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8 月 31, 2004
アトキンズ・ダイエット
アメリカでは、Atkins Dietが大流行である。「炭水化物を取らなければ、どれだけ食べてもやせるし、しかも健康になる」という脅威のダイエット。左の写真のように、「低炭水化物」を謳うワインまででる始末。(ちなみに、糖分・アルコールはバリバリの炭水化物です。)
何が脅威かといって、気持ち悪い。朝ごはんに、卵三つのオムレツに山盛りベーコンとか食べたりする人もいる。炭水化物さえ取らなければ良いので、それ以外はたらふく食べるからだ。
このAtkins Diet、アメリカ国家を挙げての大事業と化している。San Jose Mercuryの記事によれば、
- 国民の21%がAtkins Diet中
- 2002年から2003年にかけてジャガイモ(炭水化物です)の売り上げが4.7%ダウン
- University of California のDon Bell教授いわく、``I've never seen a fad that came along as quite as fast as low-carb diets have,''
Atkins Dietは80年代から存在していたのだが、最近になって「アトキンズダイエットは本当にやせる」「しかも、コレステロールも下がる」という調査結果が医学関係の学会で発表されて、話題に。
ビジネスにも大いに影響しており、ジャガイモ農家の苦悩以外にもこんなことが起こっている。
上述のワイン。Wine Spectatorの記事にあるとおり
The wines take advantage of a recent ruling by the Alcohol and Tobacco Tax and Trade Bureau (TTB) that permits alcohol beverage producers to include calorie and carbohydrate content on their labels.According to the TTB's ruling, the phrase "low carbohydrate" can appear on any wine that contains no more than 7 grams of carbohydrates per 5-ounce serving. Most dry wines fall well below this radar; the U.S. Department of Agriculture's nutritional guidelines report that the average serving of wine contains about 0.8 to 1.8 grams of carbohydrates.
ほとんどのワインを「低炭水化物」と表示できる新しいルールができたから、らしいのだが、このルール、臭い。Atkinsではアルコール消費は禁じられている。それで売り上げが低下するのを恐れたワイン農家がロビー活動で勝ち取ったのではなかろうか。大げさな、と思うかもしれないが、Atkins Dietはいまや多くの飲食産業でビジネスの盛衰にかかわる大問題になっているのである。
たとえばCNNのニュースにあるように、5月には、ドーナツ・チェーンの輝ける新星、Krispy Kremeの株価が18%下落したのだが、これもAtkinsのせいでドーナツの売り上げが下がったから。Fresh Choiceというサラダとパスタをメインにした食べ放題のチェーンなど、倒産してしまった。今年の7月のことである。
パン屋やら、ビール屋やらも悲惨。で、この記事にあるとおり、みな「低炭水化物バージョン」を開発中。ほんまか、という感じだが、低炭水化物パンとか、低炭水化物ケチャップとか。
それでも、ちゃんとしたチェーンは、小麦粉の代わりに大豆の粉を使うなどして低炭水化物化していることが多いのだが、低炭水化物ピザ、と称して、「具だけピザ」を売っているピザ屋もある。バケツにピザの具だけぶち込んで売ってくれるのだそうだ。本当に本当らしい。CNNの記事によれば
in Escondido, California, John Pontrelli, owner of Pit Stop Pasta, offers what may be a traditionalist's worst nightmare: "pizza in a bucket." It has all the pizza toppings placed in a crock or, for takeout customers, a metal can.
