぬ振る舞いは許されない。しかしシリコンバレーではエンジニアは神様なのでなんでもありである。AdobeとかAppleには女装でスカートはいてる男性のエンジニアとかいるし。(彼らは面接の日もあの格好だったのかなぁ?)

というわけで、

「日本を含む他の地域との単純給料比較は無意味かもしれないが、シリコンバレーでエンジニアが尊ばれているのは本当だよ」

という話でした。

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4 月 11, 2006

シリコンバレーの給与水準再び

ちょっと前に、シリコンバレーの給与水準生活水準を書いたが、日本の、特にエンジニアの方の中には
「にわかに信じがたい」
と思われた方もいたご様子。

が、本当の本当に、シリコンバレーのソフトウェア従業者の平均給与は141,972ドル、1600万円超なのであります。Joint Venture Silicon Valley NetworkのThe Index of Silicon Valley 2006をご覧あれ。民間団体によるものだが、データ元は州の労働省(Employment Development Department)です。

何でこんなに日本と差が出てしまったのかといえば
1.日本の過去15年は失われてしまった
2.シリコンバレーにハイスキルな人が集中しつつある
というのが大きな要因なんですね。

1.日本の過去15年は失われてしまった

えー、95年から2005年にかけての実質賃金を日本とシリコンバレーで比べてみました。

Japan_sv_realwages_2

下側の太線が日本、最後にプラスマークが入ってる線がシリコンバレーの平均。95年が起点。実質賃金なので、物価の上下動は既に織り込み済み。(シリコンバレーのほうが物価は上がっているが、それを見込んでも、給与の上昇が高い。)

出典は
・厚生労働省:実質賃金 指数及び増減率-現金給与総額(30人以上)(調査産業計)
・Joint Venture Silicon Valley Network:The Index of Silicon Valley 2006

いや、もちろん日本全国を比べるのはフェアじゃないから東京だけにした方がよいとか、日本のは残業代が入ってないぞ、とかそういう問題はある。が、一方で、日本側は30人以上の会社だけなのに対し、シリコンバレー側は、個人商店のオヤジから、ウェートレスから幼稚園の先生からジムのトレーナーのお兄さんまで全部コミ。

と、いろいろありますが、まぁトレンドとしてはこんなもんでは。

日本が世界一物価が高くて、豊かだった時代から15年たっちゃったので、その間に格差も開こうというものであります。

東芝から80年代半ばに米国HPに転職、現スタンフォード大学の西教授によれば、

「80年代半ばにIT業界で日本からアメリカに転職すると給料が倍になった」

とのことなので、そこからちょっと追いつきかけたが再度引き離された、という感じでしょうか。

(注:このチャート、実はちょっとズルでありまして、シリコンバレー側はグラフの形になったデータしか見つからなかったので、大体の感じで日本の指標をビ ジュアルに重ねました。くれぐれも学校の宿題とかにそのまま使わないように。元データでは、シリコンバレー側が95年が5万ドルちょいで2005年が 約7万ドル、日本は95年を100として2005年が98.5です。それに本当は1990年からのを比較したかったんですが、使いやすいデータが見つからな かったので、過去10年分で失礼。)

2.シリコンバレーにハイスキルな人が集中しつつある

シリコンバレー側は、もひとつ重要なトレンドがある。それは、「平均給与はあがっているが、雇用数は減っている」ということ。

Employment_wage

見づらいので拡大して見てください。前述のJoint Venture Silicon Valleyのレポートからのものだが、2002年から2005年にかけて、業種別に、「従業者数」と「平均給与」の増減をグラフ化したもの。暗い緑が授業者数の伸び、明るい緑が平均給与の伸び。

全職種で平均給与は上がっているが、ひとつを除いて全て雇用は減っている。上から2つ目はコンピュータ・通信のハードウェア製造業だが、平均給与は19%伸びているのに雇用は25%減少、上から4つ目のソフトウェアも、平均給与が19%伸びているのに、雇用は11%減ってるわけです。

(雇用が伸びているのは、「Creative and Innovative Services」で、R&Dやコントラクトマニュファクチャリングなど、新技術開発のアウトソースをするような業種だそうな)

San Jose Mercuryの昨日の朝刊にも同様の記事が。

Valley's new job market: (specific) help wanted

Yahoo's Sunnyvale campus is feeling so 1999 these days. The company hired more than 3,000 workers last year -- about the same number it had in all just three years ago.(中略)"We have about 500 openings,'' said Heidi Burgett, a Yahoo spokeswoman. "We're definitely still hiring. Especially algorithmic search. If you know anyone looking, tell them we're hiring.''

Yahooだけ見ても、去年1年で3000人(!)をSunnyvale本社で雇い、今でも500人求人中と。ほかの企業でも同様に雇用はヒートアップ中。

ところが、その一方で、着々とレイオフも進行中。海外にロースキルな仕事は移して、シリコンバレーにはハイレベルな仕事だけ残す、という「構造転換」がどんどん進められているから。

ひとつの会社で同時に大量レイオフと大量雇用が行われることすらある。

Adobe demonstrates why the local job picture can seem confusing. Even as it cut jobs following the Macromedia merger, Adobe has 630 positions open, including 240 in San Jose, according to Donna Morris, Adobe's vice president of global talent.

Adobeでは、レイオフしながらサンノゼだけで240人分のポジションを募集中と。

しかも、高学歴なら良いってモンでもありません。

Jeri Ann Smith got laid off in August 2003 after 21 years at Hewlett-Packard. Even with her experience, her MBA from Harvard and an engineering degree from the University of California-Los Angeles, Smith struggled to find a job in tech. So Smith got a license to be an investment adviser and joined a firm her parents started.

ハーバードMBAとUCLAのエンジニアリングの学位を持ちながら、職が見つからずフィナンシャルアドバイザーの資格を取った人の話もでてくる。漠然とした能力じゃなく、求められている条件にぴったりのスキルが求められるわけです。

In our industry, being an active learner is really key.

ということで、一生学び続けるつもりがない人は、業界構造が変わるたびに振り落とされていくわけ。

そこで残った人の平均年収だからシリコンバレーの収入は高いと、そういうことなのでありました。No pain, no gainですか、やはり。。。

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