メインストリームのハンバーガー屋も、「バン抜きバーガー」を売ってる。(つまり、日本に昔からある「ハンバーグ」です)
Atkins Dietを確立したAtkins博士が1989年に作ったAtkinsという会社もある。関連食品やら本やらを売っており、これ自身も大きなビジネスだが、Business2.0の記事にあるようにSouth Beach Dietなど、似たようなダイエットもあり、ライバルが無いわけではない。(ちなみに、South Beach Dietの本で「おやつにはこれ」と紹介されたLaughing Cow Cheeseは、売り上げ急増で生産が追いつかず、市価4ドルくらいなのにeBayで20ドルで売られる事態となっている。)
なお、Atkins Dietでは、LDL(いわゆる悪玉コレステロール)が減るが、HDL(善玉コレステロール)も減る。いちおう、「大事なのはHDLとLDLの比率だから、両方減ればOK」というのが心臓病学会の見解のようだ。
さらに、そもそも多くのアメリカ人はソフトドリンク(この国においては、ほとんどソーダ)の飲みすぎ。最近の調査では、こちらの記事にあるとおり、国民平均で摂取カロリーの7%をソフトドリンクから取っているという驚くべきデータに加え、一日1本以上ソフトドリンクを飲むと、2型糖尿病になる確率が80%増す、というおどろおどろしい事実も発覚した。Atkinsで、国民が甘いソフトドリンクを飲むのをやめれば、肥満病による医療費増が国家経済を揺るがすと恐れられているアメリカはハッピーであろう。
しかし、しかしですよ。人間はコレステロールを下げるために生きるにあらず。たとえコレステロール値が改善したとしても、炭水化物を取らないと他に影響が出るのではなかろうか。たとえば、糖分をたくさん必要とする器官で真っ先に思いつくのは脳。Atkins Dietを続けるとバカになったりするんではないか、と人事ながら心配であります。
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8 月 30, 2004
DVDのおまけ
DVDというのは素晴らしい映画メディアである、と思う。
何が素晴らしいって、「おまけ」が素晴らしい。音声の別トラックで監督とかシナリオライターが語りを入れているのとか、カットされたシーンとか、制作風景とか。
映画を作りたいと思っている人には、願っても無い教材であろう。映画監督やライターが自分の映画を最初から最後まで解説してくれるなんてなかなかない。
コメンタリーを聞くと、細かいところに気を配って作っているのがよくわかる。たとえば、Gosford Parkは常にカメラが動いていて一時も止まるときが無い。「印象に残る緊迫感がいつもあるなぁ」とは思ったが、それがカメラが動いているせいだとは、聞くまでわからなかった。
あと、映画といえば俳優と監督しか目立たないが、制作について語られる「おまけ」で、美術制作とかCGとかいろいろな人がいて、しかもとても面白そうな仕事をしていそうなのもわかる。映画そのものよりも、そういう裏方の作業に魅入られて
「アーこういう仕事がしたい!!」
と思う人もたくさんでてくるんじゃないか。
これまで「制作費100億円!」とか聞くと、「一体全体何にそんなにお金を使っているんだろうか」と思ったのだが、DVDの「おまけ」を見ると、「うーむ、確かにこんなにリサーチして、しかもいろいろ作りこんだら、それくらいかかるだろうなぁ」と納得。
こうして、DVDというメディアを通じて世界のトップのノウハウが世界に広がる。映画産業の将来のためにも非常によろしい。というか、ものすごい画期的なんではないかと思うんだが。
というわけで、私の好きな「おまけ」をいくつかご紹介。以前書いた私が何度もDVDで見た映画とだいぶ重なりますが。
Catch Me If You Can
17-8歳の若さで、パイロット、医者、弁護士になりすまし、世界をただで飛びまくり、数百万ドルの偽造小切手を使ったFrank Abagnaleのお話。主演のDiCaprioは好きでないのだが、実話ですよ、実話。そして、なんと「おまけ」コンテンツで、本物のFrank Abagnaleの話が聞けるのだ。
捕まってしばらく監獄で過ごした後、28歳で特別に釈放されFBIで小切手偽造犯罪の部署に勤め、さらには、偽造されにくい小切手の作り方を銀行などに指導するコンサルティングビジネスで、詐欺師時代の10倍近い収入を得るにいたった、という後日談は必見。Frank Abagnaleも本名。医者として病院に勤務したり、パイロットとして計器をいじったり、弁護士として法廷に立っている本物の写真もあって、仰天です。老け顔を利用したとはいうものの、並大抵の頭の回転ではできませんな。
老け顔といえば、私の高校の同級生に「笑っていいとも年令当てコンテスト」初代チャンピオンがいる。どう見ても40代だが17歳だったので。高校でのあだ名はオトウサンだった。若作りの日本人でもそういう人がいるんだから不可能ではなかろう。(DiCaprioはいつまでたっても16歳みたいだが。)
ちなみに、Frank Abagnaleは弁護士になりすますにあたっては、実際に司法試験を受けてパスしたそう。それって、なりすましじゃなくて、本物の弁護士なんじゃないのか。
Lord Of The Rings
スペシャル版(分厚いやつ)。とにかくこれでもか、とコンテンツがある。美術制作の人たちの話には興味津々。ストーリーライターがうっかり「gates」と複数形で書いたので、一つでいい門を二つ作っちゃった話など。
全員美形、という設定のエルフのエキストラを探すのが大変だった話も。「スーパーモデル並みの容姿で、安いエキストラの給料で雇えて、しかもすぐに撮影現場のニュージーランドに来られる人」なんていう条件の人がそれほどいるとは思えないです、確かに。
Matrix
これは有名なので言うまでも無いかもしれないけれど、弾丸をよけるシーンの撮影方法とか。
Galaxy Quest
カットされたシーンがめちゃめちゃ笑える。「もったいない!!なんでカットしちゃったんだろう」という感じ。Alan Rickman扮するDr. Lazarusが、エイリアンが一所懸命彼のために作ってくれた部屋に通されるが、ベッドがとがった鋼鉄のスパイクでできていたりとか。あー、こうして説明しても全然面白くないのだが、見たら笑えると思います。では。
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8 月 25, 2004
オリンピックメダル
Economistの8月12日号Athenian maths
Two economists, Andrew Bernard of the Tuck School of Business, and Meghan Busse of the Haas School of Business, accurately predicted the number of medals that American athletes would take home in the Sydney games four years ago (97), as well as the number of gold medals (39). For nine other countries, they were only one medal out.
二人のエコノミストが、シドニーオリンピックでアメリカのメダル数をぴったり当て、他の9カ国あわせてもメダル1つしかずれなかった、と。同じ二人のアテネオリンピックの予想はこちら。
人口と一人当たりGDPが一番大きなファクター。単純だが、結局「才能は、母集団の数で勝負」加えて「金にあかせて練習する」というのが勝利の秘訣なのです。今回、確かロシアだったと思うのだが、今までに比べて水泳のメダルががくんと減り、解説者が「国にプールが少なくてなかなか練習できないらしいです」と言っていた。きびしー。
後のファクターとしては、前回のオリンピックでどれくらいメダルを取ったかの「carry over effect」と、開催国はメダルを取りやすいということで「開催国加点」がある。
これによると
アメリカ93
ロシア83
中国57
オーストラリア55
ドイツ54
というのがトップ5の予想で、日本はウクライナ、キューバよりも下で、メダル19個、うち金6個で15位となっていますが、大幅にはずれてますね。10位以内で大幅にはずれてるのは日本だけ。もう少し下に行くと、べラルースが、予測では35位圏内に入っていないのに、実際には昨日の時点でメダル11個で14位というのもありますが、ま、トップ5で番狂わせは日本だけだな。
何があったのか、日本?
とはいうものの、人口と一人当たりGDPだけだったら、5位につけるのはそれほど不思議ではないわけで、「本来は、これくらいできるはずなのに、今までが異常に悪かった」ということでしょうか。
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8 月 23, 2004
Bushの英語
[インターネットで聞ける英語素材を利用したヒアリング練習サイトListen-ITを作りました。(2005年5月)]
ちょっと前ですが、Bushの究極的英語の間違い。
こちらにあるとおり
"Our enemies are innovative and resourceful, and so are we. They never stop thinking about new ways to harm our country and our people, and neither do we."
- George W. Bush, August 5th, 2004
「われわれの敵は革新的で機知に富んでいる。われわれだってそうだ。敵はわが国とわが国民に危害を及ぼす新たな方法を考えるのをやめはしない。われわれだってやめない。」ということで、え、あなた、アメリカ国とアメリカ国民に危害を与える方法を考え続けてるんですか、と話題に。まさに「あげ足を取る」ですが、芝居がかった調子で言われるとがっくりきますね。上記サイトにはQuicktimeもあって、映像つきで見ることもできます。
Bushの英語不自由ぶりは有名。英語を第二外国語として学ぶ人用サイトにまで、こんな風に間違い語録がまとめられてしまっています。「Is our children learning?」とか。これ以外にも、核兵器の核、Nuclear(ニュークリア)をニュークラーと発音するのも有名。左のように"Vote Bush for four more wars....this time it's nucular"と書いてあるTシャツを売っているサイトまであります。お気の毒。
ま、一国のトップでもこんなもんですから、おおらかに行きましょう。
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8 月 18, 2004
このつまらない仕事を辞めたら、僕の人生は変わるのだろうか?
Silicon Valleyで話題の本というエントリーで去年紹介したWhat Should I Do With My Lifeですが、日本語版が出た、とYucoさんからTrackbackをいただきました。
下記は、日本語版を読んだ方の感想blogエントリへのリンクです。ご興味のある方は参考にしてください。
diary.yuco.net
k-tanakaの映画的箱庭
功なり名を成した人が「わたしはこうしてキャリアを作った」というような、「おとぎばなし」ではなく、今まさに迷いつつあれこれ模索している30代前後の人の例がたくさん出てきます。邦題は「このつまらない仕事を辞めたら、僕の人生は変わるのだろうか?」というのですが、これはちょっと違うと思うなぁ・・・・。英語のオリジナルタイトルWhat should I do with my lifeは、「わたしの人生の意味って何なんだろう」という感じだと思うんですが。それとも日本ではやはり「このつまらない・・・・」みたいなくらーい感じのほうが受けるのでしょうか?
個人的には、ある日「もっとスキーがしたい」という理由で、いきなりダンナも説得して夫婦で仕事をやめて、林業農家のおじさんから農家の権利を買い取って林業屋さんになり、毎年何週間もスキーにいけるようにした、という女の子の話が一番印象に残ってます。
多分、50人のインタビューが詰まったこの本を読んで、しばらくたってもう一回思い出して、どの人の話が一番心に残っているかで、自分が本当はどんな仕事を求めているかがわかるのかも。ま、しかし、以前のエントリーにも書いたように、「本当の自分」なんてものは存在しなくて、何事もやって見なけりゃわからないものではあるのですが、とはいうものの、「立ち止まって一旦考える」きっかけとしては、「どの話が一番心に残ったか」は面白い自己分析になるかな、と。
よかったら読んでみた感想をコメントしてください。
日本語版:このつまらない仕事を辞めたら、僕の人生は変わるのだろうか?

英語版:What Should I Do With My Life
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8 月 10, 2004
テロリストとインターネット
日経産業新聞2004年8月10日に掲載されたコラムです。
The 9/11 Commission Reportと称される本がオンライン書店Amazon.comのNo.1ベストセラーになっている。7月22日に発表された9/11についての公式調査結果だ。長い時間をかけて詳細にまとめられた報告書は600ページ近い大作で、しかも政府の調査結果というお堅い読み物にもかかわらず、非常に読みやすく、テロリストの人間味あふれるエピソードにまで触れ、ベストセラーとなった。
こうした調査でも明らかになってきているのが、テロリストたちがいかにインターネットを駆使しているかだ。
まず、テロ組織はプロパガンダを広める場としてインターネットを活用している。ウェブサイトやメーリングリストを通じて、賛同者へのスローガンや、国際的なメディアに対する声明文が発表される。また、時には、敵対国市民に対して心理的攻撃を仕掛けるツールとしても利用される。捕虜の処刑といった残忍な映像を見せたり、将来の攻撃をほのめかすことで恐怖を喚起する、といった方法がそれだ。さらに、インターネットは資金調達の場でもあり、賛同者が募金を送ることができる銀行口座が掲載されたり、クレジットカードでの募金受付が行われたことまである。
また、新メンバーのリクルートにもインターネットは活用されている。世界のチャットルームや掲示板を観察し、自分の組織に賛同する意見を言う人を見つけ出して連絡をとるのである。
インターネットはまた情報収集の場でもある。飛行場、港湾設備、発電設備、高層ビルといったさまざまな施設に関して、詳細な情報がインターネットから収集できる。アフガニスタンで発見されたアルカイダの訓練マニュアルには、「パブリックな情報のみで、攻撃に必要な情報の80%は収集できる」と記されており、テロリストたちが深くインターネットでの調査を進めていることがわかる。
そして、ひときわ重要なインターネットの役割が、テロリスト間の連絡の手段だ。通信の匿名性、迅速性、世界中どこからでも使えるアクセスの容易さ、といった特性を生かし、Eメールやチャットルームを駆使した連絡が行われている。こうして個々のテロリスト間の連絡が容易になったことで、テロ組織の形態までが変わりつつある。「一人のリーダーをトップとしたピラミッド上の組織」から、「世界に点在する自立した小規模なグループ」へと変化しているのだ。結果として、組織の一部が機能しなくても、他のグループは自立して行動を続けることができるという強靭さが生じ、アメリカ本土への同時複数攻撃という大胆な攻撃も可能になった。
「インターネットは従来の紙ベースの文書や、電話、ファックスを代替する手段ではなく、全く新たな組織の形や仕事のあり方を実現するもの」とは良く語られるが、果たしてそれを実践している企業はどれくらいあるだろうか?だいぶ減ってきたが、いまだにEメールアドレスに部署名が含まれている会社もある。異動のたびにメールアドレスが変わるようでは、「個人は組織のパーツ」という従来型のピラミッド組織のままなわけで、インターネット型組織になったとは到底いえない。
ITからは程遠いように思われるテロ組織ですらインターネットを最大限に活用、組織の形までも変えている。あなたの会社はついていけていますか?
夢と錯乱2

先週末、近くの大学の医学部で先生をしている男性から、子供が生まれたというお知らせのメールが来ました。デジタル写真アルバムへのリンクつきだったので、クリックしたら、いきなり一枚目は「血みどろの胎盤の前にへその緒つきで横たわる血まみれの赤ちゃんの写真」でした。これだからお医者さんはあなどれません。これで、わたしの悪夢に出てくる映像レパートリーが一つ増えました。
というわけで、夢と錯乱の後編です。
Dreaming as Delirium: How the Brain Goes Out of Its Mindは、Harvard Medical School教授のAllan Hobsonが、夢がどういう脳のメカニズムで起こるかについての自説を展開した本です。
■脳内には、覚醒を支配するノルエピネフリンとセラトニンという二つのアミンと、夢を支配するアセチルコリンがある。
■アミンとアセチルコリンのバランスによって、「夢」と「覚醒」どちらの状態になるかが決まる。
■アミンが増えれば集中力が増し記憶力も増す。アセチルコリンが優勢になると、あまり関係ない記憶の間にバリバリとリンクが張られ、さまざまな連想が頭を走りめぐる状態になり、思いがけない発想が生まれる。
■午前中はアミンが多い。だから集中できる。が、アセチルコリン的自由連想に基づく思いがけない発想は生まれてこない。もっとも夢を多く見るREM睡眠の間はアセチルコリンが優勢で、アミンは最低レベル。なので、奇想天外な夢を見ることになる。しかし、夢のほとんどは忘れてしまう。なぜなら記憶のために必要なアミンがないから。
以上が、ごく簡単に言った夢のメカニズム。ただし、こうした化学物質がどうやって分泌されるかはまだ完璧には解明されていない。また、これ以外にも関係している物質がある。メジャーどころではドーパミンとか。)
Allan Hobsonはさらに進んで、「夢と精神錯乱がいかに似ているのか」を説明する。外部からの情報ではなく、自分の内部で作り出された情報(妄想)に基づいて反応しているのが精神錯乱。しかし、その妄想は、多くの人が夢で見るようなものとほとんど一緒。(恐ろしい人に追いかけられる、とか)夢を見ているときは、体が本当には動かないように抑制がかかっているからいいものの、そうでないと精神錯乱者同様、走り回って逃げ惑ったり、人に危害を加えたり、ことになる。(で、タイトルが「夢と錯乱」)
これ以外にも、「夢を抑制すると鬱が直る」とか、「電気ショックがそれとどう関係するか」とか、「病的に落ち着きが無いADHDの子供にはアンフェタミンが処方されるが、アンフェタミンはノルエピネフリンと似た物質」とか、いろいろ面白いことが書いてある。
夢と睡眠に関しては、前回のエントリーのコメントにnhさんが書いてくださったNewsweek8月9月号の記事、What Dreams Are Made Ofはコンパクトにまとまっています。
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さて、このアセチルコリンとアミンの関係から見ると
「クリエィティブな発想と、集中力・記憶力を合体させるのはとっても大変」
という暗黙の了解が脳内化学物質的に証明されたということか。
「クリエイティビティ=新しいアイデアを生み出す力」
と定義すると、たいていの場合アイデアというのは「0から突然誕生」するのではなく、「記憶の倉庫の中に格納されている複数のモノゴトの間に思いがけないリンクを張る」ことで生まれてくる。ということは、アセチルコリンが優勢だとよさそう。しかし、それだと注意散漫、記憶力皆無だ。
一方「集中力」「記憶力」という「良い子要素」満点だと、「思いがけないリンクを張る」というクリエイティビティがないわけで。しかし、はっと思いつくだけではやっぱりだめで、そのアイデアをものにするには「集中」と「記憶」が必要になる。このあたりを克服するために「夢を活用してアイデアだし」という話がでてくるのであろう。つまり、生理的にアセチルコリンレベルが高いREM睡眠時に、覚醒時に役立つアイデアをたたき出そう、というわけだ。最近のエントリーで書いたMir Imran氏など良い例か。
そのためにはもちろん「見た夢を覚えている」というのが大切。起きる前に、ほんの一瞬でいいので、目をつぶったまま夢を思い出してみるだけでかなり覚えていられるものだが、世の中には「夢なんてほとんど見ない」という人もいる。そういうハードコアな人向けの方法もちゃんとDreaming as Deliriumに書いてある。
次の3つを守るんである。
-夢日記をつける(枕元に紙と鉛筆を置いておいて、起き抜けに書く。最初は「つけよう」と努力するだけでもOK)
-寝る時間をばらばらにする
-慢性寝不足状態にする
夢日記の有効性はあちこちで証明されている。これは前回のエントリーのコメントで小鳥さんも書いていただいてますが。
で、夢が覚えていられるようになったら、寝る前に解決したい問題をジーっト考える。これだけでOK。
本では、「夢の中で自分の意思で何かを考える(もしくは行う)」というLucid Dreamを見る方法も書かれている。
a) 夢の中で「これは夢だ」と認識し
b) 意識して何かをしてみる
という2ステップ。a)では「こんなはずはない」という、夢独特の「変なこと」に着目。本当か、と思う方もいるかもしれないが、練習するとできるようになる。わたしは時々やってます。あまりb)で集中力を高めると目が覚めてしまうので、ほどほどのところで止めるのがコツです。
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「見たい夢が見られるおもちゃ」タカラ 夢見工房なんていうものもある。前回のBlogのコメントでGoさんから紹介いただいたもの。(こうしていろいろ面白いことが教えてもらえるblogって偉大だなぁ。)
夢見工房は、夢を見やすいREM睡眠時を見計らって、あらかじめ録音しておいた「見たい夢に関するキーワード」を枕もとのキカイがささやいてくれる、というものらしい。確かにこれなら見たい夢が見られそう。
しかし、きっとわたしは夢見工房でも変な思いがけない夢を見ちゃうんだろうなぁ・・・たとえば、「最初はいい感じなのに、途中から非常に情けない展開になる夢」というのを前見たのですが、「Tom Cruise」「デート」みたいなキーワードで見そうな夢でございました。
こんな感じ。
『昔の小学校の教室のようなところで、床にごろごろしながら、やはり床にごろごろしているTom Cruiseにインタビューしている。20センチくらい前にTom Cruiseの顔が。(実はTom Cruiseが割と好きである)
「おぉ、アップに耐えうる顔だ」と思いつつ、「ここは一発何か知的なこといわなきゃ!」と頭をひねり
「Did you try to coincide the release of Eyes Wide Shut with XXX?」
(XXXは忘れた)と聞く。するとTom Cruiseがおなじみのkiller smileを浮かべつつ
「You know, I don't really care.」
と言う。で、わたしは「気の利いたことを言おうとした小ざかしさが見透かされた」と、どぎまぎ。と、その時、知り合いが後ろを通り、
「歯の間に海苔がはさまってるよ。」
とわたしに耳打ちして立ち去る。
わたしは
「う、こんなにTom Cruiseと至近距離なのに、歯にノリ!」
と、ぴょんと飛び上がって、ダッシュで廊下に走って出て行く。そこには、コンクリートでできた横長の水のみ場があって、その上の壁にやはり横長の鏡がある。(小学校のときにそういうのがあった)。そこで、一生懸命ノリを取ろうとしたがなかなか取れない。そのうち、はっと、ものすごく長い時間がたったことに気づく。
「あ、Tom Cruiseを放置したままだ!」
と思った瞬間、あせって目が覚める。』
あー情けない。
「『歯の間にノリがはさまってる』と言ったのはお前だ」と、後日会った友人を責めたところ、「濡れ衣だ」と言っていました。それはそうです。
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8 月 06, 2004
夏休みアルバム
夏休みアルバム作りました。とりあえず写真3枚アップしました。
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8 月 04, 2004
夢と錯乱
Dreaming as Delirium: How the Brain Goes Out of Its Mind
Harvard Medical School教授のAllan Hobsonが夢の脳神経学的解明を図った本。「夢と精神錯乱は紙一重」という話。面白かったです。
なぜこんな本を読んだかというと、私は夢にとても興味を持っているので。変な夢をたくさん見るからだ。
夢が不思議だと思った最初の記憶は、幼稚園のときのことである。
幼稚園の制服を着て朝ごはんを食べながら
「昨日行った動物園楽しかったね」
と発言したところ、家族みんなに怪訝な顔で見られて
「何言ってるの、動物園なんていってないよ。夢見たんだよ。いやだね、この子は!変な子だねぇ。」
と言われた。私の中ではリアルな記憶の象もキリンも夢だったなんて・・・・。とても驚いた。(もしかして親に騙されてて、実は本当に動物園に行ってたりして)。
動物園に行く、という平和な夢は大歓迎なのだが、超怖い夢もたくさん見た。
たとえば、友達のアベさんちに遊びに行って、縁側にアベさんと二人ですわり、足をぶらぶらさせながらスイカを食べていたら、後ろから近づいてきたアベさんのオトウサンに斧で頭から真っ二つに割られて床下に埋められる、というのもあった。これも幼稚園のときのものである。
この夢は、埋められた後、大勢の警察官がドサドサと私の死体を捜しに来るのだが、見つけられずに帰ってしまい、
「ああっ、これでわたしはおうちに帰ることもできず、このままずっとひとりきりなんだ」
と心底がっかりするという「死後の世界」付きの夢であった。ちなみに、本当はもっとディテール満載。私は白地に赤い牡丹柄の浴衣を着ていて、アベさんは、赤いワンポイントが入った黄色のTシャツに水色のショートパンツだった。警察官は、制服を着て、編み上げブーツを履いていた。「靴を履いたまま部屋に入るなんて変」と夢の中で思った。
その後ある人にこの夢を語ったところ、
「あ、それは地縛霊になった夢ですね。」
とこともなげに言われた。
夢の中で一番悲しかったのは、殺されたことではなく、家に帰れないこと、家族に忘れられてしまうこと、思い出してもらえないこと、だったのだが、これについても同じ人に
「人間、殺されて地縛霊になっても、殺された人への恨みはないものらしいですよ。で、家に帰りたいのに動けないんでしょう?リアルに地縛霊ですね。」
と言われた。マジか。わたしは「地縛霊の気持ちがわかる人」なのか!?うーむ。
さて、小学校のときは、ムーミンに出てくる「ニョロニョロ」に襲撃される夢を見た。妹と2人で留守番をしていて、窓から庭を見ると、庭にたくさんのニョロニョロがいる。私は、震える手で家中の鍵をかけてまわる。しかし、ニョロニョロはますますその数を増やし、庭一面にびっしりとひしめき、その全員がじっと私たちを見あげている。やがて、一匹がヒュッと飛んで窓枠にへばりつく。その瞬間、そのニョロニョロは溶けて液体状になり、窓の隙間から家の中に入ってくる。その後は、次々とニョロニョロが窓に飛んできて、どんどん液体になって部屋の中にジュクジュクと染み込んでくる。この夢のキモは、庭一面に立ってじっとこちらを見ているニョロニョロの大群というビジュアルである。
大人になってくると、かすかながら触覚・味覚・嗅覚なども加わって、リアル感はさらに増した。ライトアップされた極彩色の地底の大鍾乳洞に行ったり、空一面を覆い尽くす無数の鈍く光る銀色の宇宙船群が地球を襲ってくる場面に遭遇したり、最後の全面核戦争寸前に地球上の様々な生物に弾劾されたり、といったSF系から、ただひたすら会社で仕事をしているというがっかり系までいろいろ。
恐怖本の世界に吸い込まれてしまう、というのもあった。20代の頃見たものだが、「アシダテ小児科」という子供の頃に通っていた病院の待合室で、そこにおいてあった本を開いた瞬間、その中に吸い込まれてしまう。そこは拷問展示館で、目も覆わんばかりの恐ろしい拷問が見世物になっている。(博物館のイメージは、サンフランシスコのフィッシャーマンズワーフにあった拷問蝋人形館。そういう変なものに行くから、こういう悪夢を見るのだ。)ベッドで寝ている夢で、自分の布団の中に30センチくらいのゴキブリがいる、というのもありました。
残念ながら覚えている夢は殆ど悪夢である。これは、あまりに恐ろしいので、心臓バクバクで目が覚めるからだと思っている。10代の頃は、実際に悲鳴を上げながら目を覚ましたことが何度もあった。一方、面白い、楽しい夢も、たぶん見ているのだと思うのだが、目が覚めないので忘れてしまうのではないか。一度、あまりに可笑しいコメディアンのステージを見る夢を見て、自分の笑い声で目が覚めたことがあったけど。(起きてから、思い出してみたら、あまりにつまらないジョークなので愕然としたが。)
子供のころは、毎週必ず最低一回は見る「夢の町」もあった。夢の舞台が同じ町、というのではなく、その町に行くこと自体が夢の目的のようで、その夢の中では、いつも一人で歩き回っている。町のぜんぜん違う部分を訪ねていることもある。しかし、同じ町だ、と夢の中ではなぜかわかる。あまりに頻繁に見るので、その夢が始まると「ああ、戻ってきた」と、懐かしさがじわじわこみ上げるほどになった。(ちなみに、この町ほど頻繁ではないが、やはり繰り返し夢の中で行った(夢の中だけの)場所はあと3つほどある。)
この「夢の町」は、だんだん育っていった。ある夢で建設現場だったところは、以降の夢では完成して、1階にファーストフード屋が開店、花輪が出ていた。駅前に本屋と花屋もできた。
20歳前後のころ、現実の世界で、生まれて初めて東横線の学芸大学の駅に行った。電車から降りた瞬間愕然とした。子供のころから何百回と見た夢の町そっくりだったからである。・・・というか、もっと正確に言うと、駅のホームに足を下ろした瞬間に「戻ってきた・懐かしさじわじわ」感がこみ上げたのである。改札を出たら、さらにそっくりだった。ファーストフード(KFCだった)も、花屋も本屋もあった。で、その後一人暮らしをするにあたり、ここしかなかろう、と学芸大学を選んだ。「人生を決定的に変える何かが起こるのでは!」という期待に打ち震えつつ。
しかし、奇怪なことに特に何も起こらなかった。なぜだ!何百回も見続けた夢はなんだったんだ!・・・まぁ、しかし、世の中というのはえてしてこういうものであったりするな。あまり物事に深い意味を追求してはいかんのだ。
そうそう、前も書いたが、夢が漫画(アニメではない。コマ割があって、吹き出しがある漫画)というのもあった。これは漫画家じゃせいか、大変脳が疲れる夢である。「脳が息切れ」みたいな状態で目が覚めてしまう。
***
さて、かようにメクルメク夢を見るワタシは、大変夢に興味を持っている。それも、フロイト的心理学チックなものや夢占いみたいなものではなく、脳神経学的に見た夢について。というわけで読んだ本がDreaming as Deliriumなのだが、続きはまた次回に。
